拍子抜けするほど簡素なパッケージだった。その主のメカガエルは、ショーケース越しに熱い視線を注いだことはあったが、実物がこれほどの存在感だったとは…。SUBMARINERにも余裕の貫禄勝ち。最初はちょっとした目覚まし時計(いやジャイアントロボの腕時計型無線機か)にさえ思えた。逆にバンドは強度が心配になるほど華奢に見えてしまう。

当初は余りにも大きくて違和感もあったが、すぐにある感覚が芽生えてきた。うまい表現が思い付かないが、例えばベンツオーナーの誰もがドアを開閉する時に実感するという、あの「重厚さ」に近いものかもしれない。ケースや裏蓋のステンレス部は表面加工がなされ、歴代のFROGMANの中でも格段に高級感が漂う。

風防のミネラルガラスも厚みがあるのか、他のG-SHOCKとも質感が違う様に思う。着用感は意外と邪魔にならず、収まりよくしっくりくる。大型ケースのおかげで圧力が分散され、ズッシリ重いということはない。SUBMARINERは妙な重量感があって、疲れてくると思わず外したくなったのだが。非対称な形状のおかげで、キーボード入力時にも邪魔にならないのは非常に助かる。一見無骨だが、予想に反して白衣にも馴染む。いや、それを通り越して機能美だ、とにかく格好いい! 敢えて注文をつければチタンでないところか。チタン仕様の特別バージョンがあってもよいと思う。

筐体は大きいが、時計パネル部は通常の時計とあまり変わりないみたいだ。GW-M5600と比べると、数字はむしろ繊細で小さめだ。潜水時の視認性が若干気にはなる。例えばギミックは省いて日付・時刻表示等だけにするとか…(タイドグラフ/ムーングラフはベルト上の子機にという方法もあるだろう)。しかし、ジャイアントロボ世代の自分にはやっぱりメカメカした方がいい。MASTER OF Gの目指すところは正解だ。

クリニックで医療器具・機器類に囲まれ毎日バタバタと業務に追われる自分には、時計は何よりヘビーデューティーなギアでなければならない。受診者の体液や種々の薬剤に曝されることも日常茶飯時なのだが、水中でのボタン操作も可能な防水性能だから腐食性の液体が内部に浸入する心配はなさそうだ。時計もあちこちにしょっちゅうぶつけているが(この前も検査中に手の甲をワゴンに強打してしまった…)問題ない。万が一にも受診者に傷を負わせることは許されないが、素材からもそういった恐れは少なそうだ。

ソーラー電波時計としての基本性能については敢えて触れる必要はないだろう。職業柄、日付・曜日の同時表示は大変嬉しい。ブルーのELライトは高級感もあり、海のイメージにピッタリだ。アナログタイプでは省かれていることが多いようだが、時報機能も有難い。ただしゴッツいケースの影響か、残念ながらビープ音はかなり控えめだ。操作ボタンは大型のものが採用されているが、左側は誤操作防止用の出っ張りがあり、右側のより若干押しづらいが、実用上問題という程ではない。このあたりは主観の問題なので、実物で確認しないと分からないところだろうが。

そこそこ正確な時計が欲しいだけなら百均でも手に入るが、MASTER OF Gの魅力はそのプラスαの価値に対してのはずだ。陸(おか)サーファーならぬ陸(おか)ダイバーだが、自分にとってのそれはヘビーデューティー仕様とタイドグラフ/ムーングラフであった。人類はその発生以来、月の運行(つまり昼夜や潮汐の変化)の影響下にあり、遺伝子レベルで月の周期に基づく時計(時計遺伝子)を持っていることが知られている。女性周期のみならず、様々な事象がその体内時計の影響を受けている。出産やある種の疾患、抗癌剤の副作用等、いや人の死さえその影響を免れないのではないかという気さえする。医療面での利用の可能性も考えられる。グラフを眺めていると、綿々と続く人類の営みの遥か向こうにアダムとイブさえ見えてくる気がしてくる…。

非常に多機能であり(アポロ計画の宇宙船に搭載されていたコンピュータの演算能力はもっとプリミティブであったとか…)、時計モード・タイドグラフ/ムーングラフモード以外にも様々なモードがある。実物を手元に置きながらネットでカタログを含めて様々な情報を渉猟してみたが、機能や使い勝手についてはそれらだけでは理解は難しいだろう。ダイビングモードなども各自各様の利用方法もあるはずで、購入前でも取説がダウンロードできれば非常に参考になると思うのだが。

FROGMANは正直言って良くも悪くもアクの強いギアであり、G-SHOCKシリーズの中でも別格の存在だと思う。おいそれとは手を出せる価格でもない。特にネットで購入を考えている諸兄も、一度は実物を確認しておくことを勧める。ただし「所有する満足感」までは実感できないかもしれないが。

この一ヶ月以上をFROGMANをはめっぱなしで過ごしていた。殆ど身に着けていることさえ忘れるほど体に馴染んでしまった。もはやSidekickだが、単なる「仲間」というよりは心強い「相棒」となっている。……つづきを読む

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