オープンソースの自律型AIエージェントの「OpenClaw」が世界中で話題になっています。LINEやSlack、Discordなどのチャットから自宅のマシンをリモート操作できるのが特徴です。今回は自宅のRaspberry PiにOpenClawをインストールして、スマホから指示を出して簡単なプログラムを作成させてみましょう。
OpenClawとは何か?
OpenClawは、2025年11月にスタートしたばかりの、オープンソースの自律型AIエージェントですが、GitHubで爆発的な人気を博し、わずか5ヶ月でスター数34万を集めました。
OpenClawを使うと、自宅のPC端末をLINEやSlack、Discordなどのチャットからリモート操作できます。AIがチャットから受け取った指示を解釈して、端末上でコマンドを実行したり、スキルに基づいて作業を行ったり、プログラムを実行したりできます。
その人気の秘密は、LINEやDiscordなどのアプリから気軽にAIエージェントに指示できるという点です。外出先のスマートフォンから、自宅のPCを操作できるのがポイントです。
例えば、外出先から「デスクトップに置いてあるExcelファイルをメールで送ってほしい」と指示したり、Webサイトで最新の情報を検索して、その内容を要約してメールで送ってほしいと指示したり、プログラムを作ってその場で実行するなど、さまざまな仕事を依頼できます。
専用マシンを用意して使おう
とは言え、まだまだ発展途上のAIエージェントです。非常に強力なツールであり、急速な普及に伴って、重大なセキュリティ上の脆弱性や被害のリスクが次々と報告されています。
特に問題になったのは、2026年2月に、OpenClawの拡張機能共有サイト「ClawHub」に登録された約1万件のスキルのうち、800件以上(約7%)に悪意のあるコードが含まれていたことが判明したことです。仮想通貨ウォレットの秘密鍵や、ブラウザのクッキーを盗み出すスキルが多数配布されていました。
仕方のないことですが、利便性の裏にはリスクもあるということです。そのため、メインマシンにインストールして使うのは、セキュリティが強化され、潜在的な不具合が修正されてからが良いと思います。
しかし、世界中から注目されている話題のツールを、ぜひ使ってみたいものです。一部で流行っているのは、10万円前後のMac Miniを買って、Appleの便利な機能をAIから使い倒すというものです。実際に、macOSとOpenClawの組合せは、ユーザーが多いようです。とは言え、ちょっと試してみたいという用途で、なかなか10万円を出すのは、ハードルが高いものです。
ラズパイにOpenClawをインストールしてみよう
そこで、オススメなのは、コンパクトで消費電力も低く、それなりの性能を持つRaspberry Pi(以後、ラズパイと略します)にインストールして使う方法です。
ラズパイなら、現行モデルのRaspberry Pi 5の4GBモデルが2万円前後で購入できます。これなら、それほどリスクを気にせず、AIエージェントを試すことができます。Raspberry Pi5には、メモリが2GB/4GB/8GB/16GBのものが用意されていますが、AIエージェントを動かすなら、できれば4GBあると良いでしょう。もちろん、メモリが大きければ大きいほど快適に使えます。
筆者は押し入れに眠っていたRaspberry Pi 4 の4GBを引っ張り出してきて、これにインストールしてみました。スペック的にはギリギリという感じなので、本来はもう少し良いマシンで試したいところはあるのですが、ちょっとした用途に使えています。
押し入れに眠ったラズパイをセットアップしよう
ラズパイをセットアップするには、SDカードの読み書きができるPC(Windows/macOSなど)が必要です。去年の年末に、本連載の姉妹コラムとしてこちらで、ラズパイで監視カメラを作る方法を解説しました。今回は、この監視カメラに、OpenClawをインストールしてみます。コラムを参考にして、ラズパイのセットアップを完了させてみてください。
ラズパイに関する注意なのですが、必ず64bit版のOSをインストールしたものを利用してください。また、しばらく前にOSのセットアップを行ったという方は、改めて、OSイメージの作り直しから試すと、トラブルが少なくなるので、オススメです。最新の環境を用意すると長く使えるものになります。
ラズパイにOpenClawをインストールしよう
それでは、OpenClawをインストールしましょう。インストール自体は簡単です。ターミナルで以下のコマンドを実行するだけです。ラズパイのメニューからターミナルを起動して、下記のコマンドを貼り付けて実行しましょう。
curl -fsSL https://openclaw.ai/install.sh | bash
コマンドを実行すると、Node.js/Python3/Git/各種ビルドツールなどが自動的にインストールされます。そのため、インストールには、それなりの時間がかかります。
OpenClawをセットアップしよう - AIエージェントの設定
インストールが一段落すると、セットアップが始まります。次の画面のように、ターミナルに質問が一つずつ表示されるので、それに答えていきましょう。
最初に、個人用のツールであることを確認するメッセージ「I understand this is personal-by-default and shared/multi-user use requires lock-down. Continue?」と表示されます。矢印キーで「Yes」を選択して[Enter]キーを押しましょう。次に、インストールモードが表示されるので、「QuickStart」を選択します。
その次に、「Model/auth provider」の質問があります。これは、OpenClawの頭脳(AI)に何を使うかを指定する部分です。AIサービスをAPIとして提供している各社から好きなものを選ぶことができます。たくさんのプロバイダーから選択できます。
