“ポストコロナ”の時代にあって、世界的なIT需要の高まりは留まるところを知らない。そうしたなかNTTデータでは、デジタル領域の需要拡大に対して、タイムリーに人材リソースを提供するグローバルデリバリー戦略を推進している。その取り組みの概要と今後の展望、そしてグローバルにおける日本人エンジニアの立ち位置について、グローバルデリバリー推進室長を務める佐藤 敦氏に話を聞いた。
「Global Top5」に向けてグローバルデリバリー体制を強化
──なぜNTTデータではグローバルデリバリー戦略を推し進めているのでしょうか。その背景と実践内容そして目指すところなどお聞かせください。
佐藤氏:まず、当社がグローバルデリバリー戦略のもと実践している内容について、簡単にまとめると、「GlobalTop5に向けた人材確保」、「ビジネスのさらなる拡大と生産性向上」、そして「各リージョン間でのデリバリー連携」という3つが柱になります。
NTTデータでは、全社的なビジョンとしてITの力で世界の変革に貢献することを掲げ、2025年にGlobal Top5に入るITサービス企業を目指して、市場と人材の拡大に注力しています。具体的には、2022年10月のNTT DATA Inc.の発足や、2023年7月に予定している3社体制により「真のグローバル企業」として、マーケットシェアの拡大と、グローバルシナジーを加速化していきます。
昨今ではSaaS、PaaS、IaaSといったクラウドサービスが世界中で活用されるようになり、技術のベースとなりました。ITサービスを活用するにあたっては、地域の垣根などもはや存在しないと言っても過言ではありません。そうしたなかで、海外の競合に対して当社の強みを発揮するには、グローバルでの経験やノウハウを生かした教訓的なものを取り入れて最適化する必要があると考えました。そこで、ある程度共通したアセットやリソースをあらかじめ用意しておくとともに、コアな部分については専門部隊がデリバリーするというアプローチを、これまで実践してきております。
──具体的にはどのような施策を行ってきているのでしょうか。
佐藤氏:グローバル全体でのデジタル人材の需要に対して、25カ国70地域で4万人以上のオフショアもしくはニアショア人材を準備しています。それと合わせて、テクノロジー別、インダストリー別に人材のスキルセットのカテゴリーを分類し、需要に応じたリソースの提供を目指しています。
現在、デジタル人材不足は世界的に深刻化する一方にあります。そこでまずはインドに国外拠点を設けて、人材をプールするデリバリーセンターを設立しました。ご存知のようにインドには優秀なIT人材が数多く存在しています。インドの他にもルーマニア、イタリアにデジタルデリバリーセンターを設けており、グローバル3拠点でデジタルケイパビリティの拡充を進めています。オフショア利用の敷居が下がっているなかで、すでにグローバルな人的リソースを揃えているため、国や地域を問わず迅速なデリバリーが行えるというわけです。
また、続々と新しいテクノロジーが誕生し、その移り変わりが激しいなかにあって、需要に応えられるテクノロジーのアセットを用意しておくことはとても重要です。そこで、現状のマーケットニーズの延長線上にあるテクノロジーを読み解き、それに関わるエンジニアを先んじて育成し、調達できるようにすることに注力しています。そもそも我々の技術革新統括本部というのは、世の中のテクノロジーの推移を先読みして、当社の強みに昇華した上で、マーケットへ投入するリソースを用意する “目利き力”にフォーカスした部隊であるとも言えるでしょう。
そうした技術の目利きには、「EGM」というフレームを用いています。EはEmergency、GがGrowth、MはMainstreamを意味しており、最初の“E”の段階で100ほどの技術があったとして、“G”のステップでは、そのなかから主だったテクノロジーを試して10ほどにまで絞り込み、さらに“M”の段階で絞り込んだ2、3のテクノロジーに集中的にリソースを注いでいくようにしています。
アサインメントを重視し活躍の場を提供
──海外拠点で働くスタッフのキャリアアップのためにどういったサポートを行っているのでしょうか。
佐藤氏:海外拠点に対しては、基本的に定期的なトレーニングの実施と各種認定試験の援助を行っています。
現在、IT人材のマーケットは盛況で人件費も高騰しています。たとえば、私が担当するインドのプネ拠点(GDS Pune)に良い人材がいたとしても、他の企業から倍の給与で引き抜かれてしまうこともめずらしくありません。
そこで、もともと彼らがNTTデータの一員となることを選んだ理由まで立ち返って考えることが重要です。たとえば、当社には、最新のテクノロジーに関する経験を積めるという期待を持って入社したスタッフが多くいます。そうした本人の望みを叶え、実力を発揮できるようなプロジェクトに極力携わってもらうようなアサインメントを重視しているのです。また、海外での現場を経験したいと考えているスタッフに対しては、ヨーロッパなどに一定期間出向してもらい、経験を積んでから戻ってくる、といったルートも用意しております。
NTTデータでは、長期的な視点で人を育てることをモットーとしています。たとえ他社へと移っていったとしても、当社で培ったマインドを失わず社会に貢献してくれるならば、当社としても役割を果たしたとも言えます。実際に一度他社を経験してから、再び当社に戻って活躍する人材も多いですね。
──グローバルでの人材間のコミュニケーションはどのように行われているのでしょうか。
佐藤氏:グローバルのネットワークでは、さまざまなテクノロジーにフォーカスした活動を行っておりますが、このうちクラウド人材間のコミュニケーションの場として「Global CAC(Global Cloud Architect Community)※」を運用しています。Global CACには、グローバルでもトップレベルのクラウドエンジニアが40人も参画しており、クラウド領域全体のレベル向上に尽力してくれています。そこでは、クラウドに関する最新の動向やテクノロジーなどについて日々活発な意見交換が交わされています。
トップ人材だけではなくNTT DATAのグループ間でのコミュニケーションにも力を入れています。今年度開催したイベント「AWS GameDay JAM」ではクラウドのトラブルシューティングゲームを行いました。NTT DATAの各国のグループ会社から参加があり、自国外混合チーム一丸となって同じ問題に挑み、志を同じくするNTT DATAのエンジニアとの協力、交流を深めるきっかけになりました。本イベントは次年度以降も継続して開催していきたいと考えています。
いまグローバルで日本人エンジニアに注目度が高まっている……!?
──最後に、グローバルでの活躍を視野に入れている日本のエンジニアに向けたメッセージをお願いします。
佐藤氏:日本のエンジニアの方々にとくに伝えたいこととしては大きく2つあります。
まず1つは、日本人エンジニアは海外からとても需要があるという事実です。たしかにコミュニケーションの面では英語ネイティブなインドのエンジニアには太刀打ちできませんが、信頼性の高いシステムづくりとなると、日本人はサービスレベルがとても高いことから、注目度が高まります。
さらに、未曾有の円安の影響もあって、日本人エンジニアのコストは相対的に競争力が高くなっています。日本人の信頼性や質の高さに、コストパフォーマンスも加わってくるわけですから、まさにいまがチャンスといえるでしょう。
実際にNTTデータには、海外に出向して活躍している日本人エンジニアが多くいます。長年培った出向プログラムが充実しており、各種制度が手厚く、海外でビジネスに集中できる環境を整えているのも当社の魅力です。また、日本にいながらも海外のエンジニアや技術と触れ合える機会を多く設けています。このようにNTTデータでは、世界で通用するエンジニアになるための近道を用意していますので、ぜひ一緒に「Global Top5」に向けて挑戦しましょう。
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