--自然言語技術はユーザーにどのような変化をもたらすでしょうか?

将来、ワープロ、表計算、CRMなどあらゆるアプリケーションにセマンティック検索、自然言語検索が組み合わされると思います。ユーザーが「東京でのXXの売上げは?」と入力すると結果が表示され、「X月からY月のデータは?」と入力すると結果が表示される、というイメージです。

セマンティックは、人間のダイアログ(対話)をコンピュータで実現します。それも、自分の言語で行えるようになります。私はオランダ人なので、東京証券取引所にオランダ語で「ファンドのベスト5は?」と入力すると、「業界は?」と質問が戻り、「バイオ」と私が入力すると、「ベストとは? 年上昇率が5%、それとも10%?」などの新しい質問が表示される -- このように対話により私の意図を探り、それにあった答えを返すことが実現します。

実際、われわれのコミュニケーションは質問がベースです。「元気ですか?」「仕事は何ですか?」「何を食べますか?」……質問ベースの検索ソフトウェアこそ、鍵を握るものになるでしょう。このような技術は自分専用のコンシェルジェとなり、自分のコンシェルジェを自分仕様にトレーニングできるようになるでしょう。

私は寿司が大好きですが、私が住むアムステルダムの寿司には満足していません。たとえば、「アムステルダムに新しい寿司レストランがオープンしたら知らせてほしい」などのように設定することが可能になります。今後、セマンティック、検索、ビジネスインテリジェンスが融合し、ユーザーは自分専用のコンシェルジェを持つことができるでしょう。 このようなことから、私は「Webは人間的になる」と信じています。

--このようなことはいつ実現するのでしょうか? エンタープライズでは?

スペインの大手テレコムTelefonica向けに、これに近いことを実現する最初のバージョンを提供しています。ユーザーはわれわれのシステムと対話でき、TelefonicaのWebサイトでは女性のアバターが対話に応じます。

アプリケーションでの実装では、1年半ごろに実現できるでしょう。完全な対話が可能で、質問に答えると、前の質問の回答に応じた質問をします。翻訳まで含めると、3年というのが私の予想です。

ですが、先ほどもお話したように、課題は企業側です。このような技術を信じていないので、投資に後ろ向きです。おそらく、オンラインコミュニケーション技術の可能性を理解できる新しい世代になると、変化がでてくるでしょう。現在のWebサイトは使い勝手がよいとはいえません。Q-goのWebサイトでは、ユーザーが音声で質問するとテキストに変換し、これを分析した結果、答えを音声で返すということが可能です。

--いま取り組んでいる技術的な課題は?

1つの質問に1つの答えを出す「精密な回答」です。「アメリカ大陸が発見されたのは?」と聞くと、多くの人が「コロンブスが発見した年」と答えるでしょう。ですが、バイキングもアメリカ大陸を発見しています。

また、同じ質問を朝するのと夜するのとでも、回答が異なります。「コンサートに行きたい」という質問は、朝と夜とでは含む意味が異なりますね。感情を感知することも課題です。ストレスが多いときとリラックスしたときとでは、タイプする言葉が異なるのか? ストレスが多いときのほうがミスタイプが多いのでは? これにより、感情を察することができるかもしれません。

このように、精密な回答、それに感情の感知の2つが当面の課題です。現在、その分野の専門家らと取り組んでいますが、だいぶ先のことになりそうです。