2023年5月15日から26日にわたり、「TECH+ Business Conference 2023 〜ミライへ紡ぐ変革」が開催された。テクノロジーを活用したビジネス課題の解決を後押しする多彩なプログラムの中から、本記事ではAI/機械学習(ML)プラットフォームを展開するDataiku Japan株式会社のデータサイエンス インプリメンテーション マネージャー、簑田高志氏による講演「いまからでも遅くない。データとAIの活用に『本気』で取り組むには」の模様を紹介する。
AIがビジネスにおいて不可欠となる日
Dataikuは2013年にパリで創業した企業で、同名のAI/MLプラットフォームで世界的に知られる。同プラットフォームは現在、グローバルで500社を超える企業に採用され、分野も金融、製造、製薬、サービス、流通、消費財などと多岐にわたる。ちなみに名称の由来は「Data」と日本語の「Haiku」の組み合わせで、データ活用を俳句のようにシンプルにしたいとの思いが込められている。
Dataikuでは、企業とともに「Everyday AI」の世界を築くことをビジョンに掲げている。このEveryday AIとは何か。簑田氏が説明する。 「Everyday AIは、多くの企業でビジネスを支えるさまざまな立場の人々が、データを活用した働き方を実現するための未来像です。Everyday AIが実現されれば、あらゆる社員が日常において意識せずに高度なデータ活用ができる状態となり、AIが日々の業務に深く浸透して、ビジネスに欠かせない一部となります」
課題となるデータサイエンティスト不足問題の解決策
ビジネスでAIを活用するには、当然ながら分析等を担う人材が必要だ。その人材となるデータサイエンティストには従来、統計学、数学などの高度な知識が求められてきた。現在、データサイエンティストは100万人いるといわれるが、この数では十分ではなく、世界的に不足しているのが現状だ。データサイエンティストは採用が難しいことから高レベルの報酬を用意しなければならず、条件が良くなければ引き止められない。「自社でデータサイエンティストを抱えることは簡単ではありません」と簑田氏は語る。
そこで、近年注目されているのが“データ活用の民主化”であり、データ分析の専門家ではないマーケティング、営業、財務、バックオフィス部門などの担当者によるシチズンデータサイエンティストの活動が広がりを見せ始めている。簑田氏によると、シチズンデータサイエンティストが行う分析の量はすでにデータサイエンティストを上回っており、その人数もデータサイエンティストの50倍、5000万人規模で存在するという。
「さらにAIは現在、一般的なナレッジワーカーにまで活用が広がるフェーズに入っています。技術的な難しさがツールによって取り除かれてきたためです。データを使って仕事を行うナレッジワーカーの数は、シチズンデータサイエンティストのさらに20倍、10億人存在すると考えています。技術的障壁がなければ、あらゆる人がデータとAIを使って生産性を上げられる。当社が思い描くEveryday AIはこのような世界です」(簑田氏)
“PoC止まり”で終わらないための秘訣とは
ビジネスでAIを活用している企業はまだまだ多くはない。慶應義塾大学ビジネス・スクールの岩本隆特任教授が実施した「職場でのAI活用の状況」調査によると、日本でAIを職場で活用している企業は3割にすぎず、7割が使っていない。ただし、米国でさえ6割の企業がまだ活用していないとのことだ。加えて、グローバルで見ても6割以上の企業がPoC段階にとどまり、AI活用を本番稼働に移行できていない。
簑田氏はAIが活用できるエリアとして「自動化による生産性の向上」「意思決定の改善」「カスタマーエクスペリエンスの向上」「製品・サービスの革新」の4つを挙げたうえで、「調べる」「試す」「確立」「拡大」「日常に埋め込む」というステップを確実に実施し、Everyday AIに到達する必要があると指摘。この中でも、PoCで止まってしまう企業が極めて多い現状に鑑み、「試す」というフェーズで成功するために押さえておきたいポイントを提示した。
「試す」フェーズではパイロットプロジェクトを立ち上げて進めていくケースが多い。簑田氏は、パイロットプロジェクトのポイントとして「具体的なベネフィットをもたらすもの」「将来的な他のユースケースの参考になるもの」「実業務と関連しているもの」を挙げ、成功に向けた7つの“秘訣”を明かした。
