グローバル化や情報化が大きなうねりとして押し寄せている昨今、教育機関には、社会の変化を的確にとらえて対応することができる人材の輩出が求められています。人材に求められる要求が絶えず変化する以上、教育のあり方も同様に変えていかなければなりません。

しかし、どれだけ社会が変化しようとも、変わらない価値があるものも存在します。仙台育英学園高等学校では、「不易」と呼ぶべきこうした教えと、社会の変化とともに変えていく必要がある「流行」を明確に定めることで、高い質の教育を提供し続けています。

文武両道を標榜する仙台育英学園高等学校。同校は「至誠・質実剛健・自治進取」という建学の精神のもと、これまでに名門大学への進学生、多数のアスリートを輩出してきました。同校の志は、東日本大震災によって校舎の 1 つを失った後も変わりません。被災後に建て直された宮城野新校舎では、社会のグローバル化、情報化を見据えた最先端の設備と授業を目指し、マイクロソフトの Surface Pro 4 を利用した教育が実践されています。

  • 仙台育英学園高等学校

プロファイル

1905 年に加藤 利吉 氏によって「育英塾」が開塾されて以降、110 年以上にわたり発展を続けてきた、仙台育英学園高等学校。同校は、国際バカロレア認定校というグローバル教育の側面、MOS 試験受験認定校という情報教育の側面を持つほか、アスリートを多数輩出するスポーツ教育でも知られる、文武両道の高等学校です。

導入の背景とねらい
情報化を見据え、新校舎に最先端の ICT 設備を施工。情報科学コースの生徒 1 人に対し 1 台の 2 in 1 タブレットを貸与

何事にも果敢に、かつ自ら考えて取り組んでいくという「自治進取」を建学の精神とする仙台育英学園高等学校。1 世紀以上もの歴史を持つ同校ですが、その教育の成果は、有名大学への進学、スポーツ界への進出など、多方面において優秀な人材を輩出し続けていることに表れています。

仙台育英学園高等学校では、「自治進取」を不易なものとして定めながらも、教育のあり方については時代を見据えた改革を行ってきました。「不易と流行の両立」ともいえるこの教育方針について、仙台育英学園高等学校 情報科学コース 教務部長 日野 彰 氏は次のように説明します。

仙台育英学園高等学校 情報科学コース 教務部長 日野 彰 氏

「昨今、『未来を切り拓く力』という言葉が重要性を帯びています。これは『自治進取』の精神そのものであり、教育において変えてはならないものだと考えています。ただし、人材に求められる能力は時代ごとに変化します。教育機関に求められるのは、絶えず変化する要求に応えることができる対応力を備え、なおかつ主体的に物事に取り組める人材の育成といえるでしょう。このような人材を育むためには、教育自体も絶えず変化していかなければならないのです」(日野 氏)。

仙台育英学園高等学校の教育の変化は、さまざまな側面に見て取ることができます。たとえば、同校は 1961 年、グローバル人材の育成にいち早く着目し、国際理解教育を開始。海外研修の実施や留学生の受け入れ、海外姉妹校への生徒派遣、スポーツ、文化の相互交流などを半世紀以上にわたって実施することで、グローバル社会に向けた教育の実績を築いてきました。また、2000 年代に入り、加速する情報化に対応すべく、ICT 教育に特化した情報科学コースを設置し、エンジニア育成を強化しています。

日野 氏の言葉のとおり、対応力に富んだ人材を輩出するためには、教育機関そのものが時代の変化に対応していく必要があります。これまでにさまざまな「時代に応じた教育カリキュラム」を策定してきた仙台育英学園高等学校。2011 年 3 月に発生した東日本大震災で、同校の宮城野校舎は大きな被害を受けました。しかし、それからわずか 2 年後の 2013 年には新校舎を完成させ、学園を復興しています。これは、同校が培ってきた変化への対応力を象徴した出来事といえるでしょう。

仙台育英学園高等学校の高い対応力は、教育カリキュラムだけでなく、生徒が日々過ごす学校環境にも表れています。宮城野校舎の新設に際し、同校は校内の全教室に電子黒板機能を備えたプロジェクターを設置。同時に、情報科学コースの生徒を対象に 1 人 1 台のラップトップ型 PC を貸与し、従来、紙やペンで行ってきた作業を ICT 上へシフトしました。

