そして話は、生活支援ロボット実用化プロジェクトの目的や体制など詳細な内容に移る。改めて同プロジェクトの目的を述べると、3つあり、1つ目がサービスロボットの対人安全性基準、試験方法および認証手法の確立だ。2つ目が、安全技術を搭載したサービスロボットの開発。そして3つ目が、安全性基準の国際標準化提案、試験機関、認証機関の整備である。プロジェクトの体制はサービスロボットの安全性検証手法の研究開発(産総研などの複数の公的機関が担当)と、安全技術を導入したサービスロボットの開発(メーカーが担当)が両輪となっている。画像25がそれらをまとめたものだ。

画像25。生活支援ロボット実用化プロジェクトの目的や体制など

その実施体制をまとめたものが、画像26である。少々見づらいので、文章でもまとめてみた。なお、プレゼン画面中では生活支援ロボットと書かれているが、この原稿ではサービスロボットとして統一させていただく。

(1)のサービスロボットの安全性検証手法の研究開発は、一般財団法人 日本自動車研究所(JARI)、産総研、独立行政法人 労働安全衛生総合研究所、名古屋大学、一般財団法人 日本品質保証機構(JQA)、日本認証株式会社、一般社団法人 日本ロボット工業会(JARA)、一般財団法人 製造科学技術センターなどの公的機関(日本認証は株式会社だが、性格的に公的機関に近い)が安全性に関する基準などを作ったり、試験方法や認証方法を考えたりした。

(2)の安全技術を導入した移動作業型(操縦が中心)サービスロボットの開発は、(A)として安全技術を導入した移乗以上・移動支援ロボットシステムの開発ということで、パナソニックと国立障害者リハビリテーションセンターが参画している。

(3)の安全技術を導入した移動作業型(自律が中心)サービスロボットの開発は、(A)の安全技術を導入した生活公共空間およびビルの移動作業型ロボットシステムの開発は、当初は富士重工業が参画していたが、諸般の事情により途中で抜けている。(B)の安全技術を導入した警備ロボットシステムの開発も、当初は綜合警備保障、北陽電気、三菱電機特機システムが参画していたが、3者とも途中で抜けている。(C)の安全技術を導入した配送センター内高速ビークルシステムの開発は、ダイフクが途中から参画。(D)の安全技術を導入した配送センター内のフォーク型物流支援ロボットの開発は、日立産機システム、日立プラントテクノロジーがこちらも途中から参画している。

(4)の安全技術を導入した人間装着(密着)型サービスロボットの開発では、(A)の安全技術を導入した人間装着型サービスロボットスーツHALの開発は、CYBERDYNEと筑波大学。(B)の安全技術を導入したリズム歩行アシストの開発は、ホンダが途中参画となっている。

最後の(5)の安全技術を導入した搭乗型サービスロボットの開発は、(A)搭乗型サービスロボットにおけるリスクアセスメントと安全機構の開発が、トヨタ、フォーリンクシステムズ、国立長寿医療センターの3者。(B)の安全要素部品群と安全設計に基づく搭乗型移動ロボットの開発は、アイシン精機、日本信号、オプテックス、ヴィッツ、千葉工業大学の5者が途中参画だ。(C)の屋外移動支援機器における安全エンジニアリング技術の研究開発は、IDECと大阪大学の共同実施となっている。こちらも共に途中参画だ。

画像26。プロジェクトの実施体制

プロジェクトにおける対象ロボットをまとめたのが、画像27。こちらも画像が小さいのでそれぞれ説明すると、左上の移動作業型(操縦中心)ロボットの2つは、どちらもパナソニックの「ロボティックベッド」だ(詳しくは後述)。右の白い方が機能が削減されて簡略化が図られた、離床アシストベッド「リショーネ」といい、ISO14382の取得1号で、すでに受注も開始している。こちらは耐荷重、衝撃耐久性、電波暗室、静的安定性、複合環境の5つの試験が実施された。ISO13482、IEC6060-1、EN12184などの安全規格に沿っている(後述するが、実際にISO13482の認証を受けたのは、その簡易版といえる「リショーネ」)。ISO13482は、前述した、生活支援ロボット実用化プロジェクトの働きかけによって2014年2月に正式に発行された国際安全規格だ。

次に右上の移動作業型(自律中心)ロボットだが、左がダイフクで、右が日立産機システムの物流センター用無人搬送ロボットとなっている。こちらの試験は、衝突安全性、障害物接近再現、電波暗室、環境認識性能、多目的走行の5つが行われた。安全規格は、JIS D 6802、IEC61508、ISO13849となっている。

左下が、人間装着(密着)型ロボットだ。左がHALで、左がリズム歩行アシストである。試験は、耐荷重、衝撃耐久性、ベルト走行耐久、電波暗室、複合環境の5点。安全規格はISO13482だ。

そして最後は右下の搭乗型ロボット。いわゆるパーソナルモビリティである。左からトヨタの「Winglet」(画像27)、アイシン精機の電動車いす、IDECの屋外移動支援機器となっている。試験は、耐荷重、障害物接近再現、衝撃耐久性、複合環境、ドラム型走行耐久性能、電波暗室の6つとなっている。画像23のリスク-ベネフィットのバランスで、パーソナルモビリティはベネフィットよりもリスクの方が高い位置づけがなされていたが、試験の数がほかの分野に比べて1つ多い点から理解してもらえるだろう。安全規格はISO13482、IEC61496、IEC61508。

画像27(左):プロジェクトにおける対象ロボットと、その試験内容と関連安全規格の一覧。画像28(右):トヨタの立ち乗り型パーソナルモビリティのWinglet