CPUとGPUとの統合は今やるべきではない

Intelが提供を開始するSandy Bridge。AMDが推し進めるAPU構想。アプローチとその"深度"において相違はあるが、ともにCPUとGPUを統合させるアイディアを具現化したものである。

NVIDIAだけが、この流れに抗おうとしているように見える。

フアン氏「統合は決して悪いことではない。第一にシステムのコストを下げることができる。しかし、統合にも良くない側面があることも忘れてはならない。それは進化を止めてしまうことだったり、ユーザーの選択肢を狭めてしまうと言うことだ。Intelは素晴らしいCPUを作っている。AMDはなかなかいいGPUを作っている(笑)。これらを統合したらいい統合プロセッサが作れるかも知れないが、両者がそれをやることはない。そもそも、大多数の一般ユーザーはCPUとGPUの存在や性能を特に意識していないという話がある。だったらCPUとGPUを統合してしまっていいのではないか、と言う話になるが、逆の論理でいけば、CPUとGPUが別々であっても誰も気にしないと言うことでもある。もちろん、CPUとGPUがそれぞれ優秀ならば……だが」

ファン氏の意見を少し補足しよう。

CPUとGPUが統合されたプロセッサを使う……ということは、それが搭載されたPCのライフタイムにおいて、CPUもGPUもアップグレードしないということになる。しかし、現在、まだまだGPUは発展途上だ。DirectXの進化にシンクロしてがらりとアーキテクチャが変わる。CPUの場合、少し前のものでもアプリケーションはたとえ遅くても動作は出来る。しかし、少し前のGPUでは、最新のグラフィックス表現を実現できない(≒シェーダープログラムが動作できない)。

フアン氏「CPUとGPUとの統合はGPUの進化がほぼ止まってしまってからやるべきだ。今やるべき事ではない。」

ただし、フアン氏のこの熱弁には少し矛盾を感じた人もいるかも知れない。なにしろ、フアン氏のイチオシするTegraはCPUとGPUを統合したSoCだからだ。

とはいえ、携帯機器向けSoCのTegraでハイエンドグラフィックスアプリケーションを動作させることはあり得ないことから、枯れたGPUコアを利用することになる。つまり、携帯機器向けに話を限定すれば、進化を終えたGPUコアを統合していることになるわけで、フアン氏の言う「枯れたGPUと統合させる」という主張に則っていることになるのだ。

フアン氏「GPUの方が重要視されるコンピューティングテーマ、CPUの方が重要視されるコンピューティングテーマ……具体的に言えば、HPC用途、先端ゲーム用途、ワークステーション用途、デジタルコンテンツ制作用途……などにおいては、そのユーザーが必要とする最適なCPUと最高のGPUでシステムが構成されるべきであり、CPUとGPUが統合されてしまっていてはこれができない。基調講演で公開したようにNVIDIAは、これからKeplerやMaxwellといった加速度的に機能と性能が強化された新世代GPUを出す。GPUの進化がこのように未だ過激なのに統合するなんて、まさに悪いアイディア以外のなにものでもないと思う」