11月14日の朝の8:30からの全体会議において、米国のDepartment of Energy(DoE)のUnder Secretary for ScienceのRaymond Urbach氏がAmerican Competitiveness Initiative, Role of High End Computingと題して講演を行った。

DoEは、米国のエネルギー政策を司る省で、最近注目のバイオフューエルなども担当範囲であるが、原子力に関しては発電だけでなく、核弾頭の維持管理プログラムも担当しており、スパコン開発を牽引してきたASC計画も同省の担当である。DoEは長官(Secretary of Energy)、副長官(Deputy Secretary of Energy)の下に3人のUnder Secretaryがおり、それぞれ原子力のセキュリティー、エネルギー、科学を担当している。今回、講演を行ったOrbach氏は、3人の次官の一人で、米国の科学振興政策の元締めである。

SC07 Plenaryで講演するエネルギー省次官のOrbach氏。

同氏の担当するOffice of Scienceの2007年予算は、約$3.5Bであるが、大統領は、HPCは米国の競争力の確保には必須という認識であり、来年度の予算案は16%の増加となっている。そして、このペースを継続し、2016年には現在の倍増の$7Bとする計画であるという。開発すべきアプリケーションとして、地球規模での高精度の気象モデル、核融合炉ITERの高精度シミュレーションモデル、ディーゼルエンジンのシミュレーション、社会科学に基づく燃料消費モデル、古代文明を再現するモデル、微生物のコミュニティーモデルによるエネルギー代謝のエンジニアリングなどを挙げ、ハードウェアとしては、2016年までに1ExaFlopsを超えるスパコンを設置すると明言した。なお、ExaはPetaの1000倍で、今回のTop500で1位のLLNLのBG/Lの約2000倍の能力を持つマシンである。

そして、将来は、実験や理論よりもシミュレーションの役割が大きくなり、シミュレーションが理論に情報を与えたり、実験なしに信頼できる結果が得られたりするようになっていく分野もある述べ、より大規模で精度の高いモデルは、米国の計算科学のリーダーシップと経済的競争力の維持に必須と結んだ。