企業向けに無線LANソリューションを提供し、製品の導入・運用のサポートも積極的に行っているフルノシステムズ。昨今では、製品の強みの紹介だけにとどまらず、自社開催のイベントやメディア主催のイベントを通じて、Wi-Fiをビジネスで活用するための方法やテクニックといった手引きの紹介にも力を入れている。

今回は、去る3月10~12日にかけて開催されたITサービスの日本最大級のオンライン展示会「ITトレンド EXPO 2021 Spring」にて、2回にわたり行われた同社 営業技術部 西日本営業技術課 技術主任の中山 裕隆氏のセッションから、フルノシステムズの取り組みの一端を垣間見ていきたい。

  • 株式会社フルノシステムズ 営業技術部 西日本営業技術課 技術主任 中山 裕隆氏

    株式会社フルノシステムズ
    営業技術部 西日本営業技術課 技術主任
    中山 裕隆氏

■ Wi-Fi環境の構築をはじめるとき、抑えておきたい5つのポイント

1日目に行われたのは、「多台数・安定通信に導くWi-Fi構築5つのポイント」と題したセッション。中山氏によると、無線LANの課題や困りごととして、よくあるのが「職場をフリーアドレス環境にしたいが何から始めていいか」「オンライン会議で使っているが、毎回通信品質が不安定」「40台のタブレットで接続したが、全部つながらず途中で切れてしまう」「Wi-Fiを導入したが、運用コストが高くて今後維持できるのか心配」といった相談だ。

また、これらは大きく、"導入"、"運用"、"トラブル"の3つに分類することができ、8割は「導入後に問題が出るパターン」だという。これに対し、「運用とトラブルを事前に想定することで、ある程度は回避でき、そのためには導入を慎重に検討することが重要です」と中山氏。

  • 課題は大きく3つに分かれる!

一方、コロナ禍以降、テレワークの導入が急速に進むなか、企業や学校といった組織におけるWi-Fi環境としてとくに求められているのは、"通信スピードの高速化"、"多台数端末のサポート"、"無線空間の効率的利用"の3点だという。こうした環境を実現するために、Wi-Fi構築で第一のポイントとなるのは「機種の選定」だと中山氏は強調する。

「たとえば工場の場合、接続は小規模だが使用環境に条件があったり、一方でオフィスや学校では多台数接続、かつ安定した高速通信が求められたり……、とWi-Fiに求められる条件は環境によってマチマチです。さらにアクセスポイント(AP)に接続する端末台数と通信量は増え続けるものなので、通信の負荷に対応することも重要になります。こうした条件に見合った機種を選ぶことはWi-Fi環境の構築において、まず大事にしてほしいポイントです」(中山氏)

2番目のポイントは、"セキュリティ"だ。中山氏によると、日本で市販されている製品は、基本的には最新のWi-Fiセキュリティ規格「WPA3」には対応しているとのことだが個人向けと業務向けでは求められるスペックが異なり、ハードウェアが対応していないケースもあることから「安い製品を選んだら古いチップを使っていてセキュリティ規格に対応していなかったということもあるので、金額と見合う性能を持っているかどうかは見極める必要がある」と注意を促す。

3つ目のポイントは、"監視機能"。家庭用では不要で「あってもなくてもいい機能」と話すが、企業や学校といった大規模な組織の場には、接続台数が次第に増えていくものであることから、管理者1人や一部署で管理することを踏まえて「APを一括管理できるソリューションがあったほうがいい」とする。

4つ目のポイントは"拡張性"だ。とくに、ポーリング方式と呼ばれる、複数の機器を円滑に連携させて制御する方式による一元管理が可能であると、将来的に拠点展開を行っていく際にも、無線LANコントローラや拠点間VPN網の導入が不要となり、拡張も容易になるという。

5つ目は、"サポート体制"だ。何かトラブルが起きた際、電波という目に見えないものを相手に解決策を見出すのは困難を伴うため、手厚いサポートが用意されているか否かも重要なポイントとしてあげる。

  • Wi-Fi構築の押さえるべき5つのポイント

フルノシステムズの場合には、AP自体は5年間の無償保証、障害発生時には技術者を派遣で迅速に対応できるオンサイト保守契約を提供しているとのこと。加えて、故障時における代品貸出・交換サービスまで行う保守契約まで、導入後も安定した通信をお維持するための充実したサポートサービスを提供している。

■ トラブルの原因は身近なところに?

