NTTドコモは2020年12月7日、クアルコムとサブ6の周波数帯による5Gのキャリアアグリゲーション(CA)を提供開始すると発表しました。異なる周波数帯を束ねて高速化する技術として4Gでも多く用いられてきたCAですが、5GでCAを導入するメリットはそれだけにとどまらないようです。
NTTドコモが5GのCAで下り最大4.2Gbpsを実現
異なる複数の周波数帯の電波を束ねて通信することにより、通信速度を高速化する「キャリアアグリゲーション」(CA)という技術は、4Gでの高速通信を実現するキーとなる技術の1つとして大きな注目を集めたもの。現在では5つの周波数帯を束ね理論上最大1Gbpsを超える通信速度を実現するに至っています。
そのCAは4Gだけでなく、5Gの高速化にも大きく貢献する技術となるようです。実際、NTTドコモは2020年12月7日に同社に割り当てられた2つの5G向け周波数帯である3.7GHz帯と4.5GHz帯を束ねた、5GでのCAを提供すると発表しています。
3.7GHz帯と4.5GHz帯はともに100MHzの幅を持ち、それら2つの電波を束ねることにより、理論値で下り最大4.2Gbpsの通信速度を実現するとのことです。より帯域幅が広いミリ波帯の28GHzによる通信速度は現在のところ理論値で下り最大4.1Gbpsとなっていることから、サブ6の周波数帯によるCAではそれより高速な通信速度を実現するようです。
このCAはクアルコムと共同で実現したものであるため、現在のところはクアルコムのチップセット「Snapdragon 865」と5Gモデム「Snapdragon X55」を搭載した一部機種のみでの対応となっています。ただ、2021年以降はハイエンドモデルを中心に、5GのCAに対応する機種が増えると見られるのに加え、NTTドコモの5Gエリア自体も2020年より大幅に広がる予定であることから、広い範囲で5Gらしい高速通信を体感できるようになるのではないでしょうか。
今回、NTTドコモが実施した、サブ6の周波数帯による5GのCAというのは世界初の取り組みとなるようです。ですが他国ではノンスタンドアローン(NSA)ではなくスタンドアローン(SA)構成で、なおかつ周波数が大きく異なる帯域の組み合わせによるCAの実現に向けた取り組みも進められているようです。
ローバンドとの組み合わせでミッドバンドのエリア拡大に効果
それが米国での事例です。独Tモバイルの米国法人(TモバイルUS)は、エリクソンとLGエレクトロニクス、そしてメディアテックと共同で、2020年10月にSA構成による2.5GHz帯と600MHz帯のCAを導入する計画であることを発表しています。
TモバイルUSはエリア拡大を優先して600MHz帯による5Gのネットワーク構築をNSAで進めており、2020年8月よりそれをSAへと移行するとしていますが、600MHz帯は広域をカバーできる一方、帯域幅が狭く高速通信には向いていません。
しかし、TモバイルUSはソフトバンク傘下だった同業のスプリントとの合併が認められ、スプリントが持つ2.5GHz帯も積極活用できるようになったことから、その両方をうまく活用して高速化を実現するというのがCA導入の狙いといえるでしょう。
同社の発表内容を見ると、2.5GHz帯と600MHz帯のCAで、2.5GHz帯のダウンロード速度より平均20%速度が向上したとのことです。実際のデモでは1Gbpsを超える通信速度を実現している様子が示されています。
また、TモバイルUSのCAの実現に協力しているエリクソンは、TモバイルUSのようにサブ6の中でも1GHz以上の帯域となる「ミッドバンド」と、1GHz未満の「ローバンド」の組み合わせが、ミッドバンドのエリアを広げることに貢献するとしています。
それは、CA時に端末と基地局が通信して接続を制御する「制御信号」を遠くに届きやすいローバンド側でこなすことで、ミッドバンドだけでは送り切れなかった制御信号を送ることができるようになり、ミッドバンド単体で通信する時よりも広範囲のエリアをカバーできるというのです。
日本でもKDDIやソフトバンクが、ローバンドに相当する4G向けの周波数帯を5Gにも活用して広範囲のエリア拡大を優先する方針を打ち出していますが、ローバンドだけでは通信速度の向上につながらないことから「なんちゃって5G」ではないかとの批判も少なからずあります。しかし、CAによってミッドバンドのエリア拡大にもつながってくるようであれば、その評価は大きく変わってくるかもしれません。