2017年に日本語版がリリースされた「Slack」は、業務用SaaSの中で最も早く普及が進んでいるツールである。使いやすいビジネスチャットツールとして知られているが、それはSlackの本質ではない。本稿では、なぜSlackが世界に支持され、働き方を“変革”できるのか、その真価を紹介しよう。
なぜSlackを選ぶのか?
2018年10月、サンフランシスコで開催された「Oracle OpenWorld 2018」で、オラクルの共同設立者であり、会長兼CTOであるラリー・エリソン氏はこんなデモンストレーションでおどけてみせた。
iPadで高級レストランの領収書を写真で撮る。すると内容と金額が自動的に読み取られて、経費精算の申請画面が表示される。あとはワンタッチで申請が完了――と思ったらシステムに「値段が高すぎませんか?」と指摘されて苦笑い。
驚くべきは、世界的なシステムベンダー大手のオラクルによるデモだったにもかかわらず、このとき聴衆に見せたのは他社のソフトウェアだったことだ。オラクルの経費精算ソフトと連動していたのは、ビジネスチャットツールとして知られるSlackである。
Slackの日本での知名度は決して高いとは言えない。しかし、アメリカでは21世紀フォックスやNASA、スタンフォード大学、国務省まで、ドイツのビジネスソフトウェア世界的大手であるSAPや、フランスの最大手ファッション企業体LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンも社内にこのツールを導入している。ITリテラシーの高くない業界にも広く普及が進んでいるのが特徴だ。またオラクルにおいては、自社開発した製品があったにも関わらずSlackに乗り換えたという。
Slackは業務用のSaaSとして「順調に」ユーザー数および売上げが増加しているという。今や1日あたりのアクティブユーザー数は1,000万人を超えている。
ビジネスチャットならば他にも選択肢がある。しかし、なぜこれほどまでにSlackは利用され始めているのだろうか。
机に向かう前に職場ですべきことのすべて
全世界で導入が進んでいるわけを理解するためには、「Slackはビジネスチャットである」という認識をいったん忘れたほうがいい。では、Slackとはいったい何なのか。
すべてのPCの起動画面は「デスクトップ」という名前の通り、「机の上」というメタファーによって成り立っている。机に書類を広げてレポートを記述したり、電卓を叩いて計算したり、写真や図版を切り貼りして資料をまとめたりと、こうした作業をデジタルに置き換えたのがPCだ。
しかし、私たちはいきなり机に向かって仕事を始めるだろうか? 出社して挨拶をする。朝礼をする。分からないことを同僚に聞く。椅子を移動させてショートミーティングをする。会議室でプロジェクトの目的と各自の状況を確認する。的外れな作業をしたくないのであれば、やるべき仕事に集中したければ、なによりもまず職場でコミュニケーションを交わすだろう。
Slackとはこの「職場」である。まずはSlackでコミュニケーションを交わし、報告や指標、文書やグラフやソースコードをチェックする。動画やプログラムもツール内で再生可能だ。作業用のアプリケーションを立ち上げるのは、情報を共有した後でいい。
デスクトップ上に新しいツールを増やすのではなく、デスクトップに代わる「仕事の入り口」、「業務の基盤」、「職場のOS」がSlackなのだ。
社内の対話を見える化する
かつてのインターネットチャット「IRC」を知っていると、Slackはイメージしやすいかもしれない。「部門アナウンス」や「成果報告」「進行中のプロジェクト」「趣味」といったチャンネルを複数開設して、テーマごとに言葉を交わし、そのやり取りを公開できる。
「経営指標確認」「経営層に直接質問コーナー」「成果・ノウハウ共有」などのチャンネルを開設することで、わざわざ別のツールを覗きにいかずとも、すべてSlack上で情報を共有できる。メールとの最も大きな違いは、受信トレイが1つではなく、チャンネルごとにトピックが分かれている点だ。重要な案件のメールがスパムや雑談で流されることがない。
チャットツールとしても「直感的な」ユーザービリティの高さによって支持されているSlackだが、その最大の特徴は他システムとの連携にある。APIが公開されており、既製品と連携したり、Slack上に新たな仕組みを構築することが可能なのだ。冒頭で紹介したオラクルのデモも、その一例である。
