横浜市南部の磯子区に位置する神奈川県立磯子工業高等学校(以下、磯子工業)は、1961年(昭和36年)の開校以来、工業技術を中心に幅広い専門教育を行っている。2022年度に開校60周年を迎えた同校は、重工業が盛んな地元・磯子区に優秀な人材を輩出しているほか、地区の催しへ積極的に参加したり、小・中学生を対象とした体験会を実施したりするなど、地域からも親しまれている学校だ。

  • 神奈川県立磯子工業高等学校

    神奈川県立磯子工業高等学校

そんな磯子工業では、機械科のレーザー加工機を使った授業にデザインソフトとして「CorelDRAW Graphics Suite(以下、CorelDRAW)」を採用している。さまざまなソフトが存在するなかで、CorelDRAWが採用された理由とは――導入の背景とその経緯、そして工業高校での活用シーンについて、詳しく紹介していきたい。

機能や使いやすさに留まらない、CorelDRAW導入の決め手

工業高校には、旋盤やフライス盤を活用した実習や、コンピューターを用いた実習など、実際の仕事に直結するカリキュラムが数多く組まれている。とくにPCを用いる実習において、デザインソフトの存在は小さくない。神奈川県内の工業科を持つ高校9校では、統一されたデザインソフトが使用されており、定期的な見直し・更新が行われている。磯子工業で機械科の総括教諭を勤める中村 逸平 氏は、次のように経緯を語る。

「県立高校の教員は、数年に一度のサイクルで異動しています。以前は学校ごとにソフトがバラバラで、基本的な使い方は同じでも、やはり覚え直すのが大変でした。そこで各学校共通の仕様を策定しようというながれになり、まずはデザインソフトが統一されました」(中村 氏)

  • 中村 逸平 氏

    神奈川県立磯子工業高等学校 進路活動支援グループ 総括教諭
    中村 逸平 氏

こうして2021年度の更新において、県下の標準ソフトとして採用された製品が「CorelDRAW」である。「さまざまな製品が比較検討され、著名なデザインソフトも含まれていた」と中村 氏は振り返るが、CorelDRAWは磯子工業だけでなく、他校からも数多くの支持を得たという。とくに、レーザー加工機や3Dプリンターを導入している工業高校からの支持が厚いとのこと。中村 氏と同じく、同校で機械科の教壇に立つ植松 正寿 氏も、CorelDRAWを評価する教員の一人である。

「現在、本校ではCorelDRAW Ver.2021を計25ライセンス導入していますが、私が初めてCorelDRAWを使ったのは、もう10年以上前の話です。レーザー加工機のある高校に赴任し、先輩教員に教えてもらいました。CorelDRAWにはソフト自体の使いやすさ、そして価格や販売の仕方も含めた導入のしやすさがあると思います。最近はサブスクリプション型も増えていますが、学校では一度採用したら次の更新まで同じソフトを使い続けます。ライセンスは県下の学校全体で管理されますから、買い切り型のほうが導入・運用しやすいのです。決められた予算組みで購入すれば完結し、ランニングコストがかからない点も学校という公共施設にあってはありがたいところです」(植松 氏)

  • 植松 正寿 氏

    神奈川県立磯子工業高等学校 教諭
    植松 正寿 氏

加えて、「レーザー加工機との相性も大きなポイントだった」と植松 氏。磯子工業は2台のレーザー加工機を所有しているが、元々はレーザー加工機専用のソフトを使用していた。だが、このソフトは汎用性が低く、またネット環境があることが前提となっていた点がレーザー加工機の使いにくさを生んでしまっていた。

「私は植松先生からCorelDRAWを教えてもらいました。生徒は基本的にデザインソフトを初めて使います。わかりやすく自然にソフトの一般的な使い方を学んで欲しいのですが、専用ソフトでは実現が難しい状況でした。生徒が自ら考えてものづくりを行うとき、なるべく早くそれを実現できるのがCorelDRAWとレーザー加工機の組み合わせだったのです」(中村 氏)

レーザー加工機を活用して“とっつきやすい”ものづくりを

ここまでの話で、CorelDRAWの採用に大きく関わっているレーザー加工機。磯子工業がレーザー加工機をはじめて導入したのは、2017年ごろの話だ。まず価格が安いキットタイプの機種を購入したものの、パワーがある代償として使いやすさや安全性に問題があった。実際に1年ほど利用したが、内部装置が半年程度で壊れてしまうため、早急に代替機種が検討されたという。

こうした経緯から2019年度、新しくエピログレーザーの「Epilog Helix 24」が磯子工業に導入される。さらに2021年度には「Epilog Zing 16」も追加され、生徒たちのものづくりの幅を広げることに成功している。

「レーザー加工機の利点は、イメージをすぐ形にできることです。溶接や旋盤加工といった実習で作る部品は、大きな機械の一部ですから、生徒たちはイメージしにくい部分がありました。しかしレーザー加工機なら、CorelDRAWで遊びながら設計したものが、イメージ通りに作れます。いままでの授業に比べて、非常に“とっつきやすい”と思っています」(中村 氏)

