カシオ計算機 営業本部 戦略統轄部 コンシューマ戦略部 CES企画室 上田奈美子さん

今年1月、カシオの電子辞書「エクスワード」がラインアップを一新した。語学研究者や医学者などプロ向けの機種から、趣味コンテンツを充実させた機種、高校生・中学生向けの機種など幅広くラインナップされており、特に、ビジネス用語や資格取得のためのコンテンツを数多く収録したビジネスユーザー向けの「XD-A8500」は、マイコミジャーナル読者としても大いに注目したい機種だろう。

また、これらには、エクスワード初となるカラー液晶が搭載されたのも大きな魅力だ。そこで今回は、マーケティングを担当するコンシューマ戦略部 CES企画室の上田さんにお話を伺った。

――今年のモデルには、ついにカラー液晶が採用されましたね。

上田「はい。実は以前から、カラー化のご要望は多くいただいていました。ただ、私たちとしてもご期待に応えたいという思いとともに、電子辞書としての使い勝手を最優先したいという気持ちがありまして…。

最も大きかったのは電池寿命の問題ですね。カラー液晶は常にバックライトを点灯させているので、モノクロ液晶に比べて稼働時間が短くなってしまいます。それでは不便だという理由から、昨年まではあえてカラー化を踏みとどまってきたという経緯があります。

ビジネスパーソン向けのカラー電子辞書「XD-A8500」

ところが、今年のモデルの仕様を検討していく中、最新の液晶画面の採用と各所の工夫でこれらの問題を解決できる目処が付いてきたのです。そこで、これを機にカラー化を実現しました。図やイラスト、写真がいかに美しく見えるかについても大きく配慮しています」

――具体的には、稼働時間をどのような技術で解決したのですか?

上田「まず、電池を従来機の単4×2から単3電池×2に変更しました。これにより、電池容量が増えています。でも、本体が大きく厚くなってはイヤですよね。そこで、本体の設計を見直すことで、従来とほぼ同じボディサイズで単3電池の収納を実現しました。

電源を単3電池にすることで大容量化。しかし、ボディの大きさや厚みは従来機とほぼ同じ

一方、液晶画面には、当社独自のカラー液晶『Blanview(ブランビュー)液晶』を採用しました。これは、カシオがモバイル機器用途のために開発した液晶パネルで、光の透過性能が非常に高いという特長を持っています。したがって、バックライト光の透過率も高いので、省電力で明るい画面を実現できるのです。

モバイル機全般用に設計された「Blanview液晶」は、外光が当たっても見やすい。学校で窓側と廊下側の子で見え方に差が出ないように配慮しているとのこと

これに加えて、30秒間操作しないと画面の明るさを抑える省電力モードや、コンテンツの表示内容によってパワーセーブをダイナミックに切り替えるなど、細やかな表示制御をおこなっています。この3つの対策により、画面をカラー化しつつも電池寿命が最大約150時間(アルカリ乾電池使用時)になりました。モノクロの従来機より約20時間延びた計算です。

また、電子辞書は持ち歩くものなので、手違いによる落下、自転車のかごの中でのショック、満員電車の圧力などで液晶や電子部品が破損する可能性があります。そこで、エクスワードは『TAFCOT(タフコット)』と呼ばれる強化設計を採用して、堅牢性を高めています。堅牢でなくても良ければ本当はもっと薄くできるのですが、そこはカシオとして譲れない部分ですから」