健康のためにスマートウォッチを購入したにもかかわらず、体重が減るどころか増えることもある。その場合は、スマートウォッチで計測したデータを分析して、消費しているカロリーと体重増加の相関性を調べよう。
消費カロリー増加と体重増加に負の相関を見出すことができなければ、原因は運動以外のところにある可能性が高い。要は、「食べすぎている」可能性だ。今回は、その場合の次の一手を紹介しよう。→連載「スマートウォッチでデータ分析をしよう 」のこれまでの回はこちら
腹筋はキッチンで作られる
除脂肪を進めて適切な体重まで減らす場合、一般的に次の行動が推奨される。
- バランスのとれた食事
- 適度な運動
- 十分な睡眠
基本的には、摂取カロリーよりも消費カロリーが増えると体重は減る。ただし、筋肉は減らさずに余分な脂肪だけを減らしたい。上記の3点は、筋肉を減らさずに脂肪を減らすことを実現する上での必須事項だ。
ビジネスマンにとって日々の食事を変更するのは難しい。家族と同居している場合はなお難しいかもしれない。そうなると、運動量を増やして目的を達成しようとするわけだが、そもそも運動習慣がない状態で運動習慣をつけることは難しい。健康のために運動は習慣化すべきだが、習慣化した運動だけでは除脂肪まで行きつかないこともある。
そこで、次の一手として、食事を変更する必要がある。実際のところ、除脂肪(減量)には食事の変更が効果的だ。トレーニングに取り組んでいるなら「Abs are built in the kitchen (腹筋はキッチンで作られる)」という言葉を一度は聞いたり読んだりしたことがあるだろう。運動だけで除脂肪を達成するのは実際は難しい。食事の方が効果が出やすい。
スマートウォッチと食事
残念ながら、食事に関してスマートウォッチができることはほとんどない。運動中に水分を摂るように促す機能は存在しているが、摂取した食事を分析したり、摂取カロリーを調べしたりといった機能はない。センサーを考えても、そうした機能は今後も搭載されることはないように思う。
本連載は、スマートウォッチをテーマとしているので、食事に関しては範囲外だ。しかし、健康なビジネスマン・ライフを実現するには「バランスのよい食事」は避けて通ることはできない。今回はビジネスマンがバランスのよい食事を実現するために役立つ資料を取り上げておく。
バランスのよい食事って何?
「バランスのよい食事」とは口当たりのよい便利な言葉だ。バランスのよい食事が健康のベースになることに疑いの余地はない。しかし、どんな食事が「バランスのよい食事」なのか、具体的な話になってくると途端に内容が曖昧になってくる。
バランスのよい食事を考える場合、少なくともマクロのタンパク質(必須アミノ酸、非必須アミノ酸)、脂質(n-3系脂肪酸、n-6脂肪酸、飽和脂肪酸)、炭水化物(炭水化物、食物繊維)とミクロのビタミン(ビタミンA、B1、B2、ナイアシン、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、C、D、E、K)とミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン)について量のバランスや下限と上限を考える必要があり、健康を考えるならここに各種フィトケミカルの摂取を日常化したい。
スーパーコンピュータで人体の体内モデルがエミュレートされており、どの要素がどの量とバランスのときに、人体が最も効率よく機能すかがわかっている、ということになっていればよいのだが、現実はそうなっていない。
実のところ、どの栄養素がどの程度必要なのか明確になっているものは思いの外少なく、「多くの人間がこの量を食べて問題が出ていないのでこれを値とする」、といった定め方をされている栄養素が結構多い。上限や下限、最適な量に関してはわかっていないことが多いのだ。「バランスのよい食事」はまだまだ研究段階にある。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を参考にしよう
インターネットには除脂肪(減量)の食事に関してさまざまな情報があふれている。身体はさまざまな栄養素が関連して使われるので、食事にちゃんと取り組まないと、自分が痛い目を見ることになる。
日本人として最初に目を通したいのは「日本人の食事摂取基準策定検討会」が公開した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」だ。どういったデータや考えを根拠にしているかが明確で不明な点に関しても明示されている。栄養素に関して比較的包括的に説明が行われており、まず目を通したい資料だ。
概要なども含めたデータは、厚生労働省が次のページで公開している。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」は500ページほどの資料なので、完読するにはそれなりの時間が必要だ。しかし、栄養素に関して系統立った知識を得るのにこの資料はかなり便利だと思う。ビジネスは健康あってのものだ。仕事への投資だと考えて一度じっくりとこの資料を読み、栄養に関する基礎的な知識を得ることをオススメしたい。
なお、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」は2025年まで有効で、2026年には次の改訂版が出ると思うので2026年以降はそちらを参考にする方がよい。摂取すべき栄養に関して、新しい研究や分析によって新しい常識に置き換わることはしばしば起こり得る。「日本人の食事摂取基準」が新しい基準を採用したのなら、それに合わせていく方がロジカルな取り組みだ。