導入して感謝されるツール
発注や稟議のワークフローをすべてSlackで完結させているのが、ディー・エヌ・エー(DeNA)だ。
もともと同社は承認フローにメールを使っていた。承認依頼のリンクがメールで届いたら、そこから財務会計システムにログインして、承認手続きをする。そのため複数のツールをまたぐ必要があったのだ。
しかし現在は、申請者はSlack上で手続きをし、権限者は「承認」のボタンを押すだけでフローが完結する。さらに未承認案件をリスト表示したり、自動でリマインドしてくれる機能なども組み込んでいる。
ディー・エヌ・エー 経営企画本部 IT戦略部 部長の成田敏博氏は、「『このツールを導入してくれてありがとう』と何回もお礼をもらいました。新しいシステムを入れて、社内からこんな反応があったのは初めてです」と、Slackを賞賛している。
仕事が“早く”“楽に”進む
日本の労働生産性は低いと言われ続けている。日本生産性本部の発表によると、2017年における日本の1時間当たりの労働生産性は47.5ドルで、先進7カ国(G7)中では最下位だった。一位はアメリカの72.0ドルで、日本の1.5倍以上となっている。
ミーティングのためのミーティング。ルーティンワークのためのルーティンワーク。経営層と現場のコミュニケーション不足。部門間で情報を隠して連携しない。署名捺印が必須の書類処理。長時間労働の称揚。完璧主義。生産性が低い理由は、実感をともなっていくらでも思いつくだろう。
新たなルールを課すだけでは、新たなツールを増やすだけでは、生産性は向上しない。ただでさえ散らかったPCという机の上に、道具を増やしたところで解決にはならない。必要なのは、“職場”というシステムの見直しだ。
Slack社が2015年におこなったアンケートでは、Slackの導入によって、メールの量が48.6%、ミーティングの回数が25.1%減った事が分かった。そして、平均で生産性が32.0%向上したという。仕事が“早く”“楽に”進む、これがSlackの真髄でもあるのだ。
生産向上に歓びを
もちろん、Slackを導入したからといってすぐに生産性が向上するわけではない。「社内のカルチャーも変えていく必要がある」と、Slack Japanのシニアテクノロジーストラテジストの溝口宗太郎氏は言う。
「発言の公開を恥ずかしがって鍵付きのチャンネルを乱立させては、メールやその他のチャットツールと変わりません。まずはオープンなコミュニケーションに対する意識を持つ必要があります」(溝口氏)
困っていることが分かるからこそ、助け船を出せる。思いつきを目にしたからこそ、具体化しようと考えが湧く。情報が見えてくることは、自発的な動きに繋がり、「自走する組織」となるための第一歩だ。
そしてそのヒントは、Slack社におけるSlack活用にも隠されている。助け合う組織、賞賛する組織、こうした“カルチャー”がまだまだ国内の企業には足りていないと溝口氏は指摘する。
「弊社では、全世界の社員が共通して閲覧できる活動報告や、業種に応じたチャンネルなど、業務や用途に応じて成果やノウハウを共有できる環境を整えています。必要な情報があれば検索して閲覧することができますし、分からないことがあれば直接確認することもできます。そして、感謝や賞賛のコメント、絵文字・リアク字 (= 絵文字で投稿にリアクションする) を送ることで、発信側もまた積極的に情報を共有してくれます。こうしたカルチャーが根付くことで、自走する組織となりビジネスが軌道にのっていきます」
ごく短時間で情報を共有して、やるべきことに夢中になる。成果を上げたら報告をして、みんなから拍手をもらう。Slack社ではこのようにSlackを有効活用し、ビジネスを発展させている。
「最後に、Slackを利用することで『生産性を上げることがこんなにも楽しい』それをぜひ皆さんには知っていただきたいです」(溝口氏)
SlackのHPはこちら
https://slack.com/intl/ja-jp/
Slackの導入事例はこちら
https://slack.com/intl/ja-jp/customer-stories
[PR]提供:Slack Japan