関西電力系の電気通信事業者であるオプテージは、サイロ化が進み、運用管理の負荷が増大していたオンプレミスのシステム基盤を、「VMware Cloud Foundation」へ移行する取り組みを進めています。VMware Cloudと共通化されたアーキテクチャを持つプライベートクラウド上で、運用管理の自動化を進めることにより、これまで手作業による仮想化基盤のアップデートに費やしていた期間や人的リソースを約50%削減できる見通しです。同社では、これによって捻出されるシステム基盤チームのリソースを、よりビジネス価値の創出につながる、新たな取り組みへ投入していく計画です。

ソリューション

サイロ化が進んだオンプレミスのシステム基盤の統合と標準化、および仮想化環境における「VMware vSphere」のバージョンアップ作業にかかる時間とリソースの削減を目的として「VMware Cloud Foundation」を導入。事前検証では、手動で「約1年半」を要していたバージョンアップ作業を、VMware Cloud Foundation の制御プレーンであるSDDC Managerによる自動化で半年程度に短縮できることを確認。EOLを迎える基盤から順次移行を進め、約5年で全システムの約7割に相当するシステムをVMware Cloud Foundation上に移行する予定。バージョンアップ作業にかかる期間と人的リソースを約50%削減できる見通し。

導入前の課題

  • 長年の運用でサイロ化が進んだオンプレミスのシステム基盤の運用管理負荷が増大
  • 基盤のバージョンアップは手作業で実施しており完了に1年半かかるケースも
  • 基盤チームのリソースがほぼ運用管理に費やされ若手の新たな取り組みが後手に

導入効果

  • VMware Cloud Foundationへの移行でシステム基盤の統合、より効率的なリソース管理が可能に
  • SDDC Managerの自動化機能によりバージョンアップに掛かる期間と人的リソースを約50%削減できる見通し
  • 自動化により運用工数を削減して生み出した若手のリソースでビジネス貢献を加速

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システム基盤のサイロ化で運用負荷が増大。仮想化基盤のバージョンアップ自動化が急務に

社会生活やビジネス全般において、情報通信が必要不可欠なインフラとなるなかで、そのインフラを提供する事業者への社会的な期待も増しています。オプテージでは、顧客起点に立脚したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現や支援に向けて、AI、IoT、マルチクラウドといった先端技術や、これらの技術を活用した新たなソリューションの提案などを通じて、その期待に応えていこうとしています。

「今や情報通信のインフラとシステムは、事業を通じた価値提供と切り離せないものになっています。われわれは、オプテージが展開するビジネスに必要なネットワークを含むシステム基盤の企画、構築、運用管理を行っています」

  • 株式会社オプテージ 技術本部 プラットフォーム技術部門 プラットフォーム技術部 システム基盤チーム サブマネージャー 山本 雅昭 氏

    株式会社オプテージ
    技術本部 プラットフォーム技術部門
    プラットフォーム技術部 システム基盤チーム
    サブマネージャー
    山本 雅昭 氏

そう話すのは、オプテージの技術本部 プラットフォーム技術部門 プラットフォーム技術部でシステム基盤チームのサブマネージャーを務める山本雅昭氏です。同社では、今後ますますクラウドも含めたシステム基盤に対するビジネスニーズが高まることが見込まれるためシステム基盤の運用管理に、改善の必要性を感じていたといいます。

システム基盤チームでは、社内で新たなサービス、ビジネスが企画された際、その要件に合ったITインフラとシステムリソースを提供し、運用管理する役割を担っています。ビジネスの成長と長年の運用のなかで、システム基盤のサイロ化が進行していました。

システム基盤チームの池田喜則氏は「仮想化基盤を活用したプライベートクラウド化は行っていましたが、各ビジネスの独自要件に合わせた環境をよりスピーディーに提供しようとすると、ある程度標準化を犠牲にして独立性を高めたほうが良いケースもあります。そのことが結果的に基盤のサイロ化を進め、運用管理の負荷を増大させていました」と話します。

