2007年春のIDFでその存在が発表され、2007年秋のIDFではサンプルも公開された「SkullTrail」だが、今回その動作サンプルを入手することが出来たので、性能を含めてレポートしてみたい。

3.2GHz動作の「Core 2 Extreme QX9775」

「SkullTrail」そのものについては、上に示した記事を参照していただくのが早いだろう。要するに2P Xeonのプラットフォームを転用したUltra High-End Desktopである。そんなわけで、当然ながらCPUもハイエンド。Yorkfieldベースの3.2GHz Quad Core製品となる(Photo01)。ただし、CPU-Zではきちんと「Core 2 Extreme QX9775」と表示されているのが判る(Photo02,03)。ちなみにパッケージは、Xeonのものを流用しているためか、LGA771となっている(Photo04)。もっともこれはどちらかというと、LGA775のCPUを使ってDual Processor動作をさせないための防止策という気がしなくもない。ちなみにサンプルと一緒に届いた資料によれば、TDPは150Wとの事だ。

Photo01:SkullTrailのキモとなる2個の"Core 2 Extreme QX9775"。当然現在はES品なので、sSpec Numberは4桁のものとなっている

Photo02:こちらと比較すると、一番下の"Selection"がEnableになっているのが判る

Photo03:ということで、Processor #2を選ぶ事も可能。Processor Name以外はCore 2 Extreme QX9770との違いは見当たらない

Photo04:LGA775のピン配置(例えばこれ)と比較すると、誤挿入防止切り欠きの位置が微妙に異なっており、またLANDの数も異なっているのが判る

マザーボードは巨大な「D5400XS」

さて、これと組み合わせるマザーボードが「D5400XS」である(Photo05)。高さは330mmと通常のATXサイズだが、横幅は305mm。装着するケースを激しく選ぶことは間違いないだろう。ボード重量は(CPU×2を除いて)1452gで、結構ずっしりとくる。CPUへの電源供給は5-Phaseの構成(Photo06)。さらに、DIMMソケット専用にも3-Phaseの電源が用意される(Photo07)。

Photo05:サイズは明らかにサーバーのもの。まぁこちらと同じサイズであるが、サンプルではパッシブヒートシンクだったのが製品版ではアクティブファンに変わっているあたり、かなり発熱が大きかったと想像される

Photo06:CPUへの電源供給回路よりも、その左上に並ぶEPS 12Vの8Pコネクタが2つ並んでいる事に恐怖する。資料によれば、Dual Graphicsであっても定格動作なら1つにだけEPS追加電源コネクタを装着すれば良いが、オーバークロック動作を試す際には両方に8Pの追加電源コネクタを装着せよとしている。ちなみに電源のスペックは
8GB Memory/4 GPU/2CPU - 1400W以上を推奨
4GB Memory/2 GPU/2CPU - 1000W以上を推奨
となっている

Photo07:DIMMソケット用に2-Phaseのものが用意されているのはそれほど珍しくないが、3-Phaseは(デスクトップ用としては)初めて。やはりFB-DIMMの高速動作対策なのであろう

ボードそのものの構成はこんな具合(Photo08)だ。中核となるのはIntelのSeaburgことIntel 5400 MCH(Photo09)であるが、Intel 5400 ChipsetのThermal/Mechanical Design Guidelinesを見ると、ヒートスプレッダにPhoto09の様な切り欠きは無い筈。これがES品に起因するものなのか、SkullTrail用になにか考慮したものなのかは不明だ。このIntel 5400 MCHから出る2本のPCI Express x16レーンの先には、NVIDIAのnForce100がトータル2個鎮座している(Photo10)。

Photo08:これも添付の資料より

Photo09:ものすごくゴツいパッケージであるが、Intel 5400チップセットのTDPは1600MHz FSBでFB-DIMMが2chで36.2W、4chだと38Wにも達するからだろう。TCaseは83.8℃(1600MHz FSBの場合)

Photo10:NVIDIAは自社のnForce 780i向けなどにnForce 200というスイッチチップを提供しており、このnForce 100との違いは現時点では良くわからない。IDFではPCI ExpressのSwitchだと説明があったのはレポートした通りで、機能的にはnForce 200と大差ない気もする

一方、サウスブリッジとしては「ESB2」ことIntel 6321 ESB(Photo11、12)が配され、ここに各種デバイスが接続されている。主要なものをリストアップすると、まずPhoto08には記載されていないeSATA用コントローラのMarvell 88SE6121(Photo13)、FWHとSerial I/O(Photo14)、HDA Codec(Photo15)、Tekoa GbE(Photo16)、IEEE1394コントローラ(Photo17)といったところ。その他に目に付いたものは、電源コントローラ(Photo18)、USB 2.0 Hub(Photo19)、FB-DIMM用PLL(Photo20)といったあたりか。あと、マザーボード下端にPower/Resetのスイッチが用意されているのがちょっと興味深い(Photo21)。

Photo11:Intel 6321 ESB。パッケージは40mm×40mmとかなり大きいが、1272ものピンが出ているからやむを得ないとも言える

Photo12:ダイのアップ。ダイ自体も約14mm×11mm(実測値)とかなり巨大であるが、恐らくはPad Limitでこれ以下のサイズに出来なかったものと想像される。ちなみに6311との違いは、Dual GbEやIntel IOAT、Kumeran GbE用のSerDesの搭載といったところ。ただ今回はSingle GbEで、しかもTekoa GbEを搭載しているあたり、いまいち宝の持ち腐れという感は否めない。IOATを搭載したかったから、なのかもしれないが

Photo13:バックパネルのeSATAコネクタのすぐ後ろに配される88SE6121。ESB2とはPCI Express x1レーンで接続される

Photo14:Flash MemoryはSST 49LF016C。今時Serial Flashでないのはちょっと珍しいが、Specificationを見る限りまだESBはSerial Flashに対応していない模様。I/OにはWinbondのWPCD376I Advanced Super I/O for Desktopが搭載されている。もっともD5400XSがLegacy I/Oを一切持っていない事を考えると、このWPCD376Iの目的はGPIO経由で右下のALTERAのCPLD(EPM7032AE)を接続するためではないか?という気がする

Photo15:SigmaTelのSTAC9274D5 10ch HD Audio Codec。もっともPC Audio Codec全般は2006年にIDTに買収されたため、製造はIDTということになる

Photo16:Vidalia(Tekoaの省電力版)ことIntel 82573L。ESBとはPCI Express x1で接続される

Photo17:TIのTSB43AB22A。400MbpsのIEEE1394aを2ポート持つコントローラ

Photo18:Analog DevicesのADP3189 8-Bit Programmable 2- to 5-Phase Synchronous Buck Controller。これでCPUへの5-phase電源の管理を行っているようで、各CPUソケットの脇に1つずつ配されていた

Photo19:SMSCのUSB2514 4ポートUSB Hub。Photo05で言えば、ヒートシンクカバーの下にあたる位置(Photo14の左上にちょっとだけ覗いているのが判る)に配される。ESB2はUSBが8ポートしか提供されないので、これを補うために追加したのだと想像される

Photo20:ICS(現IDT)の9FG1200 FB-DIMM/PCI Express用のPLL。場所から考えてFB-DIMM用と思われる

Photo21:エンジニアリング用のマザーボードでは、ケースに収めずに使うことが多いから、こうした形でスイッチが用意されているのは珍しく無いが、エンドユーザー向け製品にこれが残っているのはちょっと珍しい。あるいはこれはES品だからという話で、最終製品からは(パターンは残っていても)スイッチは消えるのかもしれない