大学におけるDX推進の1つの指標となるのがLMS(学習管理システム:Learning Management System)の活用状況です。ただLMSを利用するだけではなく、文部科学省(以下、文科省)が定めるアセスメントへの要求を満たし、効果的なデータ活用までできているか否かがポイントとなっています。そうしたなか、 東京都文京区と埼玉県ふじみ野市にキャンパスを構える文京学院大学では、オープンソースソフトウェアのMoodleを使用したクラウドLMSである「Resonant LMS XP」を導入し、DXの推進と学びの習熟度の可視化に取り組んでいます。今回は、実際に利用してみた効果などについて、文京学院大学 人間学部 学部長の椛島香代氏と、同大学 外国語学部 教授でDX推進センター長でもある浜正樹氏、同学習支援センター 学習支援ふじみ野グループ 情報教育研究センター担当の和田健太郎氏 に話を聞きました。

  • 取材写真 左から、文京学院大学 和田氏、浜氏、椛島氏

    左から、文京学院大学 和田氏、浜氏、椛島氏

日本の大学として、アセスメントの仕組みをどう整えるか

──まず、文京学院大学様が掲げる教育理念とはどのようなものか、DXとの関わりも交えて簡単にご紹介ください。

浜氏:本学の教育理念は「自立と共生」です。私は大学全体のDX推進の役割を担っていますが、基本的にはこの理念のうち、共生を促進することを目指しています。また、学修という観点では、学生、教員、実習生が相互に評価し合う仕組み、いわゆる社会構成主義を実装したLMSを活用していくことが重要になると考えています。

  • 取材写真 文京学院大学 浜 正樹氏

    文京学院大学
    外国語学部 教授 博士(理学)
    DX推進センター長
    浜 正樹氏

──「Resonant LMS XP」の導入以前は、教育におけるIT活用はどのような状況だったのでしょうか。抱えていた課題と合わせてお聞かせください。

和田氏:これまでMoodleを20年以上運用していたのですが、利用者は僅かという状況でした。それにも関わらず、サーバーの構築や運用、セキュリティの問題など対応しなければならないことが多いうえ、頻繁にバージョンアップがあるのでその対応にも時間がかかり苦労していました。さらに、先生方からこういう機能も欲しいといった要望があると、そのたびに既存のプラグインで対応可能かどうかを検証し、もし対応できなければカスタマイズも視野に入れなければなりません。ただしLMSのカスタマイズができるIT企業自体が少ないため、まずは対応可能な会社を探すのに苦労しましたね。また 、DXによる学修者本位の教育の実現を目指すにあたり、従来型の学習支援システムでは機能が不足しているという状況でした。特に学生の学修データの可視化、当該分析結果を活用した個々の学生の状況に応じた学修支援、自己評価・ピア評価・ルーブリックを基にした教員のフィードバックなど多面的な評価を実現する必要が出てきました。

  • 取材写真 文京学院大学 和田 健太郎氏

    文京学院大学
    学習支援センター 学習支援ふじみ野グループ チーフ
    情報教育研究センター担当
    和田 健太郎氏

椛島氏:コンピテンシーをどう育てていくのか可視化することが大学の大切なミッションとなるなか、どう外に向けて教育の質について発信するのかが大きな課題としてありました。人間学部は専門職を養成している学部でもあるので、知識だけでなく人と関わる力も育む のですが、そこではいかにして人間性を培っていくかが重要になります。このため、教育の質を学生にも見えるようにして、そこからの気づきなどをフィードバックしながら育てていくことが求められていたのです。

