2024年、米国では労働力人口でZ世代がベビーブーマーを上回る見込みだ。Z世代が存在感を高める中、2024年のトレンドとなるものは? Pinterestのトレンド予測からは、Z世代が知らないレトロの流行、そして重要キーワードとして「細分化」が浮かび上がってくる。→過去の「シリコンバレー101」の回はこちらを参照。

2024年のトレンドになりそうな23個のトピック

Glassdoorによる国勢調査データの分析によると、2024年にZ世代が米国の労働力人口でベビーブーム世代を追い抜き、ミレニアルズ、X世代に次ぐ3番目に多いグループになる見込みだ。日本では高齢化が進む中で消費傾向にベビーブーマーの影響がまだ強く現れているが、世界的にはミレニアルズ主導の中、Z世代が影響力を増している。

  • Glassdoorの「2024 Workplace Trends」から

    Glassdoorの「2024 Workplace Trends」から

多くのトレンド予測が公開される中、筆者が毎年チェックしているのがPinterestの「Pinterest Predicts」だ。月間4億5000万人以上のユーザーの検索を分析してデータパターンを特定している。オンラインサービスのトレンド予測はメインユーザーとともに成熟していく傾向があるが、Pinterestの予測は常に新しい世代のフレッシュなトレンドが反映されて参考になる。的中率は、過去4年連続で80%を超えているそうだ。

今年挙げられているトレンドは23個。「おじコーデ」「ビッグアイテム」「ウェスタン ゴシック」「リボン・リボン」、「アクアメイク」「つや肌ボディ」、「バドミントンスタイル」「ファイティング・ワークアウト」、「クラゲブーム」、「スローケーション」、「ジャズ・リバイバル」、「ホットメタリック」など、Z世代に関連するトピックが多数含まれている。

「おじコーデ」「ビッグアイテム」については、ダッドシューズやタックイン、ダブルジャケットなど、ダサめのおじさん風のアイテムをうまく交ぜてバランスを取る、レトロでマニッシュなスタイルがここ数年のトレンドであり、その傾向が今年も続くようだ。

ただし、"おじ"風ならなんでも良いというわけではなく、従来の「おじコーデ」で「それならオレも着こなせる」とタンスの奥から昔の服を引っ張りだして挑戦した中年男性がイタいめに遭ってきたように、コーディネートセンスが問われるからむしろ難しい。今年のトレンドは、ファンキーなセーターベスト、カラフルなカーディガン、ヴィンテージのローファーなど、"おじ"よりも世代が上の"グランパ"スタイルである。

  • 年季の入ったおじいちゃんの着こなしを共有、おじコーデのアイデアに

    年季の入ったおじいちゃんの着こなしを共有、おじコーデのアイデアに

「eclectic grandpa」や「grandpacore」、「grandpa core」といったキーワードで検索すると興味深い。また、街で見かけたファッショナブルなおじいちゃんの写真を集めたInstagramアカウントが25万人以上のフォロワーを集めるなど、「自分のスタイルを持った個性的なおじいちゃん」がリスペクトされている。そこがベビーブーマー以上の世代にとってはポイントだろう。

アメリカではバドミントンが流行中?

コロナ禍で屋外のラケット・スポーツの人気が高まり、米国では特にピックルボールが急成長し、新設されたプロ・リーグにNBAのスター選手レブロン・ジェームズやケビン・デュラントが出資して話題になった。しかし、ピックルボールはプレイ中の音がうるさいため、ブームとともにコート周辺の住民とのトラブルが多発している。

そうした中で人気を上昇させているのがバドミントンだ。ベビーブーマーにはなじみのあるスポーツだが、ミレニアルズより若い世代には新鮮でソーシャルメディアを通じて話題が広がった。

「スローケーション」(のんびりとバケーション)、「余り物に福」(残り物を活用したレシピやDIY)など、忙しい日常からの脱却、ワークライフバランス、リラクゼーションやメンタルヘルス、サスティナビリティ(持続可能性)といった近年重んじられるライフスタイルや社会性を反映したトレンドも活発だ。

柔術やキックボクシング、空手など格闘技を取り入れたワークアウト「ファイティング・ワークアウト」の人気もその1つで、単に体を鍛えるだけでなく、自己啓発や精神的な自己強化といった心身のワークアウトとして流行している。

  • テコンドー教室は会員が倍増、同じ敷地内で閉店したクリーニング店のスペースに柔術ジムが入るなど、格闘技系のジムが増えている。

    テコンドー教室は会員が倍増、同じ敷地内で閉店したクリーニング店のスペースに柔術ジムが入るなど、格闘技系のジムが増えている。

デジタルデバイスやオンラインエンターテイメントの利用が増える一方で、人々はリアルな体験や対面でのアクティビティに新たな魅力を感じ始めている。「本音トーク」もその1つで、パートナーや友達とのより深いつながりを求めて、自分を隠すことなく本音で語り合う。これは親しい人との関係を深める一方で、意見が合わない人との間に溝を作る可能性もある。

SNSから離れて程よい不便さに回帰する動きに

X(旧Twitter)の迷走からソーシャルメディアの細分化が進んでいる。2024年、米国は大統領選挙の年であり、過去2回のような騒動はこりごりと思っている人が少なくない。フェイクニュースや誤った情報に混乱し、選挙に関する議論で友人や知り合いとの関係をこじらせた経験を誰もが持っている。

ソーシャルメディアの影響は人によって異なり、中毒や害悪になる人がいれば、友達作りや精神を安定させる場になっている人もいる。そうした議論とは別に、携帯電話を持たずに育った世代の間で、公園でのんびり本を読んだり、待ち合わせをドタキャンできない時代を懐かしむのではなく、ソーシャルメディアから離れて程よい不便さに回帰するという動きが見られるのが興味深い。

Pinterestのトレンド予測に「ミニ・マイルストーン」(子供たちの小さな出来事を祝う)が入っているように、ベビーブーマー世代の小言を「OK, Boomer(わかった、わかった)」と言って無視していたZ世代が成長し、大人になったことも変化の1つといえる。

その一方で、アルファ世代がネットの世界に参入してきており、ソーシャルメディアの解禁が始まる13歳を超え始めた。アルファ世代の子供達は「"slay"を使うなんて笑い話にもならない」とインフルエンサーの姉に指摘する。Z世代と似ているようで、自分の世界を構築すること、創造的なことが好きで、自分の感情をより豊かに表現し合っている(それゆえアルファ世代に😀を送っても伝わらない)。