  • 株式会社オプテージ 技術本部 プラットフォーム技術部門 プラットフォーム技術部 システム基盤チーム 池田 喜則 氏

    株式会社オプテージ
    技術本部 プラットフォーム技術部門
    プラットフォーム技術部 システム基盤チーム
    池田 喜則 氏

特に大きな問題となっていたのが、サイロ化した環境へのパッチ適用やバージョンアップにかかる時間と手間の増大でした。

「われわれは細かいものも含めて11のシステム基盤を運用しています。各基盤をバージョンアップしようとする際、大きなものでは計画から完了までに1年半以上の期間と手作業による膨大な工数が掛かっていました。結果的に、運用管理で若手のリソースが手一杯となり、新規のビジネスニーズへ機敏に対応したり、基盤チームが新技術の知見をもとに新たな提案を行ったりといったことができない状況になっていました。状況を改善するために、サイロ化した基盤の統合と、自動化に基づいた運用管理の効率化について、検討が必要だと考えていました」(山本氏)

「VMware Cloud Foundation」で運用を自動化。バージョンアップ作業にかかる期間を50%短縮

オプテージでは前出の課題解決を念頭に、複数の運用自動化ソリューションについて比較検討を行い、最終的に「VMware Cloud Foundation」の導入を決定しました。VMware Cloud Foundationは、VMwareが提供するクラウドサービス「VMware Cloud」で採用されているアーキテクチャや技術要素に基づいた仮想化基盤のフレームワークです。導入することで企業は、VMware Cloudの柔軟性、管理効率の高さを備えたプライベートクラウドをオンプレミスのデータセンター上に展開できるようになります。

同社では、10年以上にわたって自社で「VMware vSphere」を導入し、活用を続けてきました。運用管理の効率化にあたり「仮想化基盤運用の自動化」が最も大きなメリットになると判断したことが、採用の決め手になったといいます。VMware Cloud Foundationの制御プレーンである「SDDC Manager」では、パッチ適用を含むバージョンアップ作業の高度な自動化が可能です。

具体的なソリューションの検討は、2020年の春にスタートし、2021年の夏にRFPを提出。同年秋には、VMware Cloud FoundationのPOC(適用検証)が行われました。検証において、自動化の効果は期待以上のものだったと言います。

「検証では、これまで全体で1年半掛かっていた基盤環境のバージョンアップが、VMware Cloud FoundationのSDDC Managerによる自動化で半年程度に短縮できることが分かりました。作業の結果にも問題はないと判断し、本格的な導入へ向けた準備を進めました」(山本氏)

導入へ向けた具体的な設計と構築作業は2022年3月に開始され、2023年1月に環境構築は完了しています。既存の仮想化基盤上に存在するシステム、仮想マシンについては、稼働しているハードウェアがEOLを迎えるタイミングで、順次VMware Cloud Foundationへの移行を進める予定です。

「全部で11ある基盤のうち、主に社内向けに提供している3つの主要な基盤で稼働しているシステムについては、約5年でVMware Cloud Foundationへの移行が完了する見込みです。この3基盤で、システム全体の6~7割をフォローする形になります」(池田氏)

山本氏は、この計画が完了することで「現在、運用管理にかかっている期間を約半分まで削減できると見込んでいる」と話します。

「運用作業を自動化することで、かかる期間や若手のリソースを、おおよそ半分まで削減する計画です。また、手作業では避けられないオペレーションミスなども排除できるため、手戻りによる時間のロスも最小化できると期待しています。これが実現することで、これまで若手が運用に忙殺され対応が後手に回りがちだった、新しいサービスへの取り組みや社内のニーズをくみ取った新しい提案といった、われわれの部署が果たすべき本来のミッションに若手リソースをシフトしていくことが可能になると考えています」(山本氏)

