日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、日本通信と提携し、通信モジュールとSIMカードを組み込んだモバイルノートPC「HP Mobile Broadbandモデル」を9月上旬から順次発売することを発表した。

発表会では、日本HP 取締役 副社長執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 岡隆史氏が日本HPの事業について説明。コアビジネスとして企業向けに製品を提供してきたが、2年前からパートナーとともに仮想化ソリューションを展開。同じく2年前からPCベンダーとしてのHPブランドの認知を高めるために店頭展開を含めコンシューマ分野に力を入れてきたとした。そのひとつが今回発表した「HP Mobile Broadbandモデル」とした。

事業を説明する日本HP 取締役 副社長執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 岡隆史氏

法人向けをコアに、ソリューション、コンシューマへ事業を拡大。その中で「HP Mobile Broadbandモデル」を展開する

あわせて、ブランド力を高めるためスポーツ選手のバックアップや、ライフスタイルの提案にも取り組んでいる。この中でも一番新しい取り組みとして就職活動をしている学生をサポートする「就活 It's Me」プロジェクトを紹介。このプロジェクトは、「THE COMPUTER IS PERSONAL AGAIN.」をキーワードに展開。日本を代表する経営者、有識者などから自分磨きのためのサポートを受けられるようになっている。このような活動でブランド力をさらに高めているとのことだ。

「HP Mobile Broadbandモデル」を説明する日本HPパーソナルシステムズ事業統括 マーケティング本部 本部長 平松進也氏

続いて、日本HPパーソナルシステムズ事業統括 マーケティング本部 本部長 平松進也氏が、「HP Mobile Broadbandモデル」について説明した。

製品の狙いはネットワーク“Ready"ノートPCの提供。従来のネットブックだと、製品の購入と通信契約が分かれていた。今回、3G通信モジュールとSIMカードをノートPCに組み込んで出荷。しかも、SIMカードのアクティベーションは製品出荷時に完了していて、PCの起動後に本人確認とチャージ先のクレジットカード情報を登録するだけ。ハード・ソフトのインストールや設定も必要ない。別途通信契約をすることなくそのまま日本通信のネットワークが利用できる。通信機能については、最初から100分の通信時間をプリセット。さらに通信を行う場合は、使う分だけ「チャージ式」で通信時間を購入すればいい。

ネットワークはNTTドコモの3G回線を使用。通信料金は3G通信圏内だと1分間10円となる。また、無線LANにも対応し、無線LANスポット(1アクセスポイント)を300円で1日利用できる。無線LANスポットとして、NTTコミュニケーションズ「HOTSPOT」、ソフトバンクテレコム「BBモバイルポイント」、空港情報通信「エアポートネット」、FREESPOT協議会「FREESPOT」の15,000カ所のスポットを用意している。

ビジネスマンの利用例として、社内でのミーティングや提案書作成などは社内LAN、顧客訪問や移動では3G、外部からの日報の提出やメールの確認は無線LANスポットといった具合に、あらゆる通信手段を駆使してモバイルPCを活用可能だ。メリットとして、3Gの利用は限定的で使う分だけチャージすることでコスト削減が可能、30分を超えるようなら無線LANスポットの利用で通信速度とコスト効率がアップでき、全国を網羅した通信網を利用するためにいつでもどこからでもネット接続ができるとした。

就職活動中の学生では、自宅ではハイスペックPCを家族と共有し、就職活動用として可搬性が高い「HP Mobile Broadbandモデル」を利用。携帯電話のように長期契約の必要もなく、使う分だけ通信料を払うため低価格で利用できるとしている。

会場ではモニターを使ってデモを実施。初起動時には、5分間無料でインターネットが体験できるようになっている

ここで、「HP Mobile Broadbandモデル」を使ったデモを実施。初めてPCを起動するとインターネット接続ソフト「HP Mobile Access」が起動。5分間、無料でインターネットが楽しめる。さらに利用するためには開通手続きダイヤルに電話をかけて、ガイダンスに従って「お客様番号」をプッシュするだけ。すると画面上に「開通手続きを完了しました」と表示され、インターネットが再開できる。

「HP Mobile Access」では、「3G」「WiFi」「Setting」「Charge」の4つのボタンを用意。3G回線に接続したいときには「3G」を、無線LANに接続したいときには「WiFi」を、金額をチャージしたときには「Charge」を押す。

さらに利用するためには開通手続きで、「お客様番号」を入力するだけ

チャージもインターネット上から可能。クレジットカード払いとなっていた

日本通信の取り組みを紹介する代表取締役社長 三田聖二氏

最後に、日本通信 代表取締役社長 三田聖二氏が通信とコンピュータの融合について語った。クローズドで規制が多い通信業界と、オープンで規制が少なくグローバルなコンピュータ業界は、なかなか融合が進まなかった。この状況を世界最大のPCメーカーであるHPと世界最高のモバイルネットワークを提供する日本通信が提携することで、通信とコンピュータが融合し箱から出すだけですぐに使える「HP Mobile Broadbandモデル」が誕生できた。これにより、低価格だけでなく、付加価値の高いネットブックが登場できる環境が整ったとした。

9月のサービス開始時には、ネットブック「HP Mini」のほか、「EliteBook」のフルスペックタイプとタブレットモデルの3モデルを投入予定で、他モデルへの展開も検討している。価格は決定されていないが、通信機能非搭載モデルに5,000円から10,000円追加する程度になりそうとのこと。今回の「HP Mobile Broadbandモデル」の展開は、今後スマートフォンを展開するときにも使えそうだが、これについては技術的には可能だが、パートナーなどとの複雑な関係があるため、スマートフォンに応用することは難しいとした。

参考出展されていた「HP Mobile Broadbandモデル」のネットブックタイプ。ベースは「HP Mini」

バッテリーを外すとSIMカードスロットがあることが確認できた

「HP Mobile Broadbandモデル」は、既存のノートPCをベースにモジュールを追加している。HPでは、このような展開を想定してノートPCの開発を進めているため、対応可能な機種はバッテリーを外すとSIMカードが挿せるようなスロットがすでに用意されているとのことだった。

「HP Mobile Broadbandモデル」のタブレットタイプ。

「HP Mobile Broadbandモデル」のフルスペックタイプ。タブレットとともに「EliteBook」に通信モジュールとSIMカードを組み込んでいる

なお日本HPは、今回の日本通信との提携ではNTTドコモの3Gネットワークと無線LANスポットを利用することになっただけで、キャリアについてはオープンな姿勢をとっているとのこと。WiMAXについてもすでにモジュールを組み込んだPCを発売しているように、さまざまなキャリアとの協業が可能という見解を示した。