  • 取材写真 文京学院大学 椛島 香代氏

    文京学院大学
    人間学部 学部長 教授
    大学院人間学研究科 教授
    椛島 香代氏

浜氏:社会構成主義に基づいた、学生自身とクラスの仲間、そして教員や実習先で相互に評価するアセスメントの仕組みがなければ文科省の要求する内容には応えられません。これまでのMoodleにもアセスメント機能はありましたが、日本で要求されるアセスメントのスタイルには必ずしもマッチしてないものなので、包括的に対応できる仕組みはないか探すこととなりました。具体的には、学修ポートフォリオ、ルーブリック、自己評価+レーダーチャート表示機能、学修ダッシュボード機能などの、学修成果の可視化ができる機能が必要だったため、その要件を意識して検討を始めました。

求めていたアセスメントやポートフォリオが実現できる点を高く評価

──パナソニック インフォメーションシステムズ(以下、パナソニックIS)や「Resonant LMS XP」を知ったきっかけや選定ポイントについてお聞かせください。

浜氏:パナソニックISを知ったのは2022年2月頃で、「大学教育にDXをいかに取り入れるか?」という資料をダウンロードしたのがきっかけでした。そこから実際に問い合わせて、本学の課題などについて担当者とお話ししたところ紹介してもらったのがResonant LMS XPでした。

2022年の3月に開催された全学FDで他大学のShowcase活用事例が紹介された際、そのセッション後の学内ディスカッション時に、ポートフォリオやアセスメントに学内需要があることがわかったのです。そこで各学部長にアセスメントに関するレゾナントの機能を説明して回りました。

その後も、説明を聞いたり調べたりしたところ、Resonant LMS XPは、日本で要求されているアセスメント機能をはじめ、本学が必要とする機能を実装しており、また、3カ月単位での利用が可能であるためコスト面等でも柔軟に対応できるなど、クラウドのメリットが最大限活かされていることがわかりました。パナソニックISと開発会社であるレゾナント・ソリューションズのフットワークが良い点も高く評価しました。

椛島氏:ちょうど学習成果を評価していくことに当学部のミッションがあると考えていたところに、パナソニックISからご提案を受け、率直に「これは使えるかもしれない」と感じました。

学生たちにとっても、教科ごとに単発で終わるのではなく、科目間の連携などを調整しながらこれまでの頑張りをつなぎ合わせて振り返ることができるポートフォリオをつくることが大切です。沢山の知識を蓄えても、現場でどう生きるかというのは、そうした 思考回路をつくれるかどうかにかかっていると思います。Resonant LMS XPであれば、これまでは手書きで対応していたメモなども、たとえば授業中などに写真をとってすぐにシステムにアップして蓄積することで、過去から現在に至る自身の学び・成長を振り返ることができるようになります。それは、卒業後に学生たちが働く教育現場で活かせる学びの在り方だと考えました。

浜氏:実際に導入を進めるにあたってパナソニックISには、レゾナント・ソリューションズとの情報連携や進行管理などの導入支援に尽力してもらいました。おかげで、わずか3カ月程度という短い期間でシステム構築を完了することができました。

学生たちが自身の“育ち”を確認でき自信を持って社会に羽ばたけるように

──「Resonant LMS XP」の利用を開始して1年ほどが過ぎましたが、これまでどのような効果を感じていますか。

浜氏:当初からの課題であった、社会と文科省の求めるかたちでアセスメントの対応ができるようになったのが大きいですね。アセスメントの方法について、きちんと目に見せて説明できるようになりました。こうして一連のカリキュラムでの評価文化を定着させるための第一歩が踏み出せたと思っています。

椛島氏:今回、まずはパイロット的に当学部の児童発達学科で利用しました。同学科は、保育士、幼稚園教諭、小学校教諭の3つの免許・資格が取得でき、専門職としての自分の育ちを可視化したいというのが大きなミッションとしてありました。そして実際にResonant LMS XPを使ってみて、自分自身の育ちの度合いをあらためて確認できることで、自信をもって卒業していけるものになっているのではないかと感じています。 児童発達学科では、より実践的な知識や対応力を身に付けるためにも、読む、書く、話すといった人間力の基礎になるような実習・演習を重要視し、1年生の頃から往還型研修をおこなっています。これまでも履修カルテなど紙ベースで作成したものはたくさんあるのですが、それらすべてをポートフォリオとして可視化することが難しく、取り組みが単発で終わってしまっていました。しかしResonant LMS XPを活用することで、これまで積み上げてきた専門職としての自分自身の育ちを可視化することができます。

