6月18日に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)により、つくば市役所にて行われた「生活支援ロボット実用化プロジェクト」の成果発表会。その概要はすでにお伝えした通りだが、今回から数回に分けてその時に行われた4つの講演を個別にお届けする。まずは最初に行われた、生活支援ロボット プロジェクトのリーダーである産業技術総合研究所(産総研) 知能システム研究部門研究部の比留川博久 部門長(画像16)による「生活支援ロボット実用化プロジェクトの概要/成果」からだ。
なお同講演は、昨年10月31日・11月1日に産総研つくばセンターで開催された「産総研オープンラボ2013」において実施された講演の「次世代ロボットの研究開発動向」の中で、その講演の概要としてまず行われた比留川部門長による同名の講演のアップデート版といっていい。その時のレポートでお届けした内容と被るところもあるが、日本のサービスロボット開発の問題点などを改めて確認できるので、まずはご覧いただきたい。
サービス(生活支援)ロボットの話になると、よく言われているのが、「市場が形成されない」という点が日本における大きな問題の1つになっている。サービスロボットの時代が来る来るといわれて早10年、確かに「ルンバ」に代表される掃除ロボットは市場を形成したといえるが、そのほかにサービスロボットが家電量販店や街の電気屋で取り扱われるようになったかというとそんなことはないのは、誰もが知るところ。
厳密には、サービスロボットがまったく販売されていないわけではなく、日本国内でも各地の中小企業などが、主に福祉用ロボットおよびロボット技術を応用した福祉機器などを販売しているし、製品化を目指した開発も進められているのだが、現状では福祉用であるが故に少数生産や受注生産などの形であり、その企業のWebサイトなどでのみでしか買えないなど、なかなか市場が形成されているとはいえない。
真の意味で、一般消費者が家電感覚で使えるような「持っていると生活が便利になる」というもので、少なくとも「秋葉原などに出ればどこかのお店で買える」というようなサービスロボットは、前述したように掃除ロボット以外では市場が形成されていない。実際、サービスロボットの市場規模としては2012年時点で600億円ほどしかないそうだ。
市場の形成を阻害している要因として挙げられるのが、「安全性・信頼性の問題」である。比留川部門長によれば、市場形成の阻害要因はほかにもたくさんあるというが、実際のところ、この安全性・信頼性の問題は最も大きな問題といって間違いないだろう。そして、それによってサービスロボットが普及しない(市場が形成されない)という「負の連鎖」が形成されてしまっているというわけだ。それを表したのが、「サービスロボット市場の現状」と題されたプレゼン画面(画像17)である。
この負の連鎖はどこから初めてもいいが、「安全性・信頼性について自信がなく、責任を取れない」からスタートしたとして、それによって「家電・自動車の大手メーカーが不参入」という状況で、結果として「需要が喚起されず」、当然「消費者の認知が進まず」、「サービスロボットは普及せず」、そのため「動作および利用の実績もなく」、再び「安全性・信頼性について自信がなく、責任を取れない」に戻ってしまうというわけである。
なお、大手メーカーが不参入としているが、パナソニックやトヨタ自動車(トヨタ)、本田技研工業(ホンダ)などが研究開発を続けているのはご承知の通り。そのほか、NECの「PaPeRo」シリーズ(画像18)のようにすでにサービスが行われていたり、規模の大きさは別としても富士通や東芝といった大手の家電/コンピュータメーカーなどもサービスロボットの研究開発部門を持っていたりはするが、普通に一般人がすぐ購入できるようなサービスロボットは(掃除ロボットを除いては)大手からは販売されていない。
唯一、2015年2月とまだ少し先の話とはいえ、一般人が手に届くホビーロボットや少々高級なPCと同程度の価格で、本格的なサービスロボットとしてソフトバンクから「Pepper」(画像19)が発売されるわけだが、これがどのような売れ行きを見せるかは興味深いところだ。