江戸時代中期以降に木工が盛んとなり、明治時代には全国的に家具産地の町として知られるようになった福岡県大川市。この地で1964年に婚礼家具メーカーとしてスタートしたタンスのゲン株式会社(創業当時の社名は有限会社九州工芸)は、2002年からインターネット通販を始め、その後インターネット専売に体制を変更。現在は自社サイトのほか、楽天やAmazon、Yahoo!ショッピングなどでECサイトを14店舗運営し、ECサイトを対象とした各賞も数多く受賞している。

  • タンスのゲン株式会社

    タンスのゲン株式会社

古いシステムでは複数のECサイトの管理と実在庫の把握が困難に

複数のECサイトを運営する場合、顧客層によって提供する商品は当然異なってくる。そこでタンスのゲンでは、「受注管理」、「在庫管理」、「発送業務」をECサイトごとに個別に管理していた。そのため、この管理業務に手間と時間がかかってしまうという悩みを抱えていた。

さらに、複数の倉庫にある実在庫も倉庫ごとに管理していたため、注文数と在庫数を把握することが困難になっていたという。

タンスのゲン株式会社 常務取締役 橋爪裕和氏

タンスのゲン株式会社 常務取締役 橋爪裕和氏

「当社が扱う寝具、収納用品、インテリア品や家具などは、3,000アイテム以上あり、納品サイズも異なるため常に適切な配送方法などが変動します。例えば、在庫のある倉庫の場所や、お客様へ配送可能な運送会社に応じてその料金が常に流動的になるのです。しかもこうした管理を以前はExcelで行っていたため、管理が煩雑化し時間を要してしまっていたのです」と、タンスのゲン 常務取締役の橋爪裕和氏は当時の課題を振り返る。

こうした手作業による管理からの脱却を目指し、システムによる自動化を検討していた際に白羽の矢が立ったのが、ビジネスに最適なカスタム App (カスタムアプリケーション) を作成できる開発・展開ツール「FileMaker プラットフォーム」だった。

FileMakerのパッケージソリューションを業務全般で活用

タンスのゲンの業務を支えているシステムが、FileMaker プラットフォームで構築されたパッケージソリューションの「GOURY(ゴーリー)」だ。GOURYは複数のECサイトを一元管理し、受注業務を合理化するための多くの機能を備える受注管理ソフトだ。

タンスのゲンでは、14種類のEC店舗からの注文を、すべて同社のカスタマーサポート部門に集約する仕組みを取っている。そこでGOURYを活用し、顧客には注文確認のメールを送信、九州と関東にある計8拠点の倉庫に対しては出荷の指示を出す。商品の入庫や出庫、在庫の情報もGOURYで管理し、こうしたデータは商品開発や仕入れ、販売戦略にも活用している。さらに、倉庫では月に1回、iPad上のFileMaker GoでGOURYのデータを見ながら棚卸も実施している。

  • カスタマーサポートの様子:3~4人で1日あたり1

    カスタマーサポートの様子:3~4人で1日あたり1,500~2,000件の受注に対応している

  • 倉庫では月に1回、iPad上のFileMaker GoでGOURYのデータを見ながら棚卸を実施

    倉庫では月に1回、iPad上のFileMaker GoでGOURYのデータを見ながら棚卸を実施

お客様を大切に思う気持ちが発展してカスタマーサポート担当からシステム開発部へ

GOURY を導入したのは2010年。当初はECサイトの注文データをCSV形式でGOURYに直接インポートしていた。しかし現在は、楽天とAmazonからの注文はFileMaker からREST APIを利用して自動でデータ取得をできるようにしているという。

タンスのゲン株式会社 システム開発部 江頭恭子氏

タンスのゲン株式会社 システム開発部 江頭恭子氏

同社のシステム開発部に所属する江頭恭子氏は「私は長年、カスタマーサポートを担当していたのですが、当時はCSV形式の受注データを手作業でインポートする必要があり、その業務に数時間もかかっていました。特に、週末の受注データは月曜日にインポートし、一般のメールソフトを使ってお客様へ回答していたため、返信まで数日かかることもありました。今ではAPIを利用することで、週末でも夜中でもリアルタイムにデータを取得できるので、お客様をお待たせすることなく迅速に対応できるようになりました」とその効果を語る。

江頭氏は、カスタマーサポート部門に所属していた時から積極的にシステム改善要望を伝えていたが、顧客を大切にしたいという想いが強まった結果、開発未経験ながらシステム部門へ異動になったという異例の経歴を持つ。また同氏は、カスタマーサポートの経験を活かして顧客宛の受注確認メールの自動化にも取り組んだ。