ここでは、AnthropicやOpenAIを選び、各サービスが提供するAPIキーを入力すると良いでしょう。筆者はOpenAIを選んでAPIキーを設定しました。OpenAIのAPIキーを取得する方法は、こちらで解説しています。そして、モデルには、デフォルトの「openai/gpt-5.4」を指定しました。
OpenClawをセットアップしよう - チャンネルの設定
続いて、チャンネルの設定が必要になります。チャンネルとは、OpenClawが待機する場所です。LINEやSlack、Discordなどのメッセージングアプリのチャンネルを指定します。いろいろなメッセージングアプリが使えますが、今回は、無料でボットの作成ができるDiscordを使ってみましょう。
まずは、Discordのアカウントを作成しておきましょう。次いで、DiscordでOpenClawを使うためのサーバーを作成しましょう。Discordに接続して、画面左側から「+サーバーの追加」をクリックし、「オリジナルの作成 > 自分と友達のため」と進みます。名前を「OpenClaw用」にして、サーバーを作成します。
そして、OpenClawのチャンネルとして使うDiscordサーバーを用意します。こちらのDiscordの開発者ポータルで「ボットを作成」する必要があります。画面上部の右側にある「新しいアプリケーション」のボタンを押して、ボットを作成します。名前を決める必要がありますが、「OpenClawBotPi」などと指定しましょう。
画面左側のメニューから「Bot」を選択して「Privileged Gateway Intents」の部分で次の項目をオンにします。変更したら画面下部の「変更を保存」ボタンを押しましょう。
- Presence Intent
- Server Members Intent
- Message Content Intent
そして、同じ「Bot」の設定画面で「トークンをリセット」のボタンを押します。すると、トークンが表示されるので、これをコピーして覚えておきます。
その後、左側のメニューから「OAuth2」を選んで、「OAuth2 URLジェネレーター」を操作します。いろいろなスコープがありますが、以下の項目を選んでチェックします。
- bot
- applications.commands
続くBotの権限では、以下をチェックします。
- チャンネルを表示(View Channels)
- メッセージを送る(Send Messages)
- メッセージ履歴を読む(Read Message History)
- リンクを埋め込む(Embed Links)
- ファイルを添付(Attach Files)
すると、画面の下部に、「生成されたURL」が表示されるので、このURLにアクセスしましょう。そして、ブラウザでアクセスしたら、先ほど作成した「OpenClaw用」サーバーを選択して、「続行」をクリックします。
ここで、ラズパイのターミナルに戻って、OpenClawのセットアップを続けましょう。
ターミナルの設定「Select Channel」にて、矢印キーで「Discord」を選択して「Enter」キーを押しましょう。次に、Discordのボットトークン(Discord bot token)の入力を求められます。先ほどコピーしたボットのトークン(Bot token)を入力します。そして、「Configure Discord channels access?」を「Yes」に、「Discord channels access」で「Open」を選択します。
OpenClawをセットアップしよう - その他の設定
ラズパイのターミナルに戻ると、「Search provider」の設定になります。これは、検索エンジンとして何を使うかを指定する部分です。今回は無料の「DuckDuckGo」を選択してEnterキーを押しましょう。その後もいろいろな設定が続きます。
- 「Configure skills now?」は、Noを選択します。
- 「Set GOOGLE_PLACES_API_KEY for goplaces?」は、場所検索やルート検索のために使いますが、今回は、Noを選択します。
- 「Set NOTION_API_KEY for notion?」は、ノートアプリのNotionを使うためのAPIです。
- 「Set OPENAI_API_KEY for openai-whisper-api?」には、OpenAIのAPIキーを指定しますが、音声認識(Whisper)を行うための設定です。不要なら「No」を選択しましょう。
- 「Set ELEVENLABS_API_KEY for sag?」は、音声合成を行うためのAPIです。ラズパイにスピーカーを繋いだ場合、音声合成で話すことができます。
- 「Enable hooks?」ですが、これは、コマンドを実行したときに、何を行うのかフックする機能ですが、「Skip for now」にカーソルを合わせてスペースキーを押して有効にして、Enterキーを押します。
正しくインストールされたか確認しよう
その後、「Installing Gateway service….」と表示されて、サービスのインストールが行われて、DiscordからOpenClawと会話ができるようになるはずです。
しかし、筆者が試したバージョン2026.3.28では、ここでエラーが出て失敗してしまいました。調べてみたところ、どうやら、設定は保存されているのですが、肝心の本体がインストールされていないようでした。そのため、改めて、設定画面なしでOpenClawをインストールしました。
curl -fsSL https://openclaw.ai/install.sh | bash -s -- --no-onboard
うまくサービスが登録されたかどうかは、次のコマンドを実行して確認しましょう。「openclaw-gateway.service」が表示されたら成功です。
systemctl --user list-unit-files | grep openclaw
また、この時点で「openclaw」コマンドも使えるようになっている必要があります。下記がうまく表示されない場合は、OpenClawをインストールし直すのがオススメです。
