店舗と EC サイトで家具やインテリア雑貨などを販売する株式会社 Francfranc。同社は既存顧客により満足してもらえる施策を行って LTV(顧客生涯価値)を高める取り組みを進めています。IT 戦略の一環として情報システムの半内製化を目指していましたが、データ分析を行うデータサイエンティスト人材が社内にいないのがひとつの課題でした。

そこで日本マイクロソフトの特別支援サービス「Data Hack」を活用し、データ集約やデータ整理、データ加工、クラスタリングといった一連のデータ分析を推進。IT 部門のスタッフにデータ分析の知識はなかったものの、すべての作業が GUI で行えたこともあり、ミッションを完遂できたといいます。Data Hack を利用してデータ分析を半内製化させた Francfranc は、LTV を高める施策を打つ準備を整えただけでなく、IT 部門スタッフのスキルアップも実現したのです。

データに基づいた施策を打つために必要な人材がいない

インテリアや雑貨の販売やコーディネートなど幅広い事業を手掛ける Francfranc。国内では 127 店舗、海外に 7 店舗を展開しています。EC サイト「Francfranc オンラインショップ」での販売も手掛けており、同サイトは公式スマートフォンアプリ「Francfranc Rewards」とも連動、会員数は 100 万人を超えています。

Francfranc はミッションとして「VALUE by DESIGN デザインによって毎日をより楽しく、より豊かに」を掲げ、同社の商品を単なるモノとしての価値だけではなく、顧客に楽しく幸福な時間や空間(=楽しい生活)を提供することを目指しています。今回は特に既存顧客により満足してもらうこと、それによって LTV(顧客生涯価値)を高めることに取り組みました。そのためには CRM に基づいた施策を打つ必要があり、データの分析が欠かせません。

「ロイヤリティと LTV が高いお客様は Francfranc の店舗と EC サイトの両方で購入されているという推測はありましたが、それを裏付けるデータが必要でした。」と株式会社 Francfranc 執行役員 CIO 事業支援本部 本部長 兼 情報システム部 部長の桑田 和紀 氏は話します。

  • 株式会社 Francfranc 執行役員 CIO 事業支援本部 本部長 兼 情報システム部 部長 桑田 和紀 氏

    株式会社 Francfranc 執行役員 CIO 事業支援本部 本部長 兼 情報システム部 部長 桑田 和紀 氏

  • 株式会社 Francfranc 情報システム部 店舗システム課 課長 兼 CRM課 課長 竹中 均 氏

    株式会社 Francfranc 情報システム部 店舗システム課 課長 兼 CRM課 課長 竹中 均 氏

  • 株式会社 Francfranc 情報システム部 CRM課 武本 圭史 氏

    株式会社 Francfranc 情報システム部 CRM課 武本 圭史 氏

Francfranc は 2014 年に中期 IT 戦略を立て、オンプレミスシステムのクラウド化、そしてマイクロソフトのプラットフォームに統一することを決定しました。その後、情報システムの半内製化の取り組みを進めていきますが、データ分析のためのデータサイエンティスト人員が社内に確保できていませんでした。同社 情報システム部 店舗システム課 課長 兼 CRM課 課長の竹中 均 氏は「そもそもデータ分析を行うために必要な購買データなどが複数のシステムに分散し、店舗と EC サイトで顧客 ID も分かれていました。それらのデータを収集することに時間が掛かるだけでなく、収集できたとしてもデータサイエンティストがいないため、スピーディで正確なデータ分析を行える状況になかったのです。」と説明します。

リソースが足りないならばデジタルのパワーでカバーするしかない――。そこで AI(人工知能)などを使って課題の解決に挑むことを決めたといいます。

前述の通り、既にマイクロソフトのプラットフォームを導入していたため、日本マイクロソフトの担当者にデータ分析の進め方について相談したところ、同社が無償で行う特別支援サービス「Data Hack」の利用を勧められました。

Data Hack は日本マイクロソフトが顧客企業の業務課題に合わせて分析テーマを定義し、顧客企業のデータを使って加工や可視化、モデル作成などを支援するサービスです。日本マイクロソフトのスタッフがデータ分析を代行するのではなく顧客企業と一緒に作業を進めるというもので、必要なデータの準備とデータ加工は顧客企業が行います。Data Hack でデータ分析作業ワンサイクルの支援を受けた企業はその後、自分たちの力でデータ分析を行えるようになるというわけです。

そのため、Data Hack を利用する企業にはデータ分析の明確なゴールとやる気が必要とされます。Francfranc は LTV を上げるというゴールが決まっていたことに加え、情報システムの半内製化に取り組んでいたのでモチベーションが高く、Data Hack を利用するのにふさわしい企業でした。

  • 日本マイクロソフトのユーザー企業サポート支援「Data Hack」とは

    日本マイクロソフトのユーザー企業サポート支援「Data Hack」とは

データ分析の目的を明確にすることとデータ整理が重要

Data Hack は 2020 年 2 月 1 日から同年 8 月 28 日にかけ、実施する内容ごとに Day 1 から Day 9 までの 9 回に分けて行われました。

