米サンノゼでNVIDIAが開催したGPU TECHNOLOGY CONFERENCEの会期中、NVIDIAの社長兼CEOであるジェンスン・フアン(Jen-Hsun Huang)氏を取り囲んでのグループインタビューが行われた。

ジェンスン・フアン(Jen-Hsun Huang)氏

ジェンスン・ファン氏、次世代GPUについて語る

今回のGTC 2010の基調講演で、次世代GPUのロードマップを公開したNVIDIA。今まで、かたくなに「次世代製品には言及しない」というポリシーを通してきたNVIDIAが、どうして今回のタイミングで、こうした話題を取り上げたのだろうか。

ジェンスン・フアン(以下、フアン氏)氏「それは、みんながあまりにもしつこく聞くからだ(笑)」

こう、冗談で交わすフアン氏だが、これには隠れた戦略的な意味合いがあると推察される。昨今のNVIDIA GPUは、これまでのようなDirectXやOpenGLと言ったプラットフォームの中で使い切る形のGeForce系製品とは違い、HPC分野に広く浸透しつつある。グラフィックス用途では、どうしても、「次のDirectXが出たから今度はAMD Radeonへ……」という無党派グラフィックスユーザーをNVIDIAに縛り付けることが難しい。なぜならば、グラフィックスはDirectXやOpenGLという標準規格内でのビジネスだからだ。

一方で、GPGPUプラットフォームとしてNVIDIA GPUを見た場合、そのソフト/ハードの両方の環境整備をCUDAとTeslaという独自ブランドにてNVIDIA自身が行っているため、純粋なNVIDIAプラットフォームとしての価値が高まりつつある。

今回の異例のロードマップ公開はNVIDIAのGPUがCUDAを中核としたGPGPUプラットフォームとして、今後も順当な性能強化を続けていくことを伝える意味合いがあり、HPCビジネスのクライアント達に「HPCをNVIDIA GPU構成にするとこんなに明るい未来がある」ということを指し示すものだったのではないかと思われる。

今回のロードマップは、ある意味、NVIDIAが、GPGPUビジネス(HPCビジネス)には今後も多大な力を注いでいく事の意思表明だったともとれる。

さて、NVIDIAのGPUは、Tesla(GT200系)コアで初めて、64ビット倍精度(DP)浮動小数点に対応した。この時のDPピークパフォーマンスは32ビット単精度(SP)浮動小数点のピークパフォーマンスの1/8にしか満たなかった。GT200系のDP対応はあくまで「対応した」レベルだったが、GT200系のHPCへの急速な引き合いの強化が、Fermi(GF100系)コアにDPの大幅な性能強化を促すことになった。GF100系ではDPピーク性能が、SPピーク性能の1/3分以上にまで高められたのだ。

将来のNVIDIA GPUはこれはどこまで高められていくのだろうか。

フアン氏「今の時点ではなんとも言えないが、SPピーク性能の2/3か3/4か……。この点に関しては現時点では予測が難しい。というのも、性能を上げるにはStreaming Multi-Processor(SM)の数を増やす必要があるが、闇雲に増やしても性能は出ない。というのも、結局、メモリ帯域に性能が制限されてしまうからだ。現実的なことを言えば、チップのテープアウトの半年前や1年前にならないと最終的な仕様は決まらないと思う」