2日目に行われた「無線LANトラブルシューティング&事例」と題したセッションでは、実際に相談を受けた無線LANのトラブル事例と解決策と対処方法などが紹介された。

中山氏によると、相談事例としてよくあるのが「電波が届かない」「オンライン会議ができない」「タブレットを増やしたらつながらなくなった」「通信速度が遅くなった」といった相談。中でもタブレットやノートPCがつながらないといったトラブルについては、まず考えるべきは、AP側の設定の問題か端末側の問題だが、原因として意外に多いのが初歩的なハードウェアの故障だ。特にAPへの電源供給に問題があるケースは少なくはなく、「スイッチポートのトラブルや、有線LANケーブルが劣化していたといった例も。ポートをつなぎ変えたり、ケーブルを変えたりしたらあっさり解消されたというのは割とあります」と明かし、無線LANに問題があることを疑う前にチェックすべきポイントとして指摘した。

次に考えられるトラブルは電波の干渉だ。「電波強度とアンテナの本数に関係はありますが、電波の強さ=通信の安定ではありません」と中山氏。「電波の強さというのは、それぞれの国で決められた電波法に沿ったものになっているので、電波を強くしたからといってつながりやすくなるというわけではありません。むしろ干渉波や乱反射により、通信ができないということがあります」と説明する。

現在、無線LANの通信規格には、802.11b/g(2.4GHz帯)と802.11a(5GHz帯)があるが、それぞれに設定可能なチャンネル数や利用可能なチャンネル数の違いといった特性があり、これはラジオの周波数をイメージするとわかりやすいだろう。

また、電波の干渉で考えられるのは、同一帯域における無線LAN機器同士で干渉し合っているケース。「相互に干渉しないAPの配置とチャンネル設計を行い、テストすること」で解決できるという。

  • 無線LANにおける電波のふるまいとは?

次に無線LAN機器以外の電波の干渉もありがちなケースだ。サイトサーベイと呼ばれる調査機器を用いて、電波測定を行い、「外来波のチェックや、どの周波数帯が干渉しているかを把握することで解決できる」とのことだ。

  • 無線LAN機器以外の干渉

ちなみに、2.4GHz帯は電波の通りがよく、回り込んでいる場所でも届くのがメリットだが、電子レンジをはじめ、デジタルコードレス電話機、Wi-Fiルーター(モバイルルーター)、スマホテザリング、水、紙など干渉源となるものも多いのが弱点だ。

これに対し、5GHz帯は電波の通りがあまりよくなく、回り込んでいる場所には届きにくいのが弱点。一方、主な干渉源は気象レーダーのみで、安定性に優れ、速度も出るが、利用できるエリアは狭くなる傾向にあるのが特性だ。

電波の特性としてもうひとつ知っておきたい知識として、"透過性″がある。一般に、無線LANの電波は、木製素材やガラスは透過するが、コンクリートや金属素材は遮蔽されるとされている。ゆえに木造住宅は電波の透過性がよい反面、オフィスビルは電波の透過性が悪いといったことがあり、建物の構造も通信品質に影響を及ぼす要素だということを忘れてはならない。

  • 電波の透過性について

■ ユーザーや管理者へ無線LANの「正しい理解」を

さて、講師を務める中山氏だが、技術担当者として、全国津々浦々の無線LANインフラの設置やシステムの構築の現場に数多く携わってきた経歴を持つ。今回紹介したセッションも、中山氏のそんな経験から得た多くのトラブルや相談事例や培った知識をもとに、「できるだけ、ユーザーや管理に携わる人に近い実務的な内容で、知っておいてほしい無線LANの基礎知識や正しい理解を届けたい」との思いがあるという。

「こうした無線LANの基本事項を多くの方に知っていただくことで、将来的にトラブルに対する、問い合わせが減ることにつながるため、弊社としてもメリットが大きいと考えています。問題点をイチから切り分けするよりは、ユーザーさんに先に潰せることは潰しておいていただけるほうが、解決や対応も早くなります。営業部門が担当すると、どうしても自社製品のアピールになりがちですが、業務システムであったり、ネットワーク管理であったりできるだけ現場の担当者が楽になるように、そもそも無線LANとは何なのか? といった基本的なところから、知識や理解を高めていただきたいと思っています。業務向けに事業を展開する弊社の場合、パートナー企業さんにご説明するということはあっても、ユーザーさんに直接という機会はあまりなかったので、こうしたウェビナーの開催は有意義に感じています」(中山氏)

  • 株式会社フルノシステムズ 営業技術部 西日本営業技術課 技術主任 中山 裕隆氏2

フルノシステムズでは、中山氏も登壇する無線LANに関するウェビナーを定期的に開催しており、業務用無線LANの導入や構築を検討している担当者、運用にお悩みを持つ担当者に向け、さまざまなプログラムを鋭意企画中とのことだ。会期や内容についてはフルノシステムズのホームページで随時公開されるので、興味のある方は、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。


◇フルノシステムズが開催する無線LANウェビナー
https://www.furunosystems.info/meetupwifi/

[PR]提供:フルノシステムズ