評価システムと呼ばれるものは数多く存在しますが、Resonant LMS XPであれば手軽に書いたものをアップして蓄積できるため、私たちのようにある意味「アナログ」ともいえる側面を大切にしている教育方法をとっていても、その取り組みを「デジタル」の力を使ってつなげていくことができるようになりました。なかでもShowcase機能は教員・学生双方で内容を確認することができ、通常の授業だけではカバーしきれない「人間性の成長」に対する振り返りをする機会になっています。学生たちからも、半年や年単位の振り返りが可能となったことであらためて自分の変化がわかり自信が持てた、自分の課題が具体的になったなど好評です。

また教員としても、LMSの使用法に関する講習会などを通して「次年度はこういう形で使ってみよう」といった教育活動に対する新しい可能性を見いだせると感じています。

和田氏:システムの運用面については、これまではMoodleのカスタマイズをする際に、改修内容に合わせて様々な会社へ依頼していましたが、今回の導入を受けてそれを一元化できるようになった点は大変助かっています。また、最近の学生にとってはPCよりもスマートフォンの方が使い勝手がいいようなのですが、Resonant LMS XPはスマートフォンにも対応しているため、授業においての活用の幅が広がりつつありますね。

──最後に、今後「Resonant LMS XP」をどう役立てていきたいかお聞かせください。

浜氏:やはり全学部でカリキュラム・プログラムベースでの評価文化を定着させたいですし、アセスメントした結果をきちんと共有し次の学びにつなげていくためにも、将来的には、履修登録・成績管理システムとのマージ、教職員・学生向けの学修ダッシュボード構築に向かいたいと思っています。

椛島氏:Resonant LMS XPを活用し、学生の成果を可視化することで、自分たちの大学のカラーや大切にしていることを示していきたいと思います。また教員自身もレポート作成等で積極的にシステムを活用し、本来考えるべきことに使える時間の創出にもつなげていきたいですね。我々はどうしてもシステムに対しては素人ですので、パナソニック ISには今後も、学生たちの使用状況に対するフィードバックや、どう活用していくのが良いかといった使い方の提案など、さまざまな観点から情報を提供いただきたいと思っています。

和田氏: Resonant LMS XPによって可視化されたデータや、蓄積されたログを有効活用し、出席率や入試種別などの属性を括り付けてIR分析やロールモデルの作成に役立てていきたいと思っています。

学生からの声

文京学院大学 人間学部児童発達学科
髙橋 悠氏

私は人間学部児童発達学科の4年に所属しており、保育士資格と幼稚園教諭一種免許状の取得を目指し、保育や子どもに関わることを幅広く学んでいます。

「Resonant LMS XP」を使うことで、毎年記入していた自己評価シートを一覧として見ることができるようになり、1年生から現在までの変化が視覚化され、振り返りがしやすくなったと感じました。また、1年生の頃からレポート課題は自分のUSBに保存するようにしていたので、LMSを活用することで、自分の手元に残すことができ、先生からのフィードバックもしていただけるようになることで、より学びが深くなると思いました。

私は4年生からの活用だったので、実際に体験することはできなかったのですが、仮に1年生の頃からLMSを活用することができていたとしたら、自分のレポートを一か所に保存することができる機能と、先生方からフィードバックをいただける機能が特に気に入っていたのではないかと思います。自分のレポートを通して、自分の考え方の変化や成長を感じることができることで、学習に対するモチベーションを向上させることができるはずですから。レポート提出後に、現場での経験が豊富な先生方から、個人に対してフィードバックをいただくことができる機能は、とても貴重で大切にしたいものだと思います。

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