SIMカードが使えると、何が便利?
SIMカードは、容易に脱着できる小さなICチップである。また、SIMカードと携帯電話端末は原則として契約上の連動性はない(契約上の連動性を持つこともある。詳しくは後述する)。そのため、SIMカードを別の携帯電話端末にさしかえるだけで機種変更が完了するというメリットがある。また、SIMカードには電話帳(とは言っても簡易的なものだが)やSMS(ショートメッセージ)を記録することもできるので、電話帳やSMSもSIMカードごと移動できて便利だ。
加えて、同じSIMカードを複数の端末で使い回すことも可能なので、TPOに応じて電話番号を変えずに端末だけ変えるといった使い方ができる。例えば、プライベートと仕事で端末を使い分けたり、通話するときとネットを楽しむときに使い分けたり、といった具合である。
また、同じ端末に複数の携帯電話事業者のSIMカードをさしかえて使い回すことも可能だ。海外の携帯電話では、さまざまな通信事業者のSIMカードを自由に入れ替えて使えるいわゆる「SIMフリー端末」が一般的なので、滞在場所に応じて一番お得な料金で通話・通信を行えるSIMカードに入れ替えることで、通信料金の節約ができるのだ。
日本ではSIMカードはいつから普及したの? 特徴は?
日本では、日本のオリジナル規格である、PDC方式が広く普及した。PDC方式は、2Gとして「電波システム開発センター(現在の電波産業会)」が規格策定し、NTTドコモが主導して普及を図ろうとした通信方式だ。このPDC方式では、携帯電話端末に電話番号などの契約情報を直接書き込む方式を採用していた。そのため、機種変更時は店頭の機械を利用して契約情報の移行を行う必要があり、機種変更後の古い携帯電話は新たに別の契約情報を書き込まない限り使えなくなってしまうという欠点もあった。途中、IDOとDDIセルラーグループ(共に現在のKDDI・沖縄セルラー電話)が2Gと3Gの中間的な規格である”cdmaOne”への移行を開始したが、PDC同様、契約情報を携帯電話端末に直接書き込む方式だった。日本の携帯電話は、このように「機種変更したら前に使っていた携帯電話は、原則として使い物にならない」という状況だったのだ。
そんな状況に変化が起こり始めたのは、2000年にNTTドコモが主導して国際規格として策定作業中だったW-CDMA方式の「FOMA」の試験サービスを始めてからである。