前回のレポートに続き4月29日には発売が解禁されたPhenom II X6。現在までに潤沢に製品供給もなされたようで、1090T Black Editionですら3万円前後と比較的リーズナブルな価格で入手できるようになっており、手に入れられた読者も少なくないのではないかと思う。早速オーバークロック動作にチャレンジされた方もいらっしゃるようだが、こちらはあくまで「定格」(この定格の意味がまた微妙だったりするのだが)の範囲での性能検証を行ってゆきたいと思う。
さて、前回のレポートの最後に書いたとおり、今回は非AMDプラットフォームとの比較やTurbo Coreの効果、それと隠し玉の話をまとめて御紹介したい。ということで、まずはチップセットの話である。
■前回掲載のプレビュー編はこちら
【レビュー】「AMD Phenom II X6」実力検証! AMD初のデスクトップ向け6コアCPUをプレビュー
AMD 890FX
PhenomII X6と同時に発表になったのがAMD 890FXである。既に800番台はAMD 890GXとAMD 870が発表されているが、主要な違いをまとめると、
- グラフィック用にPCIe Gen2 2x16 or PCIe Gen2 4x8構成が可能(AMD 890GXは2x8 or 1x16。AMD 870は1x16のみ)
- I/Oバス用にPCIe Gen2 6x1+1x4レーンが用意(890GX/870は6x1のみ)
- IOMMUを搭載
- 65nmプロセスで製造
というあたりになる。グラフィックス用のPCIeレーンは、AMD 790FXなどと同じで、これにより最大4枚のビデオーカードを利用できることになるが、まぁこれは大きな問題ではない。むしろ、
- IOMMUを搭載したことで、仮想化環境におけるI/Oスループットの向上が期待できる
- 65nmプロセスを使った事で、省電力化が図れる
といったことの方がインパクトはあるのだが、前者は仮想環境を使わない限りまったく効果がないし、後者は現実問題としてAMD 890FXがハイエンド向け製品に搭載されているため、結果としてオンボードデバイスがてんこ盛りになっており、プロセス微細化による省電力性の意味が事実上なくなっている。そういう訳で、カタログ的な意味でのAMD 890FXの売りはそれほど多くない。
ところが、AMD 890FXではオーバークロック性("Overclockability")が最大、というものが一つのウリになっている。Photo01はAMDの"2010 Performance Solutions"の構成だが、ここで"AMD Black Edition Memory Profiles"なる文言が目を引く。これはどういうものか、というとDDR3-1600以上のメモリを使う場合に有効になるパフォーマンス向けプロファイルで、将来的にはマザーボードのBIOS Setupに"Black Edition Memory Profile"という項目が出てきて、これをEnableにすることで性能を引き上げるという事を想定しているようだ。
ただし現状ではまだ対応していないマザーボードもあるため、この場合は、
- Memoryの速度を手動で1600MHz(もしくはそれ以上のメモリに対応した速度)に設定
- Northbridgeの速度を2.4GHzに設定(デフォルトは2GHz)
- HTLinkの速度を2.4GHzに設定(デフォルトは2.2GHz)
を行う様に指示されている。実際にCPU-Zの値を見てみると、デフォルトはHTLink/Northbridge共に2GHz(Photo02,03)になっている。そこで、BIOS Setupの中でこれを明示的に2.4GHzに設定してみると(Photo04,05)、きちんとこの速度で動作するようになった(Photo06,07)。これによる性能差がどの位あるか、というのは後で検証してみるとして、とりあえずAMD 890FXではHTLinkの速度を2.4GHzまで引き上げても問題なく動作するのが、従来のAMD 890GXなどとの差の一つ、といえそうだ。