業務適用を視野に入れたプロジェクト推進の仕組み
まず1つ目は「現実的で具体的なユースケースを選択する」である。「AIの場合、夢物語のようなユースケースが出てきがちです。そうではなく、現在の業務プロセスをどう改善できるか、その改善にAIやデータの手法が使えそうか、使用できるデータは存在するのか、さらには収益拡大、コスト削減、新規ビジネス創出などの具体的ベネフィットが得られるのか、といったことを吟味する必要があります」と語る。
2つ目は「プロジェクト期間を2〜3カ月に制限する」こと。期間を短めに限り、まず中小企業はその期間で本番環境に展開できるシンプルかつ確実に成功を見込める課題を選ぶことが肝要だという。また大企業の場合は、大きな問題を分割し、それぞれを小さなパイロットプロジェクトとして並行実施することで、最終的に各プロジェクトを組み合わせ、大きな成果が見られると話す。
3つ目の秘訣は「成果物を明確に定義する」。「世の中には成果物をうまく定義できていないプロジェクトが多くあります。ゴールを設定せず、“とりあえずやってみた”というケースが多いので、成果物を明確にドキュメント化し、関係者の認識を合わせることが重要です」(簑田氏)
4つ目は「適切な関係者を参加させる」こと。これについては、“少なすぎず、多すぎず”のバランスが重要だと指摘する。“少なすぎず”については、必要なステークホルダーを省かないこと。また“多すぎず”では、プロジェクトの影響範囲にある部署やグループ、チームの全員を参加させる必要はなく、実際にプロジェクトを進める人、意思決定ができる人など代表者を集めて推進することが肝要だと語る。
5つ目は「本番稼働化を考慮する」。パイロットプロジェクト後にスムーズに本番稼働させるため、仕事の現場に組み込める形を意識して仕組みを作ることを推奨する。
6つ目は「自主性を育む」で、パイロットプロジェクト後も当該業務メンバーが成果物を自主的に使いこなせるようにするという意味合いである。
そして最後の7つ目は「アジリティとフォーカスの両立」。これはもともとの問題からフォーカスをそらさず、プロジェクト中に予期せず得られたデータやインサイトも柔軟に取り入れて、目的の達成につなげていくということだ。
試すフェーズから本番化までDataikuがサポート
簑田氏は、この7つの秘訣を実行するうえで最適なプラットフォームとして、「Dataiku」を紹介する。
簑田氏によれば、Dataikuは「すべての人に簡単な操作で高度なデータ分析を提供できるAI/MLプラットフォーム」である。データ接続・準備から機械学習のモデル構築、可視化、本番環境適用、運用監視までAI活用のすべてをワンプラットフォームで完了することが可能。加えて、クリック操作が中心となる業務現場のユーザーから、コードを書く専門的なデータサイエンティストまで、共通して利用できるシンプルなUIと高度な機能も特徴だと話す。
「これまではデータの準備、機械学習のモデリング、モデルのデプロイなど、それぞれ別々のツールを使う必要がありました。Dataikuを利用することで、AIプロジェクトの関係者全員が一貫して共通のプラットフォームで作業できるようになります。これを当社では“AI業務の仕組み化”と呼んでいます」(簑田氏)
この後、簑田氏は同プラットフォームのUIの特徴や、さまざまなデータベースと接続してデータを取り込める点、データの詳細確認や多様なデータ準備機能、ダッシュボードによる可視化、主要BI製品との連携やAuto MLによるモデル提供、そして手軽なモデル比較や本番環境へのデプロイ機能などを解説した。
続いて、Dataikuを使って「試す」フェーズを突破し、生産現場のDXの一環としてデータの蓄積と可視化、生産工程における予測と最適化を実現している株式会社カネカの事例が紹介された。同社は生産部門での成功を受け、Dataikuのさらなる活用で全社へのデータ分析カルチャー展開を目指していく。簑田氏は「試すフェーズから本番化までサポートできる最適なツールがDataikuです」と語り、講演を締めた。
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