# OpenClawのCLIコマンドのインストールパスの表示
which openclaw
# バージョンを表示
openclaw --version
ここまでうまく表示されたなら、下記のコマンドで状態を確認してみましょう。
openclaw status
Discordでペアリングしよう
続いてペアリング処理を行います。Discordを開いて、作成したボットに対して、DMを送信します。すると、ペアリングコードが送信されてくるので、そのコードをラズパイのターミナルで入力します。
# ペアリングを実行
openclaw pairing approve discord (ここにペアリングコード)
これで、Discordを通して、OpenClawと会話ができるようになります。先ほど作成した「OpenClaw用」というサーバーを開いて、「@ボットの名前 こんにちは」と話しかけてみましょう。
次の画面は、実際にOpenClawと会話をしているところです。Raspberry Piでは、コマンドラインで「vcgencmd measure_temp」コマンドを実行すると、CPU温度を調べることができます。そこで、「@ボットの名前 あなたはRaspberry Piで動作しています。CPUの温度は?」と尋ねると、内部でコマンドを実行してCPU温度を答えることができました。
なお、スマートフォンやタブレットのDiscordからでも同じように会話ができます。次の画面はiPhoneのDiscordアプリから実行したところです。
Discordとのペアリングが正しくできないとき
なお、初期設定の段階で入力したDiscordのボットトークンが間違っていたり、正しく記録されていない場合には、ペアリングができません。その場合は、下記のように、ボットトークンを再設定して、サービスを再起動しましょう。
# トークンを再設定
export DISCORD_BOT_TOKEN="ここにDiscordのBotトークンを貼り付け"
openclaw config set channels.discord.token --ref-provider default --ref-source env --ref-id DISCORD_BOT_TOKEN
openclaw config set channels.discord.enabled true --strict-json
# サービスを再起動
systemctl --user restart openclaw-gateway
Raspberry Piでは、OpenClawの設定は「~/.openclaw/openclaw.json」に保存されます。このファイルを直接テキストエディタで編集することもできます。
うまく動かないとき - 手動でゲートウェイを起動して検証
また、どうしても、OpenClawがうまく動かないときには、下記のように、ターミナル上で手動でOpenClawのゲートウェイを実行してみましょう。筆者の環境でも何度かサービスを起動し直したところ正しく動作しなくなったため、サービスを止めて強制的にGatewayを起動して動作確認を行いました。ログが一行ずつ表示されるので問題を特定しやすくなります。
# サービスを停止する
systemctl --user stop openclaw-gateway.service
systemctl --user disable openclaw-gateway.service
# Gatewayを強制的に起動する
openclaw gateway --force
また、OpenClawの実行ログが、「/tmp/openclaw/openclaw-(日付).log」に保存されるので、このログの末尾の内容を、ChatGPTなどの生成AIに与えることで、修正のヒントをもらうことができます。
メンションしなくても答えてもらえるように設定
なお、Discord上で「@ボットの名前 プロンプト」のように、ボットの名前を指定しなくても、すべての問いかけに答えるようにするには、以下のコマンドを実行して、設定を変更します。サーバーIDは、Discordのサーバーを右クリックして出るメニューからコピーできます。
openclaw config set channels.discord.guilds.<サーバーID>.requireMention false --strict-json
すると、次の画面ように、メンションなしでもボットが答えるようになります。Raspberry Pi上のファイルにアクセスして、その内容を表示させたところです
まとめ - OpenClaw
今回は、OpenClawをRaspberry Piにインストールして、Discordから操作できるように設定しました。OpenClawは、自由度が高い反面、セキュリティの問題が起きやすいので、メインマシンにインストールするのではなく、使っていないマシンにインストールするのがオススメです。とは言え、セキュリティ強化の取り組みも進んでおり、自由に機能が実行できないように制限をかける機能が追加されています。また、実際、ラズパイで試してみて、もう少し性能の良いマシンで動かしてみたいと思いました。皆さんも、実際に試してみて、次世代AIエージェントの可能性を感じてみてください。
自由型プログラマー。くじらはんどにて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしている。代表作に、日本語プログラミング言語「なでしこ」 、テキスト音楽「サクラ」など。2001年オンラインソフト大賞入賞、2004年度未踏ユース スーパークリエータ認定、2010年 OSS貢献者章受賞。これまで50冊以上の技術書を執筆した。直近では、「大規模言語モデルを使いこなすためのプロンプトエンジニアリングの教科書(マイナビ出版)」「Pythonでつくるデスクトップアプリ(ソシム)」「実践力を身につける Pythonの教科書 第2版」「シゴトがはかどる Python自動処理の教科書(マイナビ出版)」など。