CorelDRAWを使った磯子工業のものづくり

磯子工業では、CorelDRAWとレーザー加工機をさまざまなシーンで活用している。例えば、3年生が自分でテーマを決めて行う「課題研究」では、生徒の要望に応じて金属加工や溶接加工、木材加工の授業が行われる。生徒5~6名がグループを作り、授業を通じて自分たちの作りたいものを作れる時間だ。ここでCorelDRAWとレーザー加工機が活躍しているという。

その課題研究のなかで、生徒が最近「学校のためになるものを」と作ったのが、教室と下駄箱の表示プレートだ。その出来映えは、素人目にはプロの仕事と区別がつかない。実際に校舎を歩くとさまざまなプレートや案内表示が目につくが、生徒や教員が校内で作ったものも少なくないという。

  • CorelDRAWとレーザー加工機で制作したアクリル製のプレート

    CorelDRAWとレーザー加工機で制作したアクリル製のプレート

また、磯子工業の文化祭や、磯子区のお祭り「磯子祭り」でも制作物は非常に人気がある。 文化祭では、廃材に木材・金属・アクリルを加工した部品を取り付けたルーレットのホイールを制作したこともあるそうだ。また、コロナ禍で数年ぶりに開催された磯子祭りでは、現地にレーザー加工機を持参し、来場者の名前をレーザー加工機で彫り込んだ木製のキーホルダーを配布した。もちろんデザインはCorelDRAWで行っている。

  • CorelDRAWとレーザー加工機で制作した木製のキーホルダー
  • 磯子祭りの看板
  • CorelDRAWのUI
  • CorelDRAW上のデザインをレーザー加工機で印字
  • 磯子祭りで制作したキーホルダーと同じ木製のキーホルダーを実際に作ってもらった

このほか、地域住民からの依頼を受け、ゴミステーションの看板作りを行うなど、磯子工業が行うさまざまな地域活動にCorelDRAWとレーザー加工機は多用されている。

CorelDRAWが生徒の自信を育む

磯子工業での学びに欠かせない存在となっているCorelDRAW。実際の指導にあたる中村 氏と植松 氏は、CorelDRAWのどのような部分を優れていると感じ、使い続けているのだろうか。

画像を加工したい、輪郭だけを取りたい。そういった作業を行うときの速さ、たどり着きやすさがCorelDRAWの大きな魅力だと思います。失敗しながら形を作っていけますし、それである程度のところまで行き着けるのです。我々は、形になって感動するという体験を重視しており、生徒には『遊べ!』と言っています」(中村 氏)

  • 両氏だけでなく、CorelDRAWの操作画面は生徒からの評価も高い

    両氏だけでなく、CorelDRAWの操作画面は生徒からの評価も高い

CorelDRAWでとくに便利に感じるのは、インポート機能ですね。手書きの設計図をスキャンすることで、アナログからデジタルへの変換を簡単に行うことができます。生徒たちも画面上にあるものがそのまま形になると喜んでいますし、私も同感です。我々が楽しくないものは生徒も楽しくないでしょう。使っていて面白い、できあがったものを感謝される、それはやっぱりものづくりの原点だと思います」(植松 氏)

実際、生徒たちは自分のスマートフォンからPCにデータを送信し、遊びながら、失敗しながらものづくりをしているという。さらに、文化祭などでは“人に見られる”状態でCorelDRAWを使う。そして、使っているソフト名を聞かれて「CorelDRAW」と答えることで、さらに生徒自身にCorelDRAWの存在感が増しているそうだ。

「生徒の多くは製造業に就職します。そして、Corelという名前は忘れていても、仕事で『あのとき使ったソフトと同じ』と気づくのです。CorelDRAWは、お菓子のパックを作っている会社、段ボールを加工している会社など、さまざまな場所で使われています。もし会社で使っているソフトが異なっていても、自動車の運転と一緒で、一度CorelDRAWの使い方を覚えれば、ほかのソフトも使えるでしょう。生徒の『使える』という自信にもつながるソフトだと思います」(中村 氏)

小・中学生にもCorelDRAWを使ったものづくり体験を実施

日本ではいま、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術・教養(Art)、数学(Mathematics)の分野に注力したSTEAM教育が注目されおり、新しいものを生み出す力が求められている。そのために磯子工業ではCorelDRAWを使い、地域の子どもたちへ向けた取り組みも積極的に行っている。今後に向けたCorelDRAWの可能性について、両氏は次のように締めくくった。

「本校では、中学生向けの体験教室と、小学生向けの『わくわく教室』という取り組みを行ってします。CorelDRAWはマウスひとつでさまざまなことができるため、プログラミング必修世代にとっても使いやすいソフトだと思います。小学生の場合、幅広い子どもたちがやってくるため、我々は機能を絞って教えていますが、ソフト上であれば小さな子どもでもケガの心配がありません」(植松 氏)

「より多くの子どもたちに、ものづくりを体験してもらいたいと思っています。そのために、本当に使う機能だけを実装したCorelDRAWの簡単バージョンがあったりしても面白いかも知れませんね。また、これからはお年寄りの人口比率も高くなります。そういった方のチャレンジも促せるかも知れません。簡単なものからステップアップしていけるながれを作れば、CorelDRAWはもっと多くの人に広まるのではないかなと思います。それくらいポテンシャルのあるソフトです」(中村 氏)

  • (左)磯子工業 中村 氏(右)同 植松 氏

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