――今回のグラスファイバー採用バンドはどのように作られていますか。

田中「グラスファイバーを編み込んで作ったシートを挿入しています。金型の中にシートを挿入して、黒いウレタン樹脂を流し込み、さらに色の付いたスケルトンの樹脂を流し込むことで成形しています。

右端が挿入されているグラスファイバーシート。「スケルトンの樹脂で挟み込むと透けてしまって質感が出ませんので、背面の樹脂を黒くしています。こうすることで、初めてその素材らしい質感が出てきます」(田中氏)

――前回のカーボンファイバーに続く、強化バンドの第2弾ですね。

斉藤「今回の商品は、スケートボードやBMX、サーフィンなどのエクストリームスポーツをする人をターゲットとしています。新たにグラスファイバーを採用した最大の理由は(バンドの)"色"です。従来のカーボンファイバーでは素材自体が黒いため、バンドの樹脂を透明にするとブラックのバンドしかできなかったので、若者をターゲットにするのは難しいと考えたのです。

カーボンファイバーをバンドに使用した「GW-S5600」。角型フォルムの「5600」シリーズがベースとなっている

一方、グラスファイバーの色はシルバーなので、さまざまなカラー展開ができるようになりました」

――何故、樹脂を透明にすることにこだわるのでしょうか。

斉藤「カシオとして、G-SHOCKのタフネス性能を、新たな技術開発の成果を見せながら、若い人たちにもっと伝えていこうという動きがあります。G-SHOCKのユーザーはG-SHOCKブームを経験した30代後半から40代前半が多いのですが、彼らは実際にその強さを知っていて、『G-SHOCKイコール強い』というイメージを強くもっています。

時計事業部商品企画部第一企画室 斉藤慎司氏

ただ、今の若い人はブランドは知っていても、以前のようなイメージが根付いているとは言えません。G-SHOCKが単なるファッションウオッチではなく、"強い時計"だということをアピールしていきたいと思っています。

そのため、バンドの中のグラスファイバーが見えるように透明樹脂を使いました。グラスファイバーは、サーフボードの補強材やスケートボードの裏面のデッキ、自転車などにも使われていて、アクションスポーツになじみがあるので、その素材を見せることで、若者にもタフネス性能を感じとってもらえるようにしたのです。

もちろん、樹脂をスケルトンにしなければどんな色でも使えますが、『中を見せる』というコンセプトで、"見た目の新しさ"と"強さ"を融合できたと思います」

――今回のバンドは3色展開ですね。

斉藤「GD-200では、ブラック、ブルー、レッドといったスケルトンの3色を用意しました。(グラスファイバー採用の)最初のモデルなので、樹脂の色味はグラスファイバーの見栄えを考慮したものにしています。

「G-SHOCKらしい色合い」(斉藤)というブラック、ブルー、レッドの3色

最近の若者向けG-SHOCKでは、ツヤのある派手な色が人気になっていますが、グラスファイバーの質感を出すために今回は半光沢に仕上げました」

田中「このバンドの構造であれば、多色展開は技術的には難しくありません。樹脂の色を変えればいろいろなカラーができます」……新素材、グラスファイバーの実力