福井コンピュータグループの事業会社として、主に建築業界向けのシステム開発・販売を行っている福井コンピュータアーキテクト。住宅事業・建材事業・BIM事業の 3 つの事業部で構成され、3D建築CADシステム「ARCHITREND ZERO」を中心に、全国の住宅会社、工務店、設計事務所向けに多様な建築ソリューションを展開しています。今回、同社がクラウド上で提供している「3Dカタログ.com」や「TREND Net」などのサービスで、ユーザー数増加によるサーバーリソース不足が顕在化し、より柔軟にリソースやスケールを変更できるクラウドサービスへの移行を検討。「Microsoft Azure」が採用され、Azureへのクラウド移行を支援するプログラム「FastTrack for Azure」のサポートを受けながら移行プロジェクトが始動しました。

サービスのクラウド基盤を Azure に移行し、リソース不足に対応

福井コンピュータアーキテクトが提供する 3D建築 CAD システム「ARCHITREND ZERO」は、全国で約 42,000 の工務店、設計事務所、住宅会社などに採用され、中小企業を中心とした住宅業界を支える企業の設計プロセスで活用されています。この ARCHITREND ZERO と連携したサービスとして開発された「3Dカタログ.com」は、同社の建材事業部が手がける 3D 複合型 WEB ショールームとして 2016 年にサービスを開始しました。3Dカタログ.com では、実際に流通している建材設備やシステムキッチンやユニットバスなど、各メーカーの商品をすべて 3D データ化。Web ブラウザでカタログ上から組み合わせるかのように、設計段階の CAD データに配置することができます。現在では 62,000 以上のユーザーが利用している同サービスでは、ユーザー数の増加に伴い、サーバーリソースの不足が顕在化。同様の問題を抱える同社のサービスを含めて、基盤となるクラウドサービスの移行が検討されます。今回のプロジェクトに責任者として携わっている、福井コンピュータアーキテクト 建材事業部 建材商品開発室 室長の青木 孝行 氏は、移行を決めた経緯をこう語ります。

  • 福井コンピュータアーキテクト株式会社 建材事業部 建材商品開発室 室長 青木 孝行 氏

    福井コンピュータアーキテクト株式会社 建材事業部 建材商品開発室 室長 青木 孝行 氏

3Dカタログ.com https://www.3cata.com/

  • 「3Dカタログ.com」の画面

    「3Dカタログ.com」の画面

  • 「3Dカタログ.com」では、各メーカーの商品がすべて 3D データ化されている

    「3Dカタログ.com」では、各メーカーの商品がすべて 3D データ化されている

「3Dカタログ.com をリリースしてから 5 年が経過し、登録会員数が 62,000 人を超えたことによってサーバーリソースが不足してきました。さらに、2021 年 9 月には当社のコアブランドである ARCHITREND ZERO のバージョンアップが予定されており、それに合わせて 3Dカタログ.com にもデータ共有サービスとして新しい機能を追加することになったため、ストレージ容量も確保する必要が出てきました。ただ、これまで利用してきたクラウドサービスでは、迅速かつ柔軟なリソースやスケールの変更が難しかったこともあり、他のクラウドサービスへの移行を検討することになりました」(青木 氏)。

複数のクラウドサービスを比較検討した結果、福井コンピュータアーキテクトが選択したのは「Microsoft Azure(以下、Azure)」でした。実は 3Dカタログ.com では、2016 年のサービス開始時にも、Azure を基盤となるクラウドサービスの候補にしていたといいます。その際はコストや実績、サポート体制などの面で要件を満たせず採用が見送られましたが、今回の検討時にはこうした課題はすべてクリアされており、スムーズに Azure の採用が決まったと青木 氏は振り返ります。

「サーバーリソースの拡充とストレージ容量の確保をスピーディかつ柔軟に行えることが採用の決め手です。Azure Portal の画面から操作してリソースやスケールを変更できるのは、大きな魅力でした。また、すでに弊社の他のサービスで Azure を採用しており、マイクロソフトの担当者と面識があることで安心感があったことも採用を決めた要因の 1 つとなります」(青木 氏)。

FastTrack for Azure の支援でスムーズに移行、運用・コスト面で大きなメリットを得る

2020 年からクラウドサービス移行の検討を開始し、2021 年 4 月に Azure を選定した福井コンピュータアーキテクトは、Azure へのクラウド移行を支援するマイクロソフトのプログラムである「FastTrack for Azure」を採用し、移行作業に着手します。青木 氏は「Azure への移行を経験しているメンバーがいなかったこともあり、きめ細かなサポートが受けられる FastTrack for Azureを活用させていただきました」と、同プログラムを利用した経緯を語ります。

本格的な移行作業は 2021 年 6 月から行われ、3Dカタログ.com と TREND Net(建築業界向けの顧客管理&データ保管・共有サービス)については、同年 7 月の移行完了を目指して作業が進められました。青木 氏は、FastTrack for Azure の支援により移行作業をスムーズに進められたことを喜びます。