Day 1 と Day 2 ではヒアリングとディスカッションを行って環境やデータを準備し、Day 3 以降は日本マイクロソフトのレクチャーを受けたあとにデータ加工などを行いました。通常ならばヒアリングとディスカッション、レクチャーは対面で行うのですが、Data Hack の期間中に新型コロナウイルスの感染が広がったため、オンラインで実施することもありました。ただし Francfranc は Microsoft Teams を使い慣れていたこともあり、オンラインでも問題なく進めることができたそうです。

Day 1 では日本マイクロソフトと話し合った結果、データ分析の目的や定義として CRM 分析を行うことに決定。購買頻度などによって顧客を複数のステージに分け、顧客ステージがどう成長していくのかを分析し、LTV を最大化する施策につなげていきます。「データ分析を行うのはお客様が Francfranc から得られる価値を高めるためでもあります。」と桑田氏は説明します。

Day 2 ではデータ情報整理と準備、Day 3 ではデータ整理と準備状況の共有を行いました。データ整理と準備の作業には時間が掛かりましたが、それらを根気よく続けたことで、その作業がスムーズに進んだと言います。

「今回の Data Hack では最初のディスカッションとデータ整理のフェーズが最も重要だったと思います」(桑田 氏)。

Day 4 と Day 5 で行ったのはデータ加工です。ここではマイクロソフトのフルマネージドサーバーレスデータ統合サービス「Azure Data Factory」を利用しました。Azure Data Factory は SQL データベースやファイルシステムなどのさまざまなデータソースからデータを取得し、クレンジングしてデータストアに格納するといったデータの移動と変換を自動化してくれます。Data Hack では主に Azure Data Factory のマッピングデータフロー機能を利用しました。これはコードを記述することなく GUI でデータ変換ロジックを開発できるうえ、裏側では「Apache Spark」が動いているため、高い処理能力を備えており、今後 Francfranc が分析対象とするデータが増えてもそれに耐えられます。

Data Hack における作業の主担当となった同社 情報システム部 CRM課の武本 圭史 氏は「データ加工では Azure Data Factory を利用しましたが、それを使う前に Microsoft Excel などを使って考え方を整理することから始めましょうとレクチャーしてもらえたのは良かったですね。仕事の進め方の参考にもなりましたし、複雑なデータ加工フローであっても整合性を取りながら作成することが出来ました」と話します。

  • 武本 氏が実際に 1 週間程で作成した Data Flow ジョブ(Mapping Data Flow)

    武本 氏が実際に 1 週間程で作成した Data Flow ジョブ(Mapping Data Flow)

  • ビジュアル化した基礎集計データ(Power BI report )

    ビジュアル化した基礎集計データ(Power BI report )

95% の確率で 40 万人から上位顧客会員を当てるモデル作りに成功

Day 6 と Day 7 ではデータ加工の確認と基礎集計を行いました。このフェーズではマイクロソフトのセルフサービス BI(ビジネスインテリジェンス)プラットフォーム「Microsoft Power BI」も利用しました。データをビジュアル化することによってより深いインサイト(洞察)を導き出せるツールで、これも GUI で操作することができます。

モデルの作成など本格的なデータ分析に入る前に、モデル作成時の考慮点や有益な説明変数をあぶり出すための基礎集計も行いました。その結果、上位ステージの顧客ほどある特定のカテゴリを購入する傾向にあったり、買い回りが進んでいるなどわかったほか、基礎集計によって新たな気づきも生まれたと言います。

  • 機械学習モデルを自動で生成する「Automated Machine Learning」

    機械学習モデルを自動で生成する「Automated Machine Learning」

  • ドラッグ&ドロップ中心の操作で機械学習モデルの開発を行える「デザイナー」機能

    ドラッグ&ドロップ中心の操作で機械学習モデルの開発を行える「デザイナー」機能

Day 8 では基礎集計とクラスタリングモデル用のデータ準備、Day 9 ではクラスタリングと可視化を行いました。まず、予測モデルから寄与度の高い説明変数をあぶり出します。40 万人の会員の中から上位顧客会員を予測するモデルを作成してどの説明変数が効いているのかを確認し、上位顧客の購買特徴を見つけ出すのです。

ここではマイクロソフトの機械学習サービス「Azure Machine Learning」を利用しました。Azure Machine Learning には、Python などのコードを記述できない人でも GUI で機械学習モデルを作成できる機能が装備されています。実際、Azure Machine Learning の Automated Machine Learning(自動機械学習)機能によって、コードを記述せずとも 95% の確率で 40 万人から上位顧客会員を当てるモデルを作ることができました。

Francfranc のスタッフはデータ分析の目的を達成させることに集中していたため、Automated Machine Learning の詳しい説明を受けていませんでした。それでもモデルの作成に成功したことは、Automated Machine Learning が簡単に使えることの証と言えます。Data Hack の最後には、購入金額や購入回数のような明らかに影響力が強いと考えられる数値はあえて使わず、買い物の仕方から顧客行動を見つけ出すためのクラスタリングモデルの作成に挑戦しました。

