9月27日、エグゼクティブ向けのセミナー「Dell EMC Executive Seminar 2018」が、ザ・ペニンシュラ東京にて開催された。「今こそ求められる、情報システムにおける『チームマネジメント』とは」というテーマを掲げたセミナーの基調講演に登壇したのは、箱根駅伝で圧倒的な実績を収め続けている東洋大学 陸上競技部 長距離部門監督の酒井俊幸氏だ。
箱根駅伝3度の優勝を達成した、攻守に強い組織づくりの秘訣をテーマに「その一秒をけずりだせ 勝つためにしていること」と題した同氏の講演では、箱根駅伝を通じた酒井氏流のチーム育成と人材育成について、具体的な取り組みを交えて紹介された。
優勝できるチームとなるために欠かせないビジョンの共有
酒井氏率いる東洋大学の陸上長距離チームは、箱根駅伝においてこの10年間で4回の優勝と5回の準優勝を果たしており、10回すべてで3位以内に入るという圧倒的な成績を収めている。
開口一番、酒井氏は次のように強調した。「強いチームこそ強い組織力がなければ常に優勝争いはできません。ただ優秀な選手だけを集めても強いチームになるわけではなく、『チームマネジメント』こそが必要不可欠です。学生の質も変化するなかで、どのようにチームマネジメントを実践していくかが鍵となります」
東洋大学の監督に就任して今年で10年目を迎える酒井氏だが、箱根駅伝でしのぎを削る各チームの戦略なども年々高度化しており、優勝するにはしっかりとした戦略やビジョンが欠かせなくなっているという。第87回の大会ではわずか21秒差で早稲田大学に遅れを取り、三連覇を逃し準優勝となったが、この時のタイムは両校とも大会新記録だった。
「この悔しい経験を次のチームづくりのビジョンに役立てなければいけないと、選手たちと涙を流しながら話したのを今でも憶えています」と酒井氏は当時を振り返った。
そうして掲げたチームスローガンが、「その1秒をけずりだせ」である。選手を鼓舞するためにも、1秒というわずかな時間をチーム全体で共有できるよう「けずりだす」という表現を使ったのだという。
早稲田大学などの伝統的強豪校には、インターハイの実績がないと入部できないのに対して、東洋大学にはそうした実績を持たない選手も多数入部してくるという。そうした状況から「弱小チームの逆襲」と表現した酒井氏は、それでも優勝できるチームをつくるために、「体と心の自己理解」「食育活動」の2つを柱に据えたのである。そのうえで、東洋大学の流儀として重んじているのが以下の4項目だ。
- チームスローガンをつくる
- チームカラーをつくる
- チームの走りをつくる
- チームの文化をつくる
「たとえ3位以内も難しいというチーム状況であっても優勝を目指さなければいけません。それは、勝ちにこだわると、すべてのレベルが上がっていくからです。そこを譲らないためにも、チームスローガンを掲げ、チームカラーを共有し、チームの走りを生み出し、そしてチームの文化をつくることが必要だと考えています」(酒井氏)
そんな東洋大学が、今年度のテーマ(スローガン)として掲げるのが「鉄紺の真価でくつがえせ」だ。真価とは「東洋らしさ」であり、これまでに経験した悔しい思いをくつがえしていこうというチームとしての意思が込められているのである。
「どんな選手にでも、故障や体調不良、そしてスランプはあります。そうしたなか、チームとして『優勝しなくてはならない』という意思が共有できるようになると、全体のベースが上がってきます」
このように語る酒井氏は、「競技や集団生活を通じた心身の成長」を常に心がけているという。
「箱根駅伝で優勝を目指すのももちろん大事ですが、学生スポーツとして心をつくることや、身体をつくることも、とても重要です。チームマネジメントを通じて、『組織の中で自分が何をできるのか』ということを考えたとき、感謝の意をきちんと伝えることなど、まず心をつくるのが大事であるという結論にいたりました」
また組織づくりにおいて酒井氏は、チームの戦略と方針を主要選手以外にも浸透させ、「チームの一員」という実感を持ってもらえるよう、声がけをすることを心がけているという。そのためにも、すべての選手を日頃からしっかりと見ているのである。
「陰日向のない努力の積み重ねをしっかり評価できるチームでありたい。そして選手たちがいずれ社会人とし通用する力を、箱根駅伝を通じてつくっていきたい」──そう酒井氏は強調して講演を締めくくった。
顧客との対話こそが強みに
続いてデルの上席執行役員 広域営業統括本部長 清水博氏が、『「成長企業のための「9つの打ち手+α」』と題し、情報システム部門のパフォーマンス改善の一助となる講演を行った。
日経コンピュータが実施した最新の顧客満足度調査において、デルは「デスクトップPC」「ストレージ」「ノートPC」の3部門でトップに輝いており、「PCサーバ」部門においても3位という好結果を収めている。そうした人気の秘密の1つは、手厚いカスタマーサポートにあると言える。デルでは法人顧客については全て、宮崎カスタマーセンターと川崎本社にあるグローバルコマンドセンターといった、国内から日本人が対応しているのである。なかでも清水氏が率いる広域営業統括本部は、中規模・大企業営業担当部署として日本で24年の歴史を誇り、日本の企業数約400万社のうち上位1.1%を担当し、市場シェアも18ヶ月連続で伸び続けている。
