転職市場で自らの価値を高めるにはどうすれば良いのだろうか。語学力や専門スキルを身に付ける、業務に関連する資格を取得するなど、さまざまな方法が考えられるが、なかでも今、キャリアアップを期待できる方法の一つが”AI人材”になることだ。
「AI」と聞くと、思わず身構えてしまう人が多いかもしれない。だが、本誌人気連載「教えてカナコさん! これならわかるAI入門」の著者であり、AIプランナーとして活躍する大西可奈子氏によれば、実は誰もがAI人材になれる可能性を十分に秘めているのだという。
そんな持論を持つ大西氏が監修した書籍『超実践! AI人材になる本 プログラミング知識ゼロでもOK』(発行:学研プラス)が、今年9月16日に刊行された。この機に本誌では、同氏が考えるAI人材の定義や、AI人材になることによるメリット、そのために必要なスキルなどについてお話を伺った。
あらゆる業種/職種で求められる”AI人材”とは?
――大西さんは今回、監修された書籍でAI人材になることを強く勧めておられます。ずばりお聞きしますが、AI人材になることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
AI人材になるメリットを考える場合、2つの視点があります。1つは会社にとってのメリット。もう1つは「AI人材になった人」にとってのメリットです。会社のメリットはわかりやすいですね。AI人材がいれば、AIプロジェクトの成功が近づきます。
私が強くお伝えしたいのは、「AI人材になった人」にとってのメリットです。
――具体的にどんなメリットがありますか。
AI人材になることで、確実にキャリアアップにつながります。AI人材は今、どこの企業でも重用されていることは間違いありません。当然、給与は上がりやすいですし、もっと待遇の良い企業に転職できる可能性も高いでしょう。
なぜなら、AI人材は多くの企業が喉から手が出るほど欲しがっているにも関わらず、圧倒的に不足しているからです。需要と供給が釣り合っていないので、AI人材は今後しばらく売り手市場であり続けるはずです。
――AI人材はそんなに不足しているのですね。
とある大手土木会社からAIプロジェクトに関する相談を受けたことがあるのですが、その企業が抱えていた課題は、まさにAI人材不足に起因するものでした。社内にAI人材さえいれば、その課題は解決するのに……と思ったことを覚えています。大手企業でも、AI人材はなかなか確保できていないのが現状なのです。
――実際にAI人材になることで、キャリアアップに成功した事例などはあるのでしょうか。
たくさんあります。私の知人もAI人材としての能力を買われて、転職で年収が増えました。あるいは、転職しなくても、AI人材になったことで給与が上がった例もあると思います。また、某大手企業では、AI人材が所属する部署をわざわざ作って、採用に力を入れているそうです。
――夢のある話ですが、そもそもAI人材とは具体的に何をする人なのでしょうか。AIと聞くと、やはりエンジニアやデータサイエンティストなどが思い浮かびます。
私が考えるAI人材は、全ての業種で、全ての職種の人がなれる可能性のある存在です。AI人材になるためのスキル――例えば「AI力」とでも呼びましょうか。このAI力は、いわば「語学力」のようなものだと考えてください。
――語学力、ですか?
語学力は特定の業種/職種でだけ役立つスキルではないですよね。グローバル化の進む今、営業職でも、飲食業でも、コールセンターのオペレーターでも、農家でも役に立つスキルです。なくても仕事はできますが、あると仕事の幅が広がり、現場で重宝されます。AI力も同じことなんです。