富士通研究所は、磁界共鳴方式のワイヤレス給電において、従来約24時間程度かかっていた送受電デバイスの基本的な解析を、約10分に短縮することが可能なワイヤレス給電の解析・設計技術を開発したと発表した。

これにより、小型の送受電デバイスの高性能な設計が可能になり、開発に必要な時間を大幅に削減することができるほか、ワイヤレス給電機能を小型化して携帯電話に内蔵することや、複数のモバイル機器を同時に自由な位置で給電することも可能となる。

富士通研究所が試作した、載せるだけで複数の携帯の充電が可能な充電器

ワイヤレス給電技術の主な方式としては、電磁誘導方式と磁界共鳴方式があるが、電磁誘導方式は、送電と受電コイルの間の磁束によって生じる起電力を利用するもので、コードレス電話などで実用化されている。しかし、電磁誘導方式は近距離でしか給電できない、給電できるデバイスが1つのみ、応用性が低いなどの短所がある。一方、磁界共鳴方式は、コイルとコンデンサを共振器として使い、送電と受電デバイスの間の磁界の共鳴によって電力を伝送する方式で、数cmから数mの範囲で離れた位置での送受電が可能なほか、複数の機器に対しても同時に給電できるという長所がある。

電磁誘導方式と磁界共鳴方式の特徴

しかし、磁界共鳴方式の送受電デバイスの設計時には、機器の大きさからコイルの大きさを決定し、それに最適となるようにコンデンサの容量を決定する必要があり、送電デバイスと受電デバイスのコイルの形状に依存する浮遊容量の影響や、機器の筐体やバッテリなどによる電磁気の干渉を考慮して解析する必要があり、従来はその作業に多くの時間がかかり、実用化の大きな障害となっていた。

記者発表会場では、ワイヤレスで同時に3つの装置に給電し、動作させるデモが行われた。それぞれの位置を2-3cm動かすだけで動作しなくなるなど、互いの干渉が大きな影響を及ぼすことが見てとれた

そこで富士通では、コイルを解析する電磁界シミュレーターとコンデンサの共鳴状態を解析する回路シミュレーターを分け、連成する解析・設計技術を開発し、高速化を図っている。同社では現在のところ、この技術を他社へ販売することは検討しておらず、社内での利用を想定している。そして、携帯電話などのモバイル機器のワイヤレス充電などで、2012年に実用化したい考えだ。

富士通では、機種に依存しない充電器を目指してしており、これが実現すると出張や旅行の際、専用充電器を持ち歩かなくても、ホテル等に設置された充電器に置くだけ充電が可能になる。充電時間は専用充電器で行うのと変わりないという。