日野 氏は、この取り組みの狙いについて、次のように説明します。

「教育現場における ICT 活用で何よりも期待したのは、生徒の学習意欲、興味関心、創造性、発想力といった基礎能力を高められる点です。実際、ICT の活用は、生徒の授業に対する集中力を高めると同時に、主体的な学びにも好影響を与えています。『自治進取』をより深化することができたと感じ、この効果をより高めるべく 2017 年度からは、生徒に貸与する端末を 2 in 1 タブレットである Surface Pro 4 へ変更。全教員にも同端末を配付しました」(日野 氏)。

システムの概要
2 in 1 タブレットの選択肢は Surface Pro 4 一択。「自分たちが最先端の端末を使える」という感動が、生徒の主体的な学びにつながる

2017 年度における取り組みは、ICT 環境の発展だけでなく、授業のあり方の変革も視野に入れて進められたといいます。仙台育英学園高等学校の宮城野校舎に勤務する教員はこれまでも ICT を活用した授業を実践してきました。しかし、その内容はいわゆる講義型授業の域を出ず、生徒の集中力を高め、主体性も伸ばすためには、授業に双方向性を持たせることが不可欠だったのです。そのためには教員が生徒と同じ目線に立ち、教員と生徒がより密なコミュニケーションを取れる環境を整備する必要があったのです。

生徒に貸与する端末と教員用端末を Surface Pro 4 に統一したことは、まさにここにねらいがありました。また、日野 氏は、「情報科学コースの生徒は普段、キーボード入力を主として ICT を操作し、授業のノートをとっています。2 in 1 タブレットではタッチ操作やペン入力形式でもドキュメントを残せるようになりますが、これは彼らにとって新鮮な操作方法に映ることでしょう。こうした新たな ICT、新たな操作に慣れ、それを活用するという感覚をつかむことが、未知の要求や技術に出会ったとき、主体的に対応する力へとつながると考えました」と、ラップトップ型ではなく 2 in 1 タブレットへ機種統一した理由についても説明します。

  • 生徒は、使い慣れているキーボード入力だけでなく、ペン入力も活用しながら授業の内容をメモしている

さまざまなベンダーが 2 in 1 タブレットを提供していますが、仙台育英学園高等学校は 2017 年度の取り組みに際し、"決め打ち" に近い形で Surface Pro 4 を選択したといいます。

Surface Pro 4 は高感度なタッチ操作を実現しているほか、高い処理能力と 12.3 インチ ディスプレイによって、キーボード入力端末としても優れた作業性を有しています。日野 氏はこの点について、「Surface Pro 4 はノート PC 用途、タブレット用途の双方で完成度が高く、現在世に出ている 2 in 1 タブレットの中では唯一無二の最先端デバイスです」と評価。加えて、Surface シリーズが持つ「最先端」というイメージが、生徒の関心を喚起させることも期待できたと述べます。

「Surface シリーズは、製品デザインや先進的な機能、市場へ発信するメッセージから、イメージ的にも『最先端』であることが周知されています。これを生徒に貸与することは、『自分たちが最先端の端末を使える』という感動へとつながり、ひいてはその感動が『新しい技術を使いたい、試したい』という主体的な活用に結びつくと考えました。Surface Pro 4 の採用によって生徒の主体性、そして授業や学びのあり方を大きく変革できると確信し、採用を決定しました」(日野 氏)。

導入効果
OneDrive をはじめとするツールの導入により、生徒が授業外でも ICT を活用するように

日野 氏が期待した「最先端」というイメージは、生徒だけでなく教員にも好影響を与えています。事実、Surface Pro 4 の導入からまだ 1 年にも満たない中、既に新たな形の授業が教員と生徒によって実践されていると、日野 氏は説明します。

「生徒側でいえば、日々の授業内容を電子教材上に手書き入力でメモを行い順次それを OneDrive 上の自身のフォルダへノートとして格納する、という新たな受講スタイルが生まれています。Surface Pro 4 が備える先進性が、『新しいことを試そう』という学習意欲を喚起させているのでしょう。こうした生徒の姿が教員にも刺激を与えているようで、生徒の画面を共有してプロジェクターに映すなど、双方向にコミュニケーションを取りながら授業を進める教員も増えています」(日野 氏)。

