本連載では、最初にWindowsでUbuntuを動かすためにWSL (Windows Subsystem for Linux)をインストールする(有効化する)方法を取り上げた。先日、MicrosoftはデフォルトのWSLに関してマイルストーン的なアップデートを行ったので、インストールしたWSLもアップデートするのがお勧めだ。今回はこの操作方法を取り上げる。→連載「WindowsでUbuntuをはじめる」のこれまでの回はこちらを参照

Microsoft StoreのWSL版が正式版へ昇格

Microsoftはこれまで、WSL (Windows Subsystem for Linux)を2つの方法で提供してきた。Windowsコンポーネントとしての提供と、Microsoft Storeでの提供だ。

Microsoftはこのほど、Microsoft Storeで提供してきたWSLからプレビュー版という位置づけを取り下げ、正式版と変更した。

  • Microsoft Storeでプレビューが取れて正式版となったWSL

    Microsoft Storeでプレビューが取れて正式版となったWSL

正式版になると同時に、MicrosoftはこのMicrosoft StoreのWSLをWindows 11およびWindows 10のデフォルトのWSLへ変更を行った。以降、WindowsにWSLをインストール(有効化)する場合には、自動的にこのMicrosoft Store版がインストールされるようになる。

変更された点は複数あるが、特に注目しておきたい内容に絞ると次のようになる。

  • Microsoft StoreのWSLがプレビュー版という位置づけから正式版という位置づけに変わった
  • Microsoft SotreのWSLがデフォルトのWSLに変わった
  • WindowsコンポーネントだったときのWSLよりもMicrosoft Store版WSLの方がアップデートが高速に配信される
  • Microsoft StoreのWSLがWindows 11に加えてWindows 10にも対応した。そしてWindows 10でもLinuxのGUIが扱えるようになった
  • systemdにオプトインで対応した

インストール方法は、以前に取り上げた状態と変わっていない(WindowsでUbuntuをはじめる(2) Ubuntuをインストールする (1) | TECH+(テックプラス))。

すでにWSLをインストール(有効化)してある場合は、WindowsコンポーネントとしてのWSLがインストールされており、Microsoft Store版のWSLではないという状況になっている。今回はこのWindowsコンポーネントとしてのWSLから、Microsoft Store版のWSLへ入れ替える方法を紹介する。

Windowsコンポーネント版WSLの確認方法

インストール(有効化)されているWSLがMicrosoft Store版のものか、Windowsコンポーネントのものかは、「wsl --version」というコマンドを実行することで確認できる。

Windowsコンポーネント版WSLかMicrosoft Store版WSLかの確認方法

wsl --version

次のスクリーンショットのように、wslコマンドに--versionというオプションが用意されていない場合には、Windowsコンポーネント版のWSLを使っていることになる。

  • Windowsコンポーネント版wslだと--versionがエラーになる

    Windowsコンポーネント版wslだと--versionがエラーになる

  • Windowsコンポーネント版wslだと--versionがエラーになる

    Windowsコンポーネント版wslだと--versionがエラーになる

「wsl --version」が適切に機能するなら、もうMicrosoft Store版のWSLを使っている可能性が高い。その場合は特に以降の移行処理を行う必要はない。

WindowsコンポーネントのWSLから、Microsoft StoreのWSLへ移行する方法

とはいっても、移行方法は簡単だ。本稿執筆時点では、次のコマンドでWindowsコンポーネント版のWSLから、Microsoft Store版のwslへの切り替えができるようになっている。

Windowsコンポーネント版WSLからMicrosoft Store版WSLへの切り替え方法

wsl --update

実行すると次のようになる。

  • Windowsコンポーネント版WSLからMicrosoft Store版WSLへの切り替え方法

    Windowsコンポーネント版WSLからMicrosoft Store版WSLへの切り替え方法

実行が完了したら、もう一度「wsl --version」を実行してみる。

Windowsコンポーネント版WSLかMicrosoft Store版WSLかの確認方法

wsl --version

次のように先ほどとは異なり、バージョン情報が表示されることを確認できる。

  • 「wsl --version」でバージョン情報を確認

    「wsl --version」でバージョン情報を確認

この状態でMicrosoft Storeを起動しWSL (Windows Subsystem for Linux)を表示させると、次のスクリーンショットのように「インストールされている」と判断され、表示されるボタンが「入手」から「開く」に変わっていることを確認できる。

  • Windowsコンポーネント版からMicrosoft Store版へ移行したことで自動的にインストールしたことになっている

    Windowsコンポーネント版からMicrosoft Store版へ移行したことで自動的にインストールしたことになっている

これで移行作業は完了だ。簡単に最新版に変えることができる。

WSLのアップデートがこれまでよりも早く簡単になる

WSLがWindowsコンポーネントからMicrosoft Storeに移行したことで、アップデートがこれまでもよりも早くなるという利点が得られることになる。MicrosoftがWSLへの取り組みに積極的であることを示す一例だ。PowerShell 7やWindows Terminalと同じような扱いになり、これまでよりも早い周期でのアップデートが可能になる。

Windowsコンポーネント版を使っていてもいずれかの段階で自動的にMicrosoft Store版へ切り替えることになるとみられるが、Windowsコンポーネント版を使い続けるメリットはあまりないので、以前からWSLを使っている場合にはこのタイミングでMicrosoft Store版へアップデートしておこう。

参考