「日本のIT業界において、中堅企業をサポートする組織としては最大規模でしょう。そんな我々の強みは、お客様との対話がビジネスの根源となっている点にあると自負しています。こうした姿勢は、創業者であるマイケル・デル氏のポリシーを体現したものでもあります」と、清水氏は力説した。
続いて清水氏は、日本の中堅企業が抱える「ひとり情シス問題」について言及した。2018年に同社が行った「中堅企業IT投資動向調査」では、“ひとり情シス”が14%、専任担当者なしの“ゼロ情シス”が17%と、前年度調査よりさらに深刻化していることが明らかになった。また、IT人材の数が“1名”ではないものの、その実態は“ひとり情シス”と変わらないような企業の存在も判明している。
また、中堅企業の30.2%が直近3年間にセキュリティ事故の被害を受けている状況であるのにたいし、IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」に準拠している企業はわずか4%という結果も出ている。
このようなIT人材不足という背景から、清水氏は「ひとり情シス」に関して積極的な発信を続けており、この7月には「ひとり情シス」というタイトルの書籍を上梓し、8月末にはベストセラーに輝いている。この本は、清水氏が1,000人近くもの「ひとり情シス」と対話し続けてきた経験から生まれたものであり、IT人材不足時代への提言書となっている。
「企業としても個人としても、こうした情報発信は現状を理解してもらうためにも重要なこととらえています。具体的な当社のソリューションについては、次のセッションでお伝えさせていただきますが、自社の情報システム部門の組織づくりや運用・管理にておいて、少しでも課題を感じている方は、ぜひお力添えさせていただければと思います」──会場に向け清水氏はこう呼び掛けて壇を後にした。
成長企業のための「9つの打ち手+α」とは
清水氏の講演を受けて、デル 広域営業統括本部 デジタルセールス本部長の木村佳博氏が、IT投資動向調査に基づいた課題の対策となる、情報システム部門のパフォーマンス改善を実現するための具体的なソリューションを紹介した。
デルでは、ひとり情シスが業務を行ううえでの環境変化を次のように位置づけ、それぞれに適したソリューションを提供している。なかでも、2017年より「9つの打ち手」として展開しているのが、「守」と「攻」にあたるソリューションだ。(「防」「走」は後述)
守:事前導入/予防による負荷低減、トラブル対応の仕組み化、経営課題解決のコミュニティ活用
攻:管理の自動化/シンプル化、コア業務内製化によるスキルアップ、ITと経営の一体化
走:働き方改革の具体的施策に伴うIT活用のニーズ
【成長企業のための「9つの打ち手」】
- 1 クローニング支援(PC可視化メニュー)
- 2 自動故障通知(クライアントサポートアシスト)
- 3 VDI+セルフポータル化(クラウドナレッジ共有)
- 4 クラウドDRとデータ保護(中堅企業向けバックアップソリューション)
- 5 セミナー・ユーザー情報会(ひとり情シス大会議)
- 6 HCI+ハイブリッドクラウド(Mini HCIソリューションの拡大)
- 7 シンプルなユニファイドストレージ(管理データサイロ化を解消するSDS)
- 8 ハイブリッド・レディメイド(中堅企業向けクラウドサービス)
- 9 ITコンシェルジュ(クラウドコンシェルジュ)
こうして事前導入/予防による負荷低減やトラブル対応の仕組み化などの「守りのIT」、管理の自動化/シンプル化、ITと経営の一体化などを支援する「攻めのIT」に大別されるソリューションを提供しており、既に様々な企業で実績を積んでいる。
さらにデルでは、これら「守」と「攻」における「9つの打ち手」に加えて新たに、「防」と「走」における「+α」のメニューを追加しており、支援の幅を一層強化している。「防」においては、“予防”を目的とした、CSIRTによるセキュリティ事故発生後のプロセス整備やIPAのセキュリティワークショップの開催、「走」においては、“伴走”を目的とした、働き方改革支援ソリューションなどだ。
特に「走」のなかでも「ゆりかごから墓場まで」といった、検討、導入、運用、保守、廃棄・更新までの各フェーズにおける情報を一元管理するソリューションは、IT人材不足に悩むひとり情シスにとっては大きなミカタと言える存在かもしれない。
最後に木村氏は、「防・守・攻・走、あらゆるフェーズでお客様をご支援できるソリューションを用意しておりますので、IT担当者がよりコアな業務に集中していただけるよう、これからも具体的な対策を通じてお手伝いしていきたいと思います」と力説し、講演を締めくくった。
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