クラウドやモバイルをはじめとしたITの活用がビジネスに不可欠なものとなった現在、デジタルトランスフォーメーション(DX)実現への取り組みはあらゆる業種で加速している。製造業においても同様だが、産業用システムを運用・制御するOT(Operational Technology)を軸にした技術的な文化を形成する製造現場において、ITを浸透させるのは困難なミッションといえる。特に厳格なセキュリティ体制が求められる社会インフラの生産設備では、ITを効果的に活用できないケースも多い。

1988年に創業し、主に千葉県内のプラント・工場に計装エンジニアリングを提供してきた創販株式会社では、DXが進まない製造業の現状に危機感を抱いていたという。プロジェクトの提案からシステム構築、施工、メンテナンスまで一気通貫でサービスを提供している同社もOTのエンジニアを中心とした企業文化を築いていたが、ITを活用したいという顧客からの声が増えてきたこともあり、ITエンジニアの育成に着手。「新技術活用室」を設立し、製造業のDXを支援するという新事業を開始した。創販株式会社 新技術活用室 取締役の石毛 正義氏は、その経緯を語る。

創販株式会社 新技術活用室 取締役 石毛氏の写真

創販株式会社 新技術活用室 取締役 石毛氏

「他の業界に比べて製造業のDXが遅れていることに以前から危機感を持っており、私たちのような立場の会社が何かを変えていけるのではと考えていました。AIやIoTといった技術が導入しやすくなってきたことや、お客様からITを活用したいという声が高まってきたこともあり、2020年に新技術活用室を立ち上げて本格的な取り組みを開始しました」(石毛氏)

今後のビジネスで競争力を維持するためにはITの活用が不可欠と考えていた石毛氏は、2年以上前から新しいビジネス展開を模索していたという。顧客のIT活用への機運が高まってきたタイミングで満を持して新事業をスタートし、顧客と共同で研究開発やPoCを推進。2020年12月に産業向けリモートメンテナンスソリューションの開発に成功した。このソリューションに使われているのが、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)が提供する産業用IoTプラットフォーム「WISE-PaaS IIJ Japan-East」と、データ通信サービス「IIJモバイルサービス/タイプI」となる。石毛氏は、採用の経緯をこう振り返る。

「2020年6月からプロジェクトを始動させたのですが、実はその時点ではIIJのソリューションを使う予定はありませんでした。たまたま同時期に社員のSIMカードを購入したことからIIJとやり取りが始まり、新技術活用室の取り組みについてもさまざまな提案をいただき、『WISE-PaaS IIJ Japan-East』の採用を決定しました」(石毛氏)

IIJのソリューションによって、インフラ業界が求めるセキュアなクラウド活用を実現

製造現場が求めるIT活用を実現した創販の産業向けリモートメンテナンスソリューションは、「IIJ Partner of the Year 2020」においてビジネスイノベーションアワードを受賞した。石毛氏は「今回開発した遠隔監視システムは、プラント・工場におけるニーズを反映したものです」と語る。

「これまで私たちが顧客に提供してきた遠隔監視システムは、『絶対止まらない』『絶対壊れない』ことが求められており、膨大なコストをかけて開発してきました。確かにプラント・工場の運転に関わるシステムは厳格に作り込む必要があるのですが、その一方でお客様からは、コストをかけずにシンプルにデータを収集・活用したいというニーズも高まっていました。そこで開発したのが、WISE-PaaS IIJ Japan-Eastを利用したボンベ残圧監視システムです」(石毛氏)

今回PoCを実施した企業では、県内10カ所に点在しているユーティリティのガスボンベについて、定期的に運転員が巡回点検を実施していた。その手間とコストに対し創販は、WISE-PaaS IIJ Japan-EastとIIJモバイルサービス/タイプIを活用し、ボンベの圧力を可視化。一定の圧力以下になるとメールで通知するシステムを構築し、従来の巡回業務を大幅に省力化することに成功した。IIJの密接なサポートもあり、WISE-PaaS IIJ Japan-Eastの採用決定から半年程度でシステム構築を完了したと石毛氏。「これまでOTに携わってきたため、ITは用語からわからないところがありましたが、IIJのエンジニアが親身に教えてくれたのでスムーズに進められました」と喜びを口にする。

  • ボンベ残圧監視システムの仕組みを説明する図

創販がIIJのソリューションを採用した決め手は、通信とクラウドを一体で提供していることにあったという。

「国内でリリースされている製造業向けのクラウドソリューションは数多くありますが、通信サービスと一体化して提供しているケースはほとんどありません。IIJのソリューションは現場とWISE-PaaS間を閉域網でセキュアに接続でき、プラント・工場のデータを安全に扱えます。データセンターも国内にあり、厳格なセキュリティ体制が必須のインフラ業界において業界スタンダードのソリューションになるのではと感じました」(石毛氏)

セキュリティを担保しながらクラウドのメリットを享受できるIIJのソリューションは、創販が目指す“製造業のDX”にマッチしていたと石毛氏。IIJがさまざまなリクエストに対応してくれたことで、要件どおりのシステムが構築できたと語る。実際、「メール通知」の機能はもともと搭載されておらず、IIJのエンジニアがリソースを追加して実装したものだという。また、WISE-PaaS Dashboardがオープンソースのソフトウェアをベースに作られていたことも、将来的な展開を考えると大きなメリットとなった。

PoCを実施した現場からは、自分のスマホでデータが確認できることに驚きと喜びの声があがったという。厳格な運用が求められるオンプレミスのシステムを利用してきた製造業の担当者にとって、クラウドにより地理的な制約とデバイス面の制限がなくなったことは大きなインパクトがあったという。巡回業務の省力化はもちろん、ガス切れが事前にわかるようになったことで、合理的な対応が可能になるなど確実な効果が表れてきていると石毛氏は語る。

製造現場の意識改革を進め、効果的なIT活用を実現していく

製造業のDXを支援する創販 新技術活用室では、今後も積極的に人材を拡充してビジネスを拡大していく。まずは今回のPoCで成功を収めたボンベ残圧監視システムを全10カ所へと横展開。さらに別の用途にもWISE-PaaS IIJ Japan-Eastを活用していく予定だ。2021年2月に新技術活用室に加入した片岡 洋樹氏は、ボンベ残圧監視システムの横展開を皮切りに、顧客のニーズを踏まえたDXを支援していくことに「やりがいを感じています」と力を込める。片岡氏は、県内に100ヵ所以上設置されている地震計の情報を収集して、地震発生時における各地区の震度を可視化するソリューションの開発も手がけている。

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創販株式会社 新技術活用室 片岡氏

新技術活用室では、今後7年間で20人程度まで人員を増強する計画を立てており、すでに募集を開始している。「IIJ Partner of the Year 2020」においてビジネスイノベーションアワードを受賞したことで、生産性の高い仕事を求める学生から注視されているという。

創販では今回のプロジェクトの経験を活かし、自社が持つ製造現場の制御システムの実績とIIJの展開する産業向けITソリューションを組み合わせて製造業の課題解決を目指していくという。石毛氏は今後の展望とIIJへの期待をこう語る。

「OTのエンジニアは保守的で変化を嫌う傾向があり、ここを変えないと製造業の未来はないと感じています。IIJのエンジニアが先進的なITの知見を製造現場に教えてくれることで、製造業のDXが加速していくのではないかと期待しています」(石毛氏)

  • 石毛氏と片岡氏の集合写真

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