日本では、生産年齢人口の減少を受け、ワークライフバランスやダイバーシティを重視することで、企業の生産性を向上させる「働き方改革」の推進が求められていた。だがそんな取り組みの中、新型コロナウイルスが流行。世界中でテレワークの実施を余儀なくされ、日本政府も感染の流行を早期に収束させるため、企業に対しテレワークを強く要請する事態となった。

だが、そもそもテレワーク環境が整っていない企業はまだまだ多い。事実、日本では大企業を除き、テレワークへの移行が思いのほか進んでいない。そもそも働き方改革とはどういうものなのか。テレワークを実現するために中小・中堅企業(SMB)は具体的にどのような取り組みを行わなければならないのだろうか。ITによるワークスタイル変革を主導する、日本マイクロソフト エバンジェリスト・業務執行役員の西脇資哲氏に伺った。

  • 日本マイクロソフト エバンジェリスト・業務執行役員 西脇資哲氏

    日本マイクロソフト エバンジェリスト・業務執行役員 西脇資哲氏

西脇氏は「働き方改革」をどう捉えているか

西脇氏の職務は、マイクロソフトに関する理解を深める活動を行っているエバンジェリストだ。だが実際にはマイクロソフトの製品やサービス以外の業務も多く、人工知能(AI)や自動運転、ドローンに関する講演や、プレゼンテーションのトレーナーなど、多様なシーンでさまざまな活動を行っている。

西脇氏は最初に「働き方改革を"目的"にしないでください。そもそも働き方改革は、生産性向上や豊かな暮らし、自己実現、収入増加、労働力(雇用)確保などを実現するための手段に過ぎません」と語った。そして、経営陣はまず「働き方改革を行うことによって何が達成できるのか」を議論することが必要だと強調する。

「働き方改革が進めば、定年を迎えた方や車いすの方など、さまざまな事情を持った方が一緒に働けるようになります。例えば高校生が授業を終えた後に、部活動の一環として就労してもいいんです。多様な人たちが集って、多様な力を使いながら日本の社会を良くしていく、このような環境を実現していかなくてはなりません」

テレワークに必要なハードやサービスとは

西脇氏は、働き方改革としてのテレワークを実現するために必要な、制度面、ハード面、サービス面について言及する。

「制度面から話しますと、まず私が絶対にやってほしくないと思うのは『あの人はテレワーク環境にいるね』『あの人はリモートワークで働いている人だね』という"特別感"を持たせてしまうことです。テレワークという制度は、全従業員のためのものなんです。経営陣には『従業員全員が、いつでもどこでもどんなデバイスを使ってもテレワークで仕事ができる制度』という考え方をしてほしいと思っていて、そうでなくてはテレワークを活かせないと考えています」

これまでの在宅勤務といえば、「育児のため」「介護のため」といった特段の理由がある人に向けられた制度であり、大変な人、苦労している人のための仕組みという印象が強かった。このように一部の人を切り出して「これがテレワーク」と言ってしまうようでは、これまでとなんら変わりがない。全従業員が当たり前にテレワークを使えるようになっていることが大事で、「"全員がテレワーク"で"たまたま会社に行っている人がいる"」、このような制度にしていかなければならないと西脇氏は語る。

「この前提を踏まえると、テレワークを実現するためのIT環境も見えてきます。ハードウェアでは、PCというデバイスは必須でしょう。私はスマートフォンやタブレットで会議をしてもいいと思っていますが、これらの端末はコミュニケーションには向いている一方で、生産活動を行うのは難しいんですね」

西脇氏は、テレワークで第一に求められるものとして「Webカメラやマイクを備え、いつでもネットワークにつながる"always on"な軽量PC」を挙げる。そして「いつでもどこでもサクッと仕事をし、いつでも中断でき再開できることが重要」と付け加えた。Lenovoであれば、「ThinkPad X1 Carbon」などが好適な製品になるだろう。

  • ThinkPad X1 Carbon (2019)

    ThinkPad X1 Carbon (2019)

続いて、求められるサービスについて語った。テレワークでは、コミュニケーションをして生産活動をして、いったんオフになって、もう一度オンになってという繰り返しをセキュアな環境で実現しなければならない。そのために、例えば「Zoom」「Slack」「BOX」などのサービスが必要になる。

「これを実現するためのサービスとして、マイクロソフトには『Teams』があります。仕事ではメールも見ますしチャットもします。また、資料作成もプレゼンもしなくてはなりません。これらすべてを統合したサービスでなければ、テレワークは非常にしんどいものになるでしょう。すべての作業を自分のPCで行わなくてはならないからです。またサービスにつながらなかった時に備え、セカンドラインとして、ほかのサービスを確保することも大切です」

またPC以外にあったほうがいい周辺機器として、西脇氏は次の3つのアイテムを挙げ、該当するLenovo製品を紹介した。

1つ目は、ヘッドセットに相当するマイクやスピーカー機器。PCに内蔵されたものを利用すると、仕事の会話に生活音が混じる、仕事の会話が家庭内に聞こえる、といった状況が生じ、仕事と生活の境目が曖昧になってしまう。通話音質やハウリングの問題もあるため、可能であれば専用のヘッドセットなどを用いるのが望ましい。ワンタッチでミュートにできるとなおいいだろう。もちろん、会社には会議用のカメラ・スピーカーが必要だ。

