新販売モデルなどの影響で、携帯電話収入は減少も、販売費減で増益に

NTTドコモ 山田隆持社長

NTTドコモは、2008年度通期(2008年4月-2009年3月)の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比5.6%減の4兆4,480億円、営業利益は同2.8%増の8,310億円、税引前利益は同2.5%減の7,805億円、当期純利益は同3.9%減の4,719億円で、減収ながら営業増益となった。新たな割引サービスと、新販売モデルの影響で、携帯電話収入が減ったものの、端末調達費、販売代理店への販売手数料など、販売費用も減ったことが、営業利益の伸びにつながった。

同社の山田隆持社長は「2008年度は中期ビジョンを策定し、変革とチャレンジに取り組み始めた年だったが、これには一応の手ごたえを感じている。事業はおおむね順調だった」と述べた。今回の営業利益8,310億円は、通期見通しの値を0.1%上回っている。

新たな割引サービス「ファミ割MAX50」「ひとりでも割50」「オフィス割MAX50」の加入者は2009年3月末で3,270万に上り、加入率は、同社の携帯電話契約数の約6割に及んでいる。端末の価格は高くなるが基本料金が低くなる、新しい販売モデル「バリューコース」の選択率は95%に達している。

これらの要因により、携帯電話の音声収入は同18.7%減の2兆1,496億円と大きく減少した。パケット通信収入は同10.0%増の1兆5,117億円で拡大基調だった。端末販売収入が同11%増の603億円の増だったが、音声収入の減少分までは埋められず、携帯電話収入は同8.9%減の3兆6,613億円となった。

2008年度は、増収ながら、営業増益を確保した

一方、新販売モデルにより、販売代理店への販売手数料が684億円の減。さらに端末調達費用も3,224億円減少した。第2世代携帯電話「mova」資産の繰上げ償却などを含め、減価償却が277億円の増、その他の費用が766億円増えたが、全体としては営業費用が2,865億円の減となり、売上げの減少分を吸収した。その結果、営業利益は前年同期比2.8%増、額にして226億円、伸長した。

端末の総販売数は対前年同期比21.8%減の2,013万台だった。新販売モデルにより、端末購入から買い替えまでの期間が長くなったことと、景気の後退の影響を受けたが、山田社長は「第3四半期までの状況からすると、さらに下げ幅は大きくなり、25%減くらいになるのではないかとみていた。しかし、第4四半期に春商戦の効果が上がり持ち直した。魅力的な端末を投入することでがんばった結果、21%減に留まった」と評した。同社は「2009年度は、景況感の悪化で買い控えも予想される」(山田社長)ことから「総販売数は同2%減の1,970万台」と予想している。

2008年度の通期解約率は0.50%となり、前年度通期の0.80%をさらに下回り、過去最低水準となっており、2008年度の第3四半期には0.44%にまで下がった。第4四半期は「春商戦の影響でやや上がって0.52%」(同)となったが、山田社長は「海外では、0.50%という数字でも、驚かれるが、強制的理由での解約が0.1%、自然減が0.2%近くあり、0.4%台まで下げたい」として、さらに低くすることを目指す。

携帯電話収入が大幅減だが、端末販売費用も減少した

通期の解約率は0.50%に

顧客満足度向上のための施策続々

同社は「顧客満足度向上の運動をしているが。手ごたえを感じ始めている。さらに向上させるため」(同)400億円程度を投入する意向で、2009年7月から2010年6月末まで、ドコモショップで携帯電話を無料で点検する「ケータイてんけん」のサービスを展開するとともに、同7月から、「電池パック安心サポート」を拡充する。従来、ドコモプレミアクラブ会員向けに、一定期間以上利用すると、電池パックを無料提供していたが、これに加え、補助充電アダプタも選択できるようになる。また、同5月から「パケ・ホーダイ・ダブル」「Biz・ホーダイダブル」の月額下限料金を1,029円から490円に引き下げるほか、ファミリー/オフィス割引グループ内メール無料の対象を拡大、添付画像、デコメールを含め、大容量の動画などの添付メールも無料にするなどの策を講じる。

同社は今年1月に、「movaサービス」「DoPaサービス」を2012年3月末に終了させると発表しており、いよいよ、第2世代サービスが終焉に向かっている。「FOMA」の契約率は2009年3月末で89.8%に達し、前年同期比で7.5ポイント上昇している。同社では、この数値を2010年3月末には95%にまで引き上げることを目標としており、「FOMA」への移行策をいっそう促進していく方針だ。

2009年6月、HSUPA導入、上り最大384kbps/下り最大7.2/14.4Mbpsに

現行世代の通信方式ではW-CDMAとその拡張方式である、下り伝送速度が最大3.6/7.2Mbps/上りが最大384kbpsのHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)を用いているが、2009年6月には、下り最大7.2/14.4Mbps/上り最高5.7MbpsのHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)を導入する予定で、2010年には下り最高300Mbps、上り最高7.5MbpsのLTE(Long Term Evolution)を導入する見通しだ。山田社長は「LTEは、W-CDMAを導入したときのように、(LTEとの)オーバーレイ(2重構成)で進め、主要都市を中心に4~5年かけてカバーしていきたい。投資総額は3,000~4,000億円ほどになる」と話す。

2009年度の通期業績予想は、売上高が対前年同期比1.5%減の4兆3,820億円、営業利益は同0.1%減の8,300億円、税引前利益は同6.6%増の8,320億円、当期純利益は同4.5%増の4,930億円としている。同社では、2009年度も音声収入は苦戦するとの見通しで、2,650億円の減を見込んでいる。しかし、パケット収入は520億円の増と予想、また代理店手数料は660億円の、ネットワーク関連コストは1,340億円の削減ができるとみている。また、一般経費を120億円減らすことを図っており、これらを総合して、営業利益は、2008年度比でほぼ横ばいの8,300億円を確保することを狙う。