「7 月の移行完了に向けて毎週 Teams のオンライン会議を実施し、移行に関する課題を共有して、解決のための支援をいただきました。具体的な課題としては WAF(Web Application Firewall)のポリシー設定や、システム構成などがありましたが、それについて相談し、弊社の環境に即した提案をいただけました。また、実際に移行する際のファイル転送においてもいくつかの課題があり、この工程でもいろいろと相談させてもらっています。Teams のオンライン会議だけでなくチャネルも用意してもらい、直接やり取りしながらスムーズにプロジェクトを進めていけたので助かりました」(青木 氏)。

こうした FastTrack for Azure による支援もあり、3Dカタログ.com は予定より早く移行を完了。TREND Net はデータ移行で若干の遅れが出ましたが、それでも想定内のスケジュールで移行作業を終えています。7 月からは Azure 上でサービスを運用していますが、大きなトラブルは発生していません。住宅事業部と建材事業部におけるサービス開発のマネジメントを務める福井コンピュータアーキテクト 執行役員 住宅事業部 事業部長 兼 建材事業部 事業部長の野坂 寅輝 氏は、Azure への移行により得られたメリットについてこう話します。

  • 福井コンピュータアーキテクト株式会社 執行役員 事業本部 部長 兼 住宅事業部 事業部長 兼 建材事業部 事業部長 野坂 寅輝 氏

    福井コンピュータアーキテクト株式会社 執行役員 住宅事業部 事業部長 兼 建材事業部 事業部長 野坂 寅輝 氏

「従来のシステムではサービスのパフォーマンスをリアルタイムに上げる手段がなく、利用者数が増加した昨今では不安を抱えた運用となっていました。でも、基盤となるクラウドサービスを Azure に移行したことで、リアルタイムの状況をモニタリングして、状況に合わせた対応を迅速に行えるようになりました。常にモニタリングできているので、何かトラブルが起こったとしてもサービスに何が起こったのかをある程度把握できます。運用状況の可視化が容易に行えるのは大きなメリットといえます」(野坂 氏)。

3Dカタログ.com の運営やコンテンツの整備など、開発全般を担当している福井コンピュータアーキテクト 建材事業部 事業部長補佐 コンテンツ室 室長の五十嵐 賢吾 氏は、新たなサービスを提供するうえで、Azure の課金モデルがコスト的なメリットをもたらしていると解説します。

  • 福井コンピュータアーキテクト株式会社 建材事業部 事業部長補佐 コンテンツ室 室長 五十嵐 賢吾 氏

    福井コンピュータアーキテクト株式会社 建材事業部 事業部長補佐 コンテンツ室 室長 五十嵐 賢吾 氏

「2021 年 9 月にお客様が業務で使うデータをお預かりする『データ共有サービス』を 3Dカタログ.com に追加したことで、今後は膨大なデータがクラウドのストレージに保存されるようになると予想されます。ストレージ容量に対して課金が発生する従来のクラウドサービスでは、データ量の増加がそのままコストに跳ね返ってきます。それに対して通信量に対して課金するモデルを採用している Azure ならば、データを利用しない限り課金されることはなく、大容量のデータを適切なコストで保存しておくことができます。現在でもコスト面のメリットが出ていますが、今後サービスの運用を続けていくことで、より大きなメリットが生まれてくると考えています」(五十嵐 氏)。

福井コンピュータアーキテクトでは、本プロジェクトで得た実績を踏まえ、3Dカタログ.com で利用している SQL Server を「Azure SQL Managed Instance」(PaaS)に移行することを決定。さらに Web サーバーなど他のリソースについても、Azure の PaaS に移行していくことを検討しているといいます。

  • システム概要図

    システム概要図

Azure を活用したサービスの提供を続けて、住宅業界の発展に寄与していく

中小企業を中心とした住宅業界を支える企業に向けたビジネスを展開している福井コンピュータアーキテクトでは、今後も建設業界全体を支援するためのサービスを提供していきます。野坂 氏は、建設業界におけるデジタル化の課題と重要性、そのなかで同社のサービスや Azure が担っていく役割についてこう語ります。

「業種を問わず日本全体で人手不足やスキル・技術の継承、働き方改革の推進といった課題が顕在化してきており、建設業界においても道路や橋梁、トンネルといった建設工事のデジタル化が国交省主導で推進されるなど、ダイナミックなデジタル化の動きが加速しています。その反面、住宅や建築といった分野に目を向けると、個人や民間がクライアント・出資者になるため、中小規模の住宅会社や工務店、設計事務所においてどこまでデジタル化を進めるかは難しい問題です。このため現在もアナログ的なプロセスが主体で、なかなかデジタル化が進んでいないのが現状といえます。とはいえ、今後デジタルネイティブな世代が社会の中心になってくることを考えると、これまでアナログで成り立っていた業界も、デジタル化を推進していかないと顧客のニーズに対応できません。福井コンピュータグループでは、こうした状況に対応したサービスを提供することで、業界の発展に寄与していきたいと考えています。そのなかで大きな役割を担うのが Azure だと思っており、今後もマイクロソフトの密接なサポートを期待しています」(野坂 氏)。

住宅業界に関わるすべての企業に、デジタル化による業務変革を実現するためのサービスを提供する福井コンピュータアーキテクトが展開する今後の取り組みと、サービスを支える基盤として Azure が果たす役割には、今後も注視していく必要があるでしょう。

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