  • 講義型での ICT 活用 (左) だけでなく、グループ学習といったインタラクティブな授業での ICT 活用 (右) が加わるなど、Surface Pro 4 の導入は仙台育英学園高等学校の教育のあり方を大きく変革している

生徒の主体性の向上、教育のあり方の変革という点において、Surface Pro 4 の導入は大きな成果につながっています。一方、ICT への依存度の高まりは、機器の安定性によって授業進行が左右されるという問題を引き起こします。しかし日野 氏はこの点についても、「Surface Pro 4 は機器の不具合が非常に少ないですね。機器自体が故障しにくい設計になっているのだと感じます。これも、従来機種と比較した際の大きな優位性ではないでしょうか」と高く評価。Surface Pro 4 が授業において、安定して機能していることを評価します。

Surface Pro 4 の導入と並行し、仙台育英学園高等学校では OneDrive の授業活用も本格的に開始しました。「たとえば文豪のレポートを作成するという国語の授業では、各グループでプロフィールや創作履歴を調べてもらい、その結果を OneDrive 上で共有し、グループで議論された内容をクラス全体で議論する、といった試みが行われています。授業で議論した内容は自宅からインターネット経由で閲覧することも可能なため、復習にも役立ちます」と日野 氏は説明。そしてこういったツールの拡充が、授業外でも Surface Pro 4 を活用するという生徒の動きにつながっていると付け加えます。

「放課後や休み時間に Surface Pro 4 を活用して学びを深める生徒の姿を多く見るようになりました。現在、Surface Pro 4 を利用できるエリアは校内に限っていますが、自宅学習用ツールとしても高い効果が期待できるため、セキュリティの整備を進めることで、場所を問わずに端末が利用できる環境を整備していきたいと考えています」(日野 氏)。

  • 授業外の時間に Surface Pro 4 で学びを深め合っているようす (左)。現在、Surface Pro 4 は校内の充電ステーション (右) で管理されており、授業ごとに生徒が端末を持ち運ぶ形で運用されている

今後の展望
情報科学コースの成果を視覚化することで、全校への横方向の展開を目指す

Surface Pro 4 の導入によって、「流行」である情報化への対応力を培いながら、「自治進取」という建学精神の深化も実現した仙台育英学園高等学校。2017 年現在、Surface Pro 4 の貸与対象は情報科学コースの生徒のみに留まっていますが、同校では現在、他学科コースも含む生徒への貸与についても検討が進められています。

情報科学コースの導入成果をモデル ケースとして、今後はこうした横方向への展開も考えていきたいと、日野 氏は意気込みを語ります。

「本校では、Surface Pro 4 の端末費を授業料に上乗せするような集金は行っていません。調達は毎年行うため、学校の情報関連予算に占めるデバイス費用は大きなものです。全生徒への展開を考えた場合、相応の成果を示す必要があるでしょう。情報科学コースは、生徒の主体性、そして授業のあり方が、明確に変化しました。学外での活用を許可することで、効果はより高まるでしょう。Surface Pro 4 は、本校全体の教育をさらに次の次元へ発展させていくためのコア ツールになるはずです。情報科学コースの成果を可視化し、それをモデル ケースとすることで、学園内の横展開を行っていければと考えています」(日野 氏)。

東日本大震災によって、仙台育英学園高等学校は大きな被害に見舞われました。しかし、同校の教育は、苦難を経てさらに視野を広げ、最先端の ICT 設備とともに大きく発展しました。そこで実践される教育は、これからも、新たな時代を切り開く若者をこれまで以上に輩出していくことでしょう。

「生徒側でいえば、日々の授業内容を電子教材上に手書き入力でメモを行い順次それを OneDrive 上の自身のフォルダへノートとして格納する、という新たな受講スタイルが生まれています。Surface Pro 4 が備える先進性が、『新しいことを試そう』という学習意欲を喚起させているのでしょう。こうした生徒の姿が教員にも刺激を与えているようで、生徒の画面を共有してプロジェクターに映すなど、双方向にコミュニケーションを取りながら授業を進める教員も増えています」

仙台育英学園高等学校
情報科学コース
教務部長
日野 彰 氏

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