“くらしをかるくする”をコンセプトに日用品を販売するECサイト「LOHACO」。オリジナル商品やメーカーとのコラボ商品を数多く販売し、特にスモールマス分野でヒットを飛ばしている。そうした人気商品が生まれる舞台裏にあるのが、データ活用だ。

数多くのヒット商品はどのようにして生み出されたのか。12月13日に開催された「マイナビニュースフォーラム2019 Winter for データ活用」に登壇したアスクル BtoCカンパニー プラットフォーム本部 副本部長 兼 ECマーケティングディレクター 成松岳志氏が語った。

データを生かしたコラボ商品開発

成松氏は2007年にアスクルへ入社。2012年にLOHACOの事業立ち上げに参画し、現在は同サイトの事業企画/データ解析/プロモーション部門を統括する。「3年間で3倍の成長を遂げた」というLOHACOの独自価値商品には、データを活用した綿密な成長戦略があったという。

アスクル BtoCカンパニー プラットフォーム本部 副本部長 兼 ECマーケティングディレクター 成松岳志氏

登壇した成松氏からは、まずLOHACOの基本的な情報が紹介された。

同サイトは日用品やペットフード、お酒など家庭内にストックするような商品を展開していることもあり、ユーザーは30~40代の女性が中心だ。典型的なロイヤルカスタマーの購買行動としては、「隔週から3週間に1回くらいの割合で、5~10カテゴリから1万円くらいの物品をまとめ買いする」というもの。これはまさに成松氏が想定している通りの行動だという。

「生活のなかで食べ物や飲み物、日用品が切れたときに来店して補充するというイメージです。その人の生活のなかにLOHACOが組み込まれてほしいと思っています」

ユーザーがLOHACOに期待しているのは、注文したものを玄関まで届けてもらえるという利便性に加えて、商品の”楽しさ”だと成松氏は分析。そうした予測を基にした戦略があたり、LOHACOは売上500億円規模まで急成長を遂げた。しかし、一方でEC事業はプレーヤーも多く、これからは良い商品を売っていれば勝手に成長するような時代ではないと成松氏は見ている。

今後、LOHACOをどうグロースしていくのか。そこで成松氏が着目するのが、LOHACOから得られる多種多様なデータだ。

日々生まれるデータには「顧客データ」や「購買データ」「アクセスログ」「問い合わせデータ」「レビューデータ」など、さまざまな種類がある。こうしたデータをどのように活用しているのだろうか。

「データ活用でよく言われるのは可視化や最適化、パーソナライズです。加えて我々の持ち味はゼロからイチを作る商品開発なので、そこにデータを役立てています」

LOHACOは数多くのオリジナル商品やメーカーとのコラボ商品を開発/販売しており、それこそが「ほかのECサイトにはない価値」だと成松氏は語る。

魅力的なコラボ商品を生み出す原動力になっているのが、同社が6年ほど前から主宰する「LOHACO EC マーケティングラボ」だ。自社のデータを参加企業累計143社、約500名に共有することでオープンイノベーションを実践。毎年、「暮らしになじむLOHACO展」を開催し、同ラボに参加するメーカーとコラボした商品を展示する取り組みも行っている。

さらに成松氏は「ECだからこそできることもある」と強調する。例えば、スタイリッシュなパッケージデザインもその1つだ。

通常、リアル店舗の店頭で購入される日用品は顧客が棚を眺めて選択するため、”顧客に気づいてもらえること”や”手にとったときにどれだけ価値や情報を伝えられるか”を重視してパッケージデザインが行われる。文字量が多くスタイリッシュさからかけ離れてしまうのは、そういった事情があるからなのだ。

しかし、ECサイトの場合、それらはすべて「商品説明のテキストや動画」で説明可能である。ゆえにパッケージデザインで商品を説明する必要が薄く、「暮らしになじむ」「生活に溶け込む」ことを優先してパッケージをデザインできるというわけだ。