働き方改革やダイバーシティで盛り上がる昨今だが、それらを成功させている日本企業は決して多くないのが実情だ。G7(主要7カ国)中でも女性管理職/役員比率は相変わらず最底辺であり、出産後のマミートラック現象に悩まされる女性も多い。

こうした状況がなかなか変えられないのはなぜなのか。働き方改革の本質とはどこにあるのか。

11月27日に開催された「マイナビニュースフォーラム2019 Autumn for 働き方改革」では、働く女性のロールモデルとして「プロフェッショナル~仕事の流儀~」(NHK総合)にも出演した株式会社morichの森本千賀子氏が登壇。「働き方改革の実現のために~組織と個人の意識改革~」と題し、日本の多くの企業が抱える課題とその改善策について語った。

推進しているのに実現できていないのはなぜか

「今回のセミナーのテーマはダイバーシティ。それなのに会場は男性ばかりです」

講演冒頭、森本氏はそう切り出した。森本氏は1993年にリクルートに入社し、出産後もビジネスの最前線で活躍。2017年には株式会社morichを設立して独立し、転職エージェントを軸にオールラウンダーとして活躍する人物だ。

株式会社morich 代表取締役All Rounder Agent 森本千賀子氏

そんな森本氏から見て、現在の日本はまだまだ男性社会だという。女性の大学進学率は世界平均をはるかに上回っているにも関わらず、役員比率や管理職比率は欧米に比べて圧倒的に低く、ジェンダーギャップ(男女平等)指数は149カ国中110位とG7最下位となっている。労働力確保の観点から企業が推進しているはずの「女性活躍」が、まったく実現できていないのが現状なのだ。

なぜこうしたギャップが生まれるのか。

森本氏が理由の1つとして挙げるのが「ロールモデルの不在」だ。日本では家庭における夫の家事/育児分担比率が低く、グローバルで見ても最底辺に属する。その結果、出産前後で女性は長期の職場離脱を余儀なくされ、復帰しても出世コースから外れる「マミートラック現象」に悩まされることになる。これではロールモデルは育たず、将来へのビジョンも描けない。結果として、「管理職になりたくない」という女性が増えることになり、いつまでたっても女性活躍が実現できないという負の連鎖を生んでいるのである。

この現状を打破するためには、企業が女性活躍推進のメリットを実感することが大事だと森本氏は言う。

メリットとは、少子高齢化に伴う働き手の確保や、女性の感性を経営に生かせること。さらに「女性を積極的に採用している」という事実そのものが採用ブランディングにつながるという。なぜなら、「男子学生も先進的な企業を選ぶ基準として、女性の復職率や管理職比率を気にしている」(森本氏)からだ。

そもそも、女性役員を登用したり、育児介護支援を行ったりと柔軟な職場環境推進に取り組む企業は、株価平均が高く、安定収益を確保しているというデータもあるという。女性が活躍できる環境を作ることは、企業にとってさまざまなプラスの効果を生むのである。

それでは、どうすれば女性が生き生きと働ける環境を作れるのだろうか。