株式会社リーガルコーポレーションは、長年使い続けてきた据え置き型POSレジからiPadを用いたタブレットPOSに切り替え、同社が運営する国内小売店舗の大幅な業務改革を実施した。顧客へのサービス向上に加えて、従業員の働きやすさと新たな仕事のスタイル実現にもつながっており、より高い価値創出に向けて活用シーンを広げている。

POSシステムの入れ替え検討の背景

1902年に創業し、120年の長き歴史を誇る靴の老舗・リーガルコーポレーション。看板ブランドの「REGAL」を筆頭に、紳士靴・婦人靴をはじめ各種靴の製造・販売、並びに修理の事業も展開する。国内外のライセンスブランドの仕入れ販売、認知拡大に向けた有名ブランド・企業や著名人、障害者アート等とのコラボレーションも積極的に行っている。「新しいことにどんどんチャレンジしている会社です」と、デジタルを活用した業務改革を手掛けるビジネスソリューション部イノベーションデザイン課の竹崎直樹氏は語る。

株式会社リーガルコーポレーション ビジネスソリューション部 イノベーションデザイン課 課長 竹崎 直樹 氏

株式会社リーガルコーポレーション
ビジネスソリューション部
イノベーションデザイン課
課長
竹崎 直樹 氏

同社は35年に及ぶ長い間、世代交代を繰り返しながら据え置き型のPOSを利用してきた。DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる時代になってからも、ネットワークは有線LANのままで、顧客には紙のDMを長年続けていたという。また、据え置き型であるためPOSの設置場所はどうしても限定され、接客や相談は店内スペースで行うものの決済はレジカウンターでというように、業務内容によって場所を変えなければならない非効率も発生していた。

「据え置き型のPOSレジを時代に合わせた新しい仕組みに変えれば、臨機応変なサービスやこれまでにない取り組みができるのではないか、という考えは以前からありました」と竹崎氏。ネットワークやデバイス、ソフトウェアなど基盤部分の導入・管理を担う同部デジタル基盤課の新田典彦氏も「従来のPOS使用時は、会員システムや様々な情報を利用した効果的な取り組みができていない状況で、小売店舗のスーパーバイザーを務めていた頃はもどかしさを感じていました」と振り返る。

株式会社リーガルコーポレーション ビジネスソリューション部 デジタル基盤課 課長 新田 典彦 氏

株式会社リーガルコーポレーション
ビジネスソリューション部
デジタル基盤課
課長
新田 典彦 氏

そんな折、利用していたサーバーOSがサポートを終了することを受け、次期POSシステムの検討に入った。店舗に設置するPOS端末のリプレイスと、基幹システム・会員システムとの連携などを目的としたRFP(提案依頼書)を出したが、その中には新たなPOS端末としてタブレットを活用することも盛り込まれていた。竹崎氏は当時、経営企画室にいたため選定自体には関わっていないが、「POS選定においては、時代の流れを見てもタブレット端末を導入していきたいという強い思いがあった」と振り返る。ただ、RFPにはタブレット端末のみではなく、従来のPOSレジとの併用が書かれていた。

このRFPを受けて数社がプレゼンテーションを行い、最終的にNECネクサソリューションズの提案を採用することとなる。この提案は、複数のデバイスとOS、アプリケーションが存在する運用面の複雑さや費用面を考え、すべてをタブレット端末一本に置き換えるという内容になっていた。それに加えて、タブレット端末による新たな接客スタイルと使用シーンのイメージが、具体的かつふんだんに盛り込まれていたという。

iPadとともにMDMソリューションとしてCLOMOを導入

そしてこの提案には当初から、タブレット端末1台1台の稼働確認やOS環境・アプリ配信の管理に加え万が一の紛失・盗難等のリスクに備える目的で、モバイルデバイス管理(MDM)ソリューションも含まれていた。

タブレット端末としてはiPadを採用。POSシステム受け入れテストなどを終えた店舗展開直前の段階で、アプリ配信方式が変更される想定外の事態はあったものの、新型コロナウイルス感染拡大が本格化する前の2020年3月、全国約200店舗・430台のiPadは無事に稼働を開始した。

稼働開始前の2020年1月から2月にかけての時期、新田氏は全国を回り、iPadで新しく導入するタブレットPOSの説明に奔走していた。「少しでもずれていたらコロナの影響が深刻化し、導入はもっと大変な思いをしたでしょうが、本当にギリギリのタイミングで済ませることができました。iPad自体は店舗スタッフのみなさんも普段から私生活でモバイルデバイスを使い慣れているので、POSシステムが変わることへの抵抗もなく、前向きな反応が多かった印象です」

ただ、前述の突然のアプリ配信方式変更だけは、時間がない中、大慌てで対応を進めたと新田氏は振り返る。「実は、当初予定していた新POSシステムの展開時期は2020年1月でした。ところが2019年の年末にアプリの配信方式の変更があり、そのとき選定していたMDM製品では仕様を満たせないことがわかったので、至急代替ソリューションを3社から比較検討し、年末頃にアイキューブドシステムズの『CLOMO MDM』を採用しました」