既存環境から新環境への移行をスムーズに進め、クラウド連携を視野に入れたメリットの最大化に挑む

オプテージでは、社内向けシステム基盤のVMware Cloud Foundationへの移行を進めながら、将来的なサイロ化を避けるためのシステム基盤の標準化や、既に採用済みの「VMware Cloud on AWS」と組み合わせた、効果的なユースケースなどについても検討を行っていきたいとしています。

「既存のオンプレミス環境と、新しいVMware Cloud Foundation、そしてクラウドであるVMware Cloud on AWSといったアセットをどう連携させ、どのような形で使っていけば最も大きなメリットを引き出せるのかについては、今後、実践を通じて検討していく必要があると考えています」(山本氏)

自社で大規模なデータセンターを所有する電気通信事業者であるという背景もあり、山本氏は「必ずしもすべてのシステムをパブリッククラウドに置くことが、オプテージにとってメリットになるとは限らない」といいます。例えば、「特にスピードが求められる新規事業のためのシステムを、まずはパブリッククラウド上でスモールスタートしておき、ビジネスがスケールしてきたら、自社で運用するVMware Cloud Foundation上に移動することで、ランニングコストを含めたトータルのメリットは高くなるケースもあり得る」と考えています。

「そのほかにも、ディザスタリカバリ対策やバックアップ用途といった、できるだけコストを抑えて構築したいシステムや、AIやIoT向けのデータ基盤など、自社で提供しようとすると機能面や性能面で膨大な投資が必要になるものを迅速に用意したいといった場合にVMware Cloud on AWSのようなクラウド環境を利用し、必要に応じてVMware Cloud Foundation環境との連携や最終的な引き揚げを行うといった使い方も効果的かもしれません。2つのソリューションはアーキテクチャが共通なので、その場合の運用も効率良くできるのではないかと期待しています」(池田氏)

既存システム基盤のさらなる統合や標準化、そしてマルチクラウドを視野に入れた連携や運用の高度化などから得られるメリットを最大化し続けるためには、進化が続く技術やコンセプトへのキャッチアップが必要です。しかし同社では、運用管理の自動化を通じて生み出される若手リソースを足がかりに、積極的なチャレンジを続けたい意向だといいます。

「VMware Cloud Foundationの導入は、オプテージ全体のシステム基盤とわれわれ基盤チームの将来的な価値向上に向けた第一歩だと捉えています。新たな技術を取り入れながら、既存の環境を移行していく上での不安もある一方、新しい試みでもあり、そこから生まれる価値に一層大きな期待をしています。実践で得た知見を積極的にフィードバックしていきますので、ヴイエムウェアにもチャレンジの成功に向けた一層のサポートを期待したいと思います」(山本氏)

  • 集合写真

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●業界
TELECOMMUNICATION

●カスタマープロフィール
1988年に関西電力の完全出資子会社として設立した関西通信設備サービス株式会社が母体。独自の光ファイバーネットワークを用いて、個人向けには「eo 光」、法人向けには「オフィスeo 光」を提供するほか、MVNOサービスの「mineo」やエネルギーサービスの「eo電気」などにも注力している。2019年4月に旧関電システムソリューションズが保有していた情報通信インフラ、情報システム開発事業、ならびに関西電力が保有していた社内LANなどの通信サービス提供事業と統合し、社名をケイ・オプティコムからオプテージに変更。

●ユーザーコメント
「VMware Cloud Foundationの導入は、オプテージのシステム基盤の価値向上に向けた第一歩だと捉えています。新たな技術を取り入れながら、既存の環境を新しいものへと移行していくうえでの不安もある一方、ほかではまだ取り組んでいない新しい試みでもあり、そこから生まれる価値に大きな期待をしています」
――株式会社オプテージ 技術本部 プラットフォーム技術部門 プラットフォーム技術部
  システム基盤チーム サブマネージャー 山本 雅昭 氏

●導入製品・サービス
・VMware Cloud Foundation

[PR]提供:ヴイエムウェア