次はMontevinaであるが、実はこれに関しては今回殆ど情報がない。とりあえずMobile WiMAXに関しては順調に進んでいる(Photo22)アナウンスはあったので、これについてはもう少し説明を行うが、Photo01にあるその他のコンポーネント(Cantiga/Boaz/Robson 2.0)については今回テクニカルセッションを含めて説明が一切なかった。

Photo22:ちなみに、Dana Pointをベースにベンダーが独自のCombo Card(例えばTV Tunerと)を作るという案はありだそうで、そういう場合もやはりShilohと組み合わせる事になるだろう。

さて、そのMobile WiMAXである。現時点ではWiMAXオンリーのDana Pointと、Wi-FiとコンボになるEcho Peakの2製品が用意される。Montevinaが登場する2008年前半というタイムフレームでは、まだMobile WiMAXが利用できる場面は非常に少ない。なので、ここでCentrinoの要件にMobile WiMAXまで含めてしまうと、却って普及の阻害要因になると判断したのであろう。なのでMobile WiMAXが利用できる地域ではEcho Peakを、それ以外の場所はShiloh(無線LANカード)のみを入れておき、後で必要に応じてDana Pointを追加するといったアプローチを可能にしたものと思われる。

そのWiMAXとMobile WiMAXについてだが、今回は技術的な内容というよりは、やや政治的な側面から現状の規格についてテクニカルセッションで触れられた。ちょっと突っ込んだ話になるが、もともとのWiMAXはIEEE 802.16として制定されたもので、10~66GHz帯を使い、転送速度は100Mbpsを越え、カバー範囲も半径50Kmという広大な規格である。ただしこれは固定局向けのサービスであった。これをMobileに適用しよう、という事でこれに続きIEEE 802.16a-2003/IEEE 802.16c-2002/IEEE 802.16.2-2001という3つの規格の制定が始まり、これが最終的にIEEE802.16-2004として標準化された。これにローミングの機能を追加したのがIEEE 802.16eという規格で、最終的にIEEE 802.16e-2005として標準化された。

ここまでの前提を元にPhoto23を見ると、まだまだ規格が変わってゆく事が判る。とりあえずはIEEE802.16e-2005の改定第2版をベースに、WiMAX ForumでMobile WiMAX Release 1の実装を行っているが、これに続きIEEE 802.16 REV(IEEE 802.16gの機能その他を追加したもの。IEEE 802.16gは管理機能を追加するものだが、現在はまだドラフトの審議中。現時点で最新のものは、3月10日に提出されたDraft D9)などを追加したものを2008年第1四半期に制定、これをベースにMobile WiMAX Relase 1のアップデートを行う。更に長期的には、2009年第3四半期を目指してIEEE 802.16mの標準化を行い、これをベースにしたMobile WiMAX Relase 2を2010年にリリースするという計画だ。

Photo23:今のIntelが描くMobile WiMAXの将来。製品が出てくる前に、ここまでめまぐるしくUpdateする標準も珍しいのではないかと思う。良きにつけ悪きにつけ、IEEE802委員会におけるIntelの影響力が良くわかるとは言える。

このIEEE 802.16mというのは、Mobileで100Mbps、固定局では1Gbpsの速度を可能にするというもので、大幅な拡張を施す予定になっている。実際Mobile WiMAX Release 1がTDD( Time Division Duplex:時分割多重)のみなのに対し、Release 2ではFDD(Frequency Division Duplex:周波数分割多重)が加わっていることでもそれは伺える。以下セッションではIEEEやWiMAX Forumの動向、相互運用性を確保するための方策、ネットワーク層やテストの仕様、相互接続性確保の方策などについて順次説明を行っているが、このレベルになると流石に本稿の範囲を外れるので、詳細は割愛する。ちょっと面白いのは、相互接続性テストの段階ではBase Stationの話が出てくるのだが、それ以外では一切Base Stationの話が出てこないこと。IEEE 802.11a/b、つまりCentrinoの立ち上げの際の無線LANに関しては、Intelは自前でBase Station(というか、AccessPoint)を提供するといった作業を行っていたが、IEEE 802.11n(MIMO)やWiMAXに関しては完全に他社任せということになってしまったようだ。もっとも以前と異なり、Intelは通信機器向けのビジネスから次第に足を洗いつつある。現在ネットワーク機器に関しては、ネットワークプロセッサと一部のMAC/PHY、及び光ファイバー関連に絞られており、これは本業回帰という意味で正しいアプローチなのであろう。