さて発表内容は以上であるがもう少し突っ込んだ話を。まずはSingle Endedでどうやって12.8Gbpsを実現できたか? であるが、これは現時点では公開できないとの事。というのは(2011年6月に京都で開催予定の)2011 Symposia on VLSI Technology and Circuitsにこちらの詳細を発表予定であり、こちらの規定によって事前に内容を公開できないからとの理由だった。

ただデモに際してちょろっと話が出たのだが、やはり送受信(コントローラ→DRAMは送信側、DRAM→コントローラは受信側)に新しいイコライザを入れており、これで強烈に補正を掛けている模様だ。どうやってもDRAM側に複雑な回路を仕込むのは難しいので、コントローラ側で集中的にイコライジングを行っているようだ。

また配線層は、Differentialに関しては4層で大丈夫で、これは従来TBIでも設計目標としてきたものだが、Single Endedに関しては6層が必要とか。どうしてもSignal Integrityを保つためにはある程度配線層でも配慮が必要で、そうなると4層では足りないということらしい。

Single Endedですら12.8Gbpsが実現できるのだから、Differentialでは20Gbpsといわずもっと上が狙えそうな気はするのだが、これについては(聞いてはみたものの)教えては貰えなかった。またFlexModeに関しては、単に配線の数だけではなく、実際にはSingle EndedとDifferentialではピンレイアウトが異なる(Single Endedでは信号の間にGNDを挟み込むようにしてCrosstalk削減が必須だし、一方DifferentialではSignal Pair同士が隣り合うように配置する必要がある)から、単にSignal Assingmentを変えるだけではなくLayout Routingまで必要になりそうな気がするのだが、こうした機能まで持つかを確認したところ、「実際にはそれはどういうレベルの要求が来るかで変わってくる」という微妙な返事が。配線インピーダンスの問題などもあるため、ある程度まではこうしたRoutingの機能は持つが、例えばGDDR5 6GbpsとXDR2 12GbpsならばRoutingだけで行けても、12Gbps Single Endedと20Gbps DifferentialのPairでは手作業で追加の最適化が必要になるといった話になるのかもしれない。

ということで、以下筆者の感想など。とりあえず今回の発表は、AMD/NVIDIAといったGPUメーカーに対して、XDR2に至るマイグレーションパスを実現できた、という点で非常に興味深い。実際、「発表を見ていると、GPUベンダやGame Consoleベンダが1st Tier Clientに見えるのだが、他に考慮しているベンダなどはあるか?」と聞いたところ、「長期的にはこの高い性能と省電力性、Bi-modalなメモリ対応といった技術は全てのクライアントに適応できると思うが、最初に狙っているのはGPUの様に高いバンド幅が現在でも必要とされる分野だ」との返事が返って来たので間違いではないと思う。Rambusはこれまでもこの分野に向けて働きかけをしてきたが、

  • XDR/XDR2はこれまでのGDDR3/5などとMemory Access Pipelineや使い方がだいぶ異なる
  • Commodity Memoryではない

などの理由で断られてきたのだろう。そこでまずXDR2に関しては、DDR/GDDR系と同じ様なアクセスパターンをサポートすることで、比較的スムーズに移行できるようにした。これは2010年10月の発表会の折にWoo博士が語っていた(別メディアで恐縮ですが、こちらにちょっとその話が出ています)が、これに続くのが今回のメモリコントローラというわけだ。こちらはCommodity Memoryをもサポートするし、しかも省電力とか従来より動作周波数を引き上げやすいといった特徴を持っており、とりあえずXDR2(というかDifferential)を抜きにして、現在のメモリコントローラの代替として採用してもらうことを目論んでいる様に見える。そして外堀が埋まる、つまり無事このコントローラがGPUベンダに採用されたら、次は将来製品に向けてXDR2の採用を働きかける、という2段階作戦を取ることにしたようだ。

ちなみにこのコントローラそのものは既にライセンス提供可能であり、テクノロジーライセンスとすることも、(ハードマクロになるようだが)IPライセンスとすることもどちらも可能という話だった。ソフトマクロに関しては、やはり最適化がかなり大変になるので、あまり賢明ではないとの事。ただ実際に採用が決まるのは現行の40nm世代ではなく、28nm~20nm世代になるだろう、というのがWoo博士の見通しである。

まぁ既にAMD/NVIDIA共に28nmの第1世代の製品の設計はほぼ終えているはずで、そんなわけでこれが入るとしても、早くても28nm世代の第2世代製品だろうし、評価などを考えるとターゲットはむしろ20nm世代というあたりかもしれない。

次世代ゲームコンソールがほぼ壊滅状態にあり、当分出てこないと見られている一方で、GPUに関してはAMD/NVIDIA共にそろそろGDDR5の帯域を使い切っており、ところがGDDR5の次については当分無い(JEDECではまもなくGDDR5の次に関する標準化作業というか検討を開始する予定で、ということはあと2年やそこらは次のソリューションがないことになる)以上、この際Commodityでなくてもやむをえないという判断をAMD/NVIDIAが下す可能性は従来よりも高まっているとは言える訳で、そこに向けてとりあえず外堀の埋め立てを狙った今回のソリューションがうまく採用されるか、ちょっと注目したいところだ。