さまざまなセンサ群

初日の基調講演の後で行われたCEO Q&Aの中で、(National Semiconductorを買収したTexas Instrumentsの様に)アナログ系のポートフォリオを増強してゆくのか? と問われ、「FreescaleはProcessor Companyだ」と明確に答えた。もちろん、「顧客からのニーズがあればアナログ部品を積極的に取り込む事は行ってゆく」とは説明したが、そもそもMotorolaはアナログ部品はOn Semiconductorとして、MPU部門をFreescaleとしてそれぞれ別会社化したわけで、いまさらアナログ回帰というのは筋論としてちょっとおかしな話ではある。もちろんアナログ部品の需要は決して低くないが、昨今はこうした部分にもデジタル化が次第に押し寄せており、デジタルになると途端にFreescaleの領分となるわけで、無理にアナログのポートフォリオを増やす必要は無いと見ているのかもしれない。

とはいえ、プロセッサに関係するアナログ関係は相変わらず積極的である。その1つがセンサ関連である。今回もFTFにあわせて新たに圧力センサ「Xtrinsic MPL3115A2」を発表したほか、いくつかのアップデートがあったので簡単に紹介したいと思う。

Freescaleのセンサは「Xtrinsic」というブランドに統一されているが、製品は?というとかなり多岐にわたっている(Photo04)。ただ良く見ると、圧力、加速度、磁気といったところが主な検出対象で、後はこれをどう用途別に組み合わせるかといった形での展開になっているのが判る。

Photo04:これはなぜかHands-on Training:Freescale's Robot and the Tower Mechatronics Boardという実習のセッションマテリアル中に入っていたロードマップ

さてMPL3115A2はMEMSを使った圧力センサだが、測定レンジは20KPa~110KPaとなっている。大気圧が概ね101.33KPaだから、これを使うことで高度3000m程度までの高度計として使うことが可能となっている。しかもこのレンジを20bitの解像度で測定できるので、高度計とした場合は30cmの高さが測定できるという。Technical Labでは上にスポンジを被せた状態でのデモだったが(Photo05)、これはセンサの感度が高すぎて、人が歩いた風圧で高度が変化するからという話だった。センサ本体も5mm×3mm×1.1mmと超小型なのだが、にもかかわらずインタフェースがI2Cというのも特徴の1つで、このため余分なA/Dコンバータなどを介さずに直接MCUなどに接続できるというのもこのセンサのウリだという。

Photo05:稼働中の様子。電圧は1.95V~3.6Vで稼動し、測定時のピーク電流で2mA、通常モードの通信時で40μA、スタンバイ時は2μAと消費電流はかなり低い

Photo06:スポンジを取るとこんな具合。中央の金属部品がセンサ

また、発表は2011年1月であったが、3軸の磁気センサ「MAG3110」(Photo07,08)も展示されていた。実はこのMAG3110はHDDの磁気ヘッドでおなじみTMR(Tunnel Magneto-Resistance:トンネル磁気効果)を使ったもので、これは日本のKEYENCEと共同で開発した製品だとの事。2mm×2mm×0.85mmという省パッケージで、I2Cでホスト側と接続されるのはMPL3115A2と同じだ。

Photo07:MAG3110を利用した動作例。右の円盤表示がそのままe-compassになっているわけだ

Photo08:プラットフォームの上2つがMAG3110の評価基板。プラットフォームの話は後述

ところでPhoto08で、このMAG3110の評価基板が載っているベースボードは何か? というと、こちらはMMA9550Lを搭載したボードである。MMA9550L自身は2010年6月に発表されたものであるが、これは3軸の加速度センサと温度センサ、それにColdFire V1を1チップにしたものである。このMMA9550Lの特徴は、単に内蔵する加速度/温度センサの管理だけでなく、I2Cバス経由で更に複数のセンサ(最大12種類)を一元管理できることで、言ってみればSensor Hubとして機能することになる(Photo09)。

Photo09:簡単なブロック図

MMA9550LはI2Cマスタを1つ内蔵しており、内部の温度センサや加速度センサ、および外部の各種センサは全部このI2Cバスに繋がる形になる。このバスの管理や、センサからのデータの一時取り込みは内蔵するColdFireが行い、例えば集計した結果をSPIもしくは(センサ用とは別の)I2Cバス経由でホストに渡すという仕組みである(Photo10)。

Photo10:これは内蔵加速度センサを使った歩数計の実装例。データそのものは内蔵のColdFireで処理しており、ホスト側は単にデータを表示しているだけだとか

ここまでは従来発表済の内容であるが、今回はこのMMA9550Lの次の製品の話をちょっと伺う事が出来た。次の製品も、引き続きColdFire V1を搭載し、16KB Flash/2KB RAM/4KB EEPROMを搭載するが、大きな違いはセンサ用のI2Cを複数本搭載するそうで、より多数のセンサを1チップで管理できるようになるという話だった。こうした形で、よりセンサをMCUから扱いやすく提供してゆく、というのがFreescaleのセンサに関する方向性の様だ。