クラスタリングは教師なし学習といわれるもので、「この説明変数でこの集団をいくつかに分けてほしい」とオーダーすると、AI がその結果を出してくれる仕組みです。Francfranc はここでも GUI 操作でモジュールを繋ぎ合わせてモデル構築できる Azure Machine Learning のデザイナーを使ってクラスタリングモデルを作成します。Data Hack の目的であった購買頻度などによって顧客を複数のステージに分け、顧客ステージがどう成長していくのかを分析することに成功しました。

「推測していたことの裏付けができました。CRM 分析を行う前はその推測が正しいとは言い切れなかったのですが、分析によって間違いないことが証明されたのです。Data Hack を利用して行ったすべてのことに意味がありました」(桑田 氏)。

一方で思わぬインサイトもありました。LTV が最も高いクラスタが、想定していたクラスタとは違ったのです。「もう一度確認する必要はありますが、新たな気づきを得られました。」と桑田 氏は話します。また、CRM 分析を IT 部門が主導する意味もあったと言います。

「一般的に CRM はマーケティング部門が行うというイメージがありますが、この段階における CRM 分析に関しては デジタルテクノロジーの素養がある私たちが行った方が効率と説明の面でベターでした。」(桑田 氏)。

Data Hack を通して得た知識とノウハウは別のテーマにも応用できるため、Francfranc が今後、データをうまく活用していくことが期待されます。

NoCode で使えるツールが揃って知識なしでもデータ分析が可能に

Data Hack を利用した効果として「一番良かったのはちゃんとゴールにたどり着けたことです。」と桑田 氏は謙遜します。

「DX(デジタルトランスフォーメーション)に必要な AI やクラウドサービスが 私たちFrancfranc のような事業会社のために民主化されてきたと感じています。大企業だけが得られる武器が我々にも手に入り、これからが益々面白いことになりそうです」(桑田 氏)。

店舗から CRM 課へ異動してきてからの日が浅かったため、Data Hack 以前はデータ分析に関する知識がまったくなかったという武本 氏はこう話します。

「フェーズごとに行うべき作業が明確でした。最初はわからないことが多かったのですが、レクチャーを受ければ解決できることに気づいたのでどんどん進めていきました。Data Hack が私の仕事のレベルを上げてくれました。」(武本 氏)。

武本 氏の上司である竹中 氏は「武本さんの素質もありますが、Data Hack を通じて彼の知見が広がって、SQL Database を始めとしたデータベースでのデータマネジメントにも興味を持つようになり、CRM 課の大きな戦力になったことが最大の効果です。」と笑みを見せます。

桑田氏は「6 年前にマイクロソフトのプラットフォームを選択したことは間違いではなかった。」と断言しました。

「Francfranc の DX に必要なツールを提供してくれるのが日本マイクロソフトです。今回の Data Hack も含めて当社に高い価値を提供してくれるパートナーだと思っています」(桑田 氏)。

日本マイクロソフトが提供する学習サービス「Microsoft Learn」も役に立ちました。

「Data Hack で興味を持ったことを Microsoft Learn で調べたり、日本マイクロソフトの担当者から案内をいただいたセミナーでトレーニングに参加できたりしたこともスキルアップにつながりました。技術的なことだけではなく、データ分析の考え方や進め方も熱心に教えてくれました。」(武本 氏)。

NoCode(ノーコード)でデータ分析を行えるツールが揃ったことも Francfranc が CRM 分析に成功した要因の 1 つです。GUI で感覚的に操作できるツールが提供されたことでビジネスをよく知る人がデータ分析を行えるようになり、企業のデータ活用の底上げが進んでいるのです。

Data Hack で必要なのは「データ分析を行えるようになる」という強い気持ち

Francfranc のデータ分析に関する今後の展開について、「今回の CRM 分析で終わらせるのではなく、データ分析を繰り返して LTV を上げるための PDCA を回していく方針です。」と桑田 氏は説明します。

また、Francfranc は 2019 年 11 月にスマートフォンアプリをリニューアルしてから、およそ半年で EC サイトの会員数を 40 万人から 100 万人に増やしました。Data Hack は会員数が 40 万人のときに行いましたが、100 万人のデータを分析したら違うインサイトがあるのではないかと考えているそうです。

「100 万人のお客様に期待していただいているので、その期待に応えられるような施策を展開していくつもりです。」(桑田 氏)。

桑田 氏は Data Hack の利用を望む企業に対してこうアドバイスします。

「Data Hack は日本マイクロソフトがすべての作業を行ってくれるわけではありません。NoCode で使えるツールが揃っているのでプログラミングのリテラシーはいりませんが、データ分析の明確なゴールと自社でデータ分析を行えるようになりたいという強い気持ちは必要です。」(桑田 氏)。

Data Hack を通してデータ分析のノウハウを獲得した Francfranc は、今後も CRM に基づいた施策でさらに多くの人に「VALUE by DESIGN」を提供してくれることでしょう。

[PR]提供:日本マイクロソフト