  • ThinkPad X1 アクティブ ノイズキャンセレーションヘッドホン

    ThinkPad X1 アクティブ ノイズキャンセレーションヘッドホン

  • Lenovo VoIP 360 カメラ スピーカー

    Lenovo VoIP 360 カメラ スピーカー

2つ目は、セカンドモニター。会社では仕事専用の机があり作業スペースも広いが、生活空間・公共空間を共有するテレワークでは制限が大きい。だが、代わりにPC上に大きな作業スペースを確保できれば仕事の効率は大きくアップする。昨今はケーブル1本で給電と画面出力に対応するモバイルモニターが普及し始めており、家庭内のどこであってもセカンドモニター環境を実現できるだろう。

  • ThinkVision M14

    ThinkVision M14

3つ目は、USB Type-C環境。ノートPCがUSB Type-Cで充電できれば、大きな専用のACアダプターを持ち運ばなくても仕事を行うことができるし、前述したセカンドモニターを始めとしたさまざまな周辺機器との接続や、モバイルバッテリーでの充電も行える。またスマートフォンとの充電や情報の連携もしやすくなるだろう。

  • Lenovo 45W USB Type-C ウルトラポータブルACアダプター

    Lenovo 45W USB Type-C ウルトラポータブルACアダプター

  • Lenovo USB Type-C ノートブックパワーバンク(14000mAh)

    Lenovo USB Type-C ノートブックパワーバンク(14000mAh)

  • Lenovo USB Type-C トラベルハブ 2(USB Type-C給電ポート搭載)

    Lenovo USB Type-C トラベルハブ 2(USB Type-C給電ポート搭載)

SMBがテレワークを実現するためには

実際にSMBがテレワークを実施するには、大きく3つのハードルがある。

1つ目は費用。大企業と違いSMBには資金的な限界があり、テレワークのためにハードウェア環境を整えるハードルは高い。だが現在では、SMBを主な対象としたさまざまなテレワーク助成制度が創設されている。

例えば厚生労働省は「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)」、経済産業省は「IT導入補助金」、総務省は「情報通信技術利活用事業費補助金(地域IoT実装推進事業)」といった施策を始めており、助成金や補助金の支給を行っている。また新型コロナウイルスの影響を受け、厚生労働省は追加で「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」を創設。SMBのテレワークへの取り組みを支援している。

2つ目はコミュニケーションの取り方。SMBは人と人とのコミュニケーションに支えられている部分が大きく、会社に集まることが大企業以上に重要だ。この家族経営的な文化が分断されてしまうと、テレワーク自体に否定的な思いを抱いてしまいかねない。制度を全体に広げることを前提に置き、従業員のマインドを変えていかなければならない。

3つ目は評価制度。会社に通勤するというこれまでの働き方では、出社/退社時間という労働を確認する制度があった。しかしテレワークではそれが存在せず、労働を確認するものはネットワークと成果物になる。そしてオンとオフの境界があいまいになるため、先のコミュニケーション不足にもつながってしまう。これを防ぐためには、例えば「朝や夜の決まった時間に、必ずチャットであいさつする」といった工夫が必要になるだろう。健康管理の会話もより積極的に行い、お互いの状態を把握していかなければならない。

そして西脇氏は、絶対にやってはいけないこととして「テレワークを何時に始めたかを記録をするシステム作り」を挙げた。

「テレワークが始まったら、何時に働こうが自由なんですよ。ある人はお弁当を作らないといけないし、ある人は介護をしないといけない。そんな行動のたびに、いちいち記録して労働時間を縛ってしまっては意味がない。そんなことはやめて『今日はこんなお弁当を作りました!』とチャットで言って仕事を始めるほうがいいんですよ。生活の中に仕事が入ってくるので、それを意識した会話をしなくてはいけないと思います」

新型コロナウイルスの影響とテレワーク、ITエンジニアの関わり

新型コロナウイルスによって、今、日本中がテレワークを始めている。西脇氏は「これを一過性のものにしないでほしい」と強く語る。

「テレワークのためにハードも制度も評価も変えるし、新しいサービスも契約すると思いますが、これは新型コロナウイルスへの対策でやっていると考えてほしくないんです。テレワークは、生産性向上や豊かな暮らしを実現するためにやるものです。9年前の東日本大震災で在宅勤務が行われましたが、いつのまにか会社に集まって仕事をする形に戻ってしまいました。新型コロナウイルスはテレワークのきっかけになりましたが、今度は一過性のものにせず、働き方改革として定着するような活動にしてほしいなと思います」

またITに携わる人を「働き方改革を先導できる人たち」と呼び、テレワークに関わるであろうITエンジニアへメッセージを送った。

「今後の働き方改革はテレワークを中心に動いていくと思いますので、ネットワークの充実によって社会が新しいことを実現しなければならない時代になるでしょう。働き方改革に触れていると、ITでできることの幅はもっともっとあるということに気付かされます。働き方改革では、これまでの『できて当たり前』と評価される仕事とは異なり、さまざまな方の幸せを応援することができます。ぜひテレワークに関する業務に関わり、そういった方からいただける感謝に気付いてほしいなと思います」

<プロフィール>

西脇 資哲 氏
日本マイクロソフト
エバンジェリスト・業務執行役員

マイクロソフトにて多くの製品・サービスを伝えるエバンジェリスト。1990年代から企業システム、データベース、Java、インターネットのビジネスに関与し、1996年から約13年間、オラクルにてエバンジェリストとして従事。その後、2009年にマイクロソフトにてエバンジェリスト活動を継続。著書に『プレゼンは「目線」で決まる』、『新エバンジェリスト養成講座』など。

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