昨年末に登場した次世代レコーダーは各社ともに好調で、年が明けた1月初旬は品薄で入手が困難なモデルも少なくないようだ。この理由は、各社がこぞって採用したMPEG4 AVCによるハイビジョン長時間録画の採用によるものが大きいだろう。注目度の高いMPEG4 AVC録画だが、高精細な映像が魅力のハイビジョン放送だけに、長時間録画による画質劣化も気になるところ。今回は特にMPEG4 AVC録画の実力に焦点を絞り、各社の最新モデルの実力をテストしてみた。

パナソニックのMPEG4 AVC録画は「フルハイビジョン4倍録り」。1TBのHDD容量を誇るDMR-BW900は、HDDに最大で約381時間のハイビジョン録画が可能が可能。さらに、MPEG4 AVCで録画した番組は、ブルーレイディスク(以下BD)のほかにDVDにも保存できる。1層BD-Rでおよそ1200円程度と高価なディスクに比べて、はるかにリーズナブルなDVDにもハイビジョン録画ができるのは、コスト的にも非常にありがたい。これらの機能は、HDD容量の少ないDMR-BW800/BW700にも搭載されている。

パナソニックDMR-BW900 市場価格29万8,000円前後

テストで使用した最上位モデルのDMR-BW900は、これらの機能に加え、高級オーディオ機器にも採用される高音質パーツを数多く採用していることが特徴。電源ケーブルもOFC素材を採用したもので、BW700などに付属するケーブルに比べると一回り以上太いしっかりとしたものになっている。ディーガシリーズというと、誰でも気軽に使えるモデルというイメージを持つ人が少なくないが、同社の高画質・高音質技術が惜しみなく投入され、ハイビジョンの録画・再生はもちろんBDソフトの再生でも優れた実力を備えている。

長時間モードでも優れた実力を発揮

パナソニックは、BDソフトにおけるMPEG4 AVCエンコード技術の開発のため「パナソニックハリウッド研究所」を設立し、フルハイビジョンでのエンコードを実現するMPEG4 AVC High Profileの規格策定にも貢献するなど、高い技術力をアピールしている。その技術がそのまま盛り込まれたと考えていいのが、新開発のMPEG4 AVCエンコーダー。録画モードは3つあり、HGモードがおよそ13Mbps、HXモードが約8.5Mbps、HEモードが約5.7Mbpsとなっている(HG/HXモードの転送レートは録画時間から推定した参考値)。記録解像度はすべて1920×1080画素のフルハイビジョン記録だ。

DMR-BW900の録画モード

今回のテストでは、番組をDRモードで録画・視聴した後、各モードに変換し、それぞれの比較用画像を撮影している。録画ソースには主にBSデジタル放送の番組を使用している。DRモードの画質はコントラストのしっかりとした映像で、色乗りはやや穏やかな印象。暗部でやや色が黒に寄ってしまいがちになるが、不足感はほとんどない。

HGモードはドキュメント番組を使用したが、空撮シーンでざわざわとしたノイズが目立ちがちな部分で面白い現象が確認できた。解像度の劣化はまったくないのだが、ノイズ感がやや抑えられ、オリジナルよりも見やすい印象になっていることだ。画質にこだわると再変換による劣化や転送レートを抑えた長時間記録による画質低下を懸念しがちだが、むしろオリジナルよりも好印象となったのは意外だった。BDなどへの保存という点でもまったく問題のない画質で、HGモードを常用してもいいと思ったほどだ。

続いてHXモードは、ドラマ放送を録画。拡大画像を見ると若干細かな模様などが甘くなった印象もあるが、動画を見ている限りでは、遠景のパノラマシーンなどで、やや遠くの景色のディテールが甘くなったと感じる程度。このあたりから、ビル群など直線主体の輪郭でややチラつきが目立つようになる。

もっとも低レートとなるHEモードは、箱根駅伝と「紅白歌合戦」を見た。特に「駅伝」は、ランナーを追うカメラが常に動き、声援をかける群衆の数も多く、かなり厳しいソース。にも関わらず、画質的にはほとんど不満がない。解像度的にはややソフトになっているが、選手のゼッケンなどが読みにくくなることもなく、ハイビジョンらしい高精細さがしっかりと残っているのには驚かされた。比較せずにいきなり放送を見ると、元々こういう放送だったと思ってしまうほどだ。BD保存を考えない「見たら消す」番組ならこれで十分。気になったのは「紅白」での細部のチラチラとしたノイズの動き。特に暗いシーンやカメラが大きく動く映像で目立ちがちだ。HEモードでさえ、これだけ高精細な映像なので、もう少し解像度感を落としてでもノイズ低下を重視してもよいと感じた。

編集機能はディーガの唯一の泣き所か?

率直に言って、ブルーレイディーガのMPEG4 AVC録画は、他社よりも一枚上手だ。特に低レートのHEモードはかなりの実力と言っていい。映画やライブコンサートなど、画質が気になる番組はHGモードを使い、連続ドラマなどはHXモードでまとめ録り、一般的なニュースやバラエティなどHEモードと使い分けると良さそうだ。これだけ高画質となると、BDへの長時間記録だけでなく、DVDへの保存も実用的と言える。それだけに気になったのが編集機能。チャプターの分割は再生中に行うことができ、もちろんフレーム単位の編集も可能。チャプター分割後は、不要な部分だけをまとめて削除することもできる。動作のスピードなどもスムーズで使い勝手に不満はないが、CM部分でいちいちチャプターを分割する作業は面倒だ。競合モデルがCM部分などを自動で判別してチャプター分割を行う機能を持っているため、ここは物足りなさを感じてしまう。ダビング10時代には、ディスクなどへのダビングの機会も増えるため、自動チャプター分割の採用に期待したい。

DMR-BW900の編集画面

人気の高さを反映する優れた実力

レコーダーで1、2を争う人気を誇るディーガシリーズ同様、BDレコーダーも高い実力を持っていることがわかった。特にMPEG4 AVC録画の高画質だけでなく、BDソフトも色再現のしっかりとした映像と、重低音までしっかりと伸びた芯のある音など、画と音の実力は高い。それに加えて、使いやすい番組表やシンプルな操作性などの使い勝手の良さが加わり、誰にでも安心してすすめられる優秀モデルに仕上がっている。また、SDカードは同社のハイビジョンムービーで録ったAVCHD動画にも対応し、自分で録ったハイビジョン動画の編集やBD保存も万全だ。市場価格をみると、他社にくらべてやや高い価格だが、それにふさわしい内容となっている。

DMR-BW900の番組表画面