「お客様が選択した支払い方法や配送の指定など、多くの条件に基づいて、約300通りの文面をGOURY内にメール返信テンプレートとして用意しています。そしてその中から、最適なものが自動で選択されるようになっています。例えば、午後3時までに東京のお客様からご注文頂いたマットレスが、翌日配送できるかなどの判断を個別に調べてメールに記載するのではなく、運送会社の条件と在庫のデータから自動判断して適切なテンプレートが選択されます。自動判別できるテンプレートによりお客様一人ひとりに親切、丁寧、迅速で、わかりやすいメールを送信できるようになりました。しかも、スタッフが各自のメールソフトを使うのとは異なり、全員でメールを共有でき、お客様への対応に遅れが出ないという利点もあります」(江頭氏)

在庫や配送条件をもとに倉庫への指示も自動化

タンスのゲンでは、過去に運送会社を特定の企業に委託していたところ、2011年の東日本大震災の時、物流が混乱し、出荷制限が入ったため九州外へ商品が出荷できなくなる状況に陥ったことがあったという。また2017年以降は、運輸業界の人手不足から配送料の値上げや出荷個数の制限なども発生。こうした状況から同社では、取引する運送会社を増やし、関東にも出荷拠点を置く対策を行ってきた。

「どの倉庫から、どの運送会社で送れば、より早く、配送料を抑えてお客様にお届けできるかを、注文ごとに判断する必要がありました。倉庫の在庫に加え、運送会社が引き受けてくれる数や梱包サイズ、配達エリアなど、考慮すべき条件が多いので、商品SKUごとに優先拠点とその拠点の在庫予測を考慮し、GOURY側で自動判別することにしたのです。自社の倉庫のみならず、Amazon FBA(フルフィルメント)での受注管理と併せて、全体を把握しようとすると、人間では見落としや漏れが生じる可能性もありますし、時間がかかりすぎることも課題でした」(橋爪氏)

GOURY開発者 山本哲也氏

GOURY開発者 山本哲也氏

FileMakerプラットフォームを活用してGOURYを開発・販売し、こうした要望に応じて適切なバージョンアップをしている山本哲也氏は「このような自動判定をできるようにするのは非常に大変でした。しかし配送の選択によっては、1件あたりの配送料が1,000円、あるいは2,000円も違うこともあるので、すぐに対応する必要がありました」と強調する。

実は山本氏自身は、ECサイトの会社を経営したことがあり、「お客様に安心して買い物をしてもらいたい」と、タンスのゲンに寄り添いながらからGOURYのさまざまなバージョンアップに頻繁に取り組んでいるそうだ。

お客様のために時間を使い、状況の変化に対応する

GOURYの導入によりタンスのゲンでは、受注対応を翌日以降に繰り越すことがなくなり、スタッフの残業が大幅に減ってモチベーションアップにつながったという。さらに、自動化によって顧客一人ひとりに応じた丁寧な対応ができるようになり、顧客からの支持を得られるようになった。

また、複数の倉庫と運送会社の運用を最適化できるなど、その効果は絶大だ。業績にも顕著にあらわれており、同社の2017年度の年商は146億円で、GOURYを導入してからの7年間でおよそ5倍の成長を遂げている。現在は1日平均2,000件ほどの受注をGOURY上で対応しているが、スタッフを増員することなく7年前よりも細やかな顧客対応ができている。

ECサイトの運営は出荷数に比例して従業員を増やすと利益を圧迫し、結果として顧客への提供価格が変わってくる。顧客第一主義のシステム投資を行うことで支持に繋がり、それが成長の源泉となっている。

「このように、業務全般でGOURYを使用し、社会環境の変化や会社の状況にあわせてその仕組みを常に進化させてきました。そのため、GOURYとともに会社が成長してきたと言っても過言ではありません。システムにできることはシステムにやってもらい、スタッフはお客様のためにできることをするのが大切だと思います。システムを使うことでお客様に向き合って仕事をする時間ができ、結果としてお客様からの信頼を勝ち得たことで、実績へとつながったのです。また、手作業にかかる時間がなくなった分、考える時間を創出することもできました。お客様への対応が充実することで、スタッフは自分の役割を認識できますしモチベーションも上がります」(江頭氏)

さらに橋爪氏は、商品自体の魅力や付加価値を上げるために、企業努力を重ねるのは当然だとしたうえで「お客様のために何ができるかを常に考えています。業務を効率化した分、お客様にファンになっていただく、リピーターになっていただくために、時間を使えるようにしています」と、お客様を大切にする姿勢を持ち続けている。

ただモノを売る会社ではなく、「暮らしの未来を、デザインする。」という企業理念のもと、成長し続けているタンスのゲン。FileMaker プラットフォームは、今後もその成長を支える縁の下の力持ちとなっていくことだろう。

[PR]提供:ファイルメーカー