年が明けて1月からは実際にトライアル環境を作り、CLOMO MDMの導入に向けた具体的準備を始めていく。その結果、予定の1月には間に合わなかったものの、無事3月には全国展開を終えることができたという経緯だ。

竹崎氏は前担当から「仕様変更の混乱の中、アイキューブドシステムズが素早い対応で納入支援をしてくれたおかげで、ソリューション選定から提案、費用調整、再稟議、アプリ申請、そして稼働開始までスムーズに進めることができたと聞いています」と語る。

大きく変わった店舗内の景色と接客スタイル

iPadの導入によって、店舗の景色は大きく変化した。まず何より変わったのが店内のスペースだ。これまで据え置き型POSが置かれていた場所が空き、店舗内が全体的にすっきりとしたことで、スタッフの店頭における機動力が大きく向上したという。

各店舗には基本的に2台のiPadを配置し、大型店舗ではプラス1、2台を確保。いずれのケースでも予備機を用意し、状況に応じて柔軟に入れ替えながら活用している。

「来客が多いときはレジに行列ができることもありました。iPadを使うようになってからは従来よりも広いスペースが生まれ、レジカウンター以外の接客スペースでもタブレットPOSで決済できるようになったため、お客様の買い物がスムーズに進むようになりました。また、当社が力を入れているシューケアサービスのためのスペースも余裕をもって確保できました」と竹崎氏。顧客の待ち時間は、スタッフの感触としては大きく減っているとのことである。

また、スタッフの仕事のスタイルも変わり始めたと竹崎氏が語る。「たとえばお客様がほしい靴のイメージを言葉で説明したとき、iPadが手元にあると、当社のオンラインショップや雑誌掲載の写真などをiPadで表示して『こちらですか?』と一緒に確認しながら接客できるようになっています」

同社の店舗では、顧客個々の足に真にフィットする靴を提案する親身な接客が特徴で、これまではサイズが合わなかったときスタッフは一度バックヤードに下がり、他店舗分も含めて在庫を確認していた。それがiPad導入後は画面から在庫をチェックできるため、顧客の購買意欲を維持したまま丁寧な接客が可能になっているという。店舗における接客において、従来のスタンダード+αの価値を生み出しつつあるといえるわけだ。

  • 接客にiPadを活用する様子

iPadはタブレットPOSのシステムとして、あるいは店頭でこうした多彩な活用を可能とする端末として活躍しているだけでなく、バックオフィスのシステムやWebミーティング用、オンライン接客・オンライン研修、さらには免税システムのアプリを動かす端末としても利用されている。

とりわけ研修をWebで行えるようになった点は大きいようで、「これまでは研修の際、浦安(千葉)の本社や大阪の事務所などに出向かなければなりませんでした。オンラインでの研修が可能になったことで、コロナ禍で集まれないときも定期的な研修を実施できましたし、その後もオンラインでの研修が定着しています」と竹崎氏。スタッフからリクエストされた機能も柔軟に取り入れており、たとえば免税システムのアプリは現場感覚で必要性を感じたスタッフの意見で導入したとのことだ。

ただ、本格稼働の直後からコロナ禍が広がったこともあり、店舗もようやく従来の賑わいを取り戻してきたところで、「いまは全店舗のスタッフが試行錯誤しながら本当に有効な活用方法を編み出しているところですし、アプリのリクエストなどもこれから本格的に増えていくだろうと考えています」と新田氏。いずれにしても、従来以上に柔軟な働き方が実現してきたことで、従業員満足度も向上しているのではないかと手応えを感じている。

そのほか、キャッシュレス決済機能についてもさまざまな電子マネーやQRコード等をタブレットPOSにて試行中で、今後導入を積極的に進めていくという。

今後本格的に使いこなしてさらなる活用を追求する

ここまでのiPadは小売店舗中心に広げてきたが、いまは百貨店内の売り場スタッフからもタブレットPOSを使いたいとの声が上がっており、導入を始めている。百貨店の場合、決済自体は先方の集合レジで行うため、iPad活用は売上や在庫の管理等に限られるものの、棚卸などを簡略化でき、営業担当から「入れて本当に良かったという声が聞こえています」と竹崎氏。従来POSレジを使っていた店舗だけでなく、他の業態でも活用できる手応えを感じていると話す。

一方、新田氏はデジタル基盤担当の立場から、今後について次のように語る。「iPadの機能は、もっと活かせる余地があると考えています。たとえばお客様から預かった靴の写真をiPadで撮り、そのまま添付して修理工場に送るなど、アイデアはもっと広がっていくでしょう。接客においてもまだまだ新しい可能性があると感じています。そうした取り組みを追求していくうえでも、iPad端末とOS・アプリ配信を適切に管理し、セキュリティリスクの抑止にも効果を発揮するCLOMO MDMは必要なものです。こちらも導入して終わりではなく、本物の血肉にして価値を生んでいくため、アイキューブドシステムズに支えてもらいながらさらなる活用を進めていきたいと思っています」

  • 株式会社リーガルコーポレーション 竹崎 直樹 氏、新田 典彦 氏

導入製品

CLOMO MDM

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