企業のITインフラやさまざまなITサービスを実現するうえで「サーバ」は欠かせない存在で、企業が求めるIT人材として知っておきたい必須知識の1つでもあります。

本連載では、「サーバとはいったいどのようなものか?」に始まり、利用方法や種類などの基礎的な知識とともに、セキュリティ対策や仮想化、サーバレスなど効率的にサーバを利用・管理するうえでのポイントといった、情報システム担当者の実務に役立つ話題を紹介していきます。

連載第4回は、前回に続いてデル・テクノロジーズの岡野家和さんに、サーバの安定稼働に欠かせない、ラックとデータセンターについて解説してもらいます。

サーバ稼働の専用施設「データセンター」

連載第1回でサーバの設置場所として言及された「コンピュータールーム」や「データセンター」は、サーバなどのIT機器を稼働させる専用の施設です。そのため、セキュリティ、地震対策、設備の二重化などの障害対策のほか、大規模な電源設備や温度管理が徹底されています。

こうした施設の中では、IT機器を搭載するラック(専用の棚)が立ち並びます。

サーバをラックに搭載してデータセンターで管理する利点は、フロアスペースの最大活用のほか、サーバの安定稼働に必要な周辺機器もラックに集約できる点があります。周辺機器は、例えば、ラック内のサーバに電源を供給するPDU(Power Distribution Unit)や、停電時にサーバへ給電を行うUPS(Uninterruptible Power Supply)などの電力関連インフラから、ラック専用のキーボード&モニタなど多岐にわたります。

ラックに搭載して使用する3つのタイプのサーバ

ラックは、業界標準で横幅が19インチに決まっており、メーカーを問わず共通の寸法で制作されます。サーバやストレージなどの機器メーカーも、製品をこの規格に合わせて設計します。

ラックに搭載するサーバは「ラック型サーバ」と呼ばれます。大規模システム向けに、より多くのサーバを1つのラックに搭載して利用したい際に利用されるのが、「マルチノード型」や「ブレード型」と呼ばれるサーバです。どちらも1台のラック型筐体に複数のサーバを搭載します。

  • ラック型サーバ、提供:デル・テクノロジーズ

「マルチノード型」は電源(パワーサプライ)や冷却ファンをサーバ間で共有でき、「ブレード型」ではさらにネットワークスイッチやストレージ機器まで同一筐体に同居させ、専用の管理ツールで統合管理することができます。

  • マルチノード型サーバ(背面)、提供:デル・テクノロジーズ

  • ブレード型サーバ、提供:デル・テクノロジーズ

一方、一般のオフィス内での稼働を前提としたサーバは、その多くがデスクトップPCと似たタワー型の筐体を持ち、「タワー型サーバ」と呼ばれます。

タワー型サーバとラック型サーバでは、電源や稼働音の要件が異なります。例えば、オフィス内で稼働するタワー型サーバにはクライアントPC並みの静かさが求められますが、ラック型サーバでは、稼働で発する音は必ずしも重要な要素ではありません。

ラック型のサーバおよびデータセンターで重視されるのが、「冷却」と「電力効率」です。

データセンターのレイアウトはラックの排熱を念頭に設計

サーバの熱は、空調による冷たい空気で冷やす「空冷」が現在でも一般的であり、データセンターではIT機器を冷やす目的の冷房が常に稼働しています。

サーバは冷房からの冷たい空気を前面から吸気して筐体内を冷やし、温かくなった空気を背面から排気するので、ラックの前面は常に涼しく、背面は暑くなります。そのため、データセンターではラックの前面同士・背面同士を向かい合わせに配置して並べることで、「ホットアイル(熱い通路)」と「コールドアイル(冷たい通路)」を分けて、フロア全体の冷却効率を最大化しています。いわば、施設全体の設計はラック中心に考えられているのです。

  • Dellのデータセンター内の様子。ラック列の背面同士を向かい合わせにすることで、「ホットアイル」と「コールドアイル」を分けている、提供:デル・テクノロジーズ

サーバ単体に目を向けると、サーバ内部の冷却ファンをフル回転すれば冷却強度は最大化できますが、その分サーバの消費電力も大きくなります。一部の極端な用途は除きますが、効果的なサーバ内冷却と電力効率の両立には、筐体内の必要な箇所だけ強く冷やす冷却ファンの能力が重要になります。

一方、CPUやGPUのパワーを極限まで使うハイパフォーマンスコンピュータ(HPC)と、莫大なサーバ台数を運用するメガクラウドサービスの2分野がリードする形で、空冷以外の先進的な冷却方法が台頭しています。

HPCの大規模システムで採用が進む「水冷」、実証実験が加速する「液浸」

HPC分野では、空冷では難しいラック搭載密度やサーバ構成が、「水冷」で実現されてきました。国内では、2022年4月現在の国内スーパーコンピューター上位5システムがすべて水冷式です。

液体は、気体の数十倍から数百倍の冷却能力を持ちます。サーバ、特にCPUの冷却媒体に水を活用する水冷の歴史は、1960年代のメインフレームまで遡ります。1980年代にはすでに水冷のスーパーコンピューターが存在していました。

「水冷サーバ」の今の主流が、サーバ内部に搭載した水冷コンポーネントがCPUなどの熱いコンポーネントに直接触れて熱を逃がす、「直接接触式液体冷却(DLC、Direct Liquid Cooling)」です。国内でも主要サーバベンダーから製品が提供されています。近年では、水を冷やすための電力消費も抑える目的で、冷却水に常温水や温水を使うのがトレンドとなっています。

  • 一般的な空冷サーバー(ラック型)の内部、提供:デル・テクノロジーズ

  • 「直接接触式液体冷却(DLC)」を採用した水冷サーバの内部。ヒートシンクの代わりに水色のDLC用コンポーネントがCPUを覆い、CPUの外部に直接触れることで冷却する。コンポーネントからは、CPU冷却のための液体が通る管と、CPU冷却後の温まった液体が通る管が伸びている、提供:デル・テクノロジーズ

他方で、空冷サーバを「水冷ラック」に搭載する選択肢もあります。水冷ラックとは別に、ラックの後部ドアまたはラックとラックの間に設置する水冷式の「局所空調機」も提供されています。どちらも直接的な水冷ではありませんが、サーバの冷却に液体の熱伝達率を活かします。局所空調機は必要な箇所だけに導入できるため、既存のラックを活かしやすいでしょう。

民間企業でも、水冷サーバや水冷ラックの採用は増えつつありますが、やはりファシリティに水を引くためのCAPEX(設備投資)と、給水インフラも含む導入後のメンテナンスといった、運用面の検討事項が多いのも事実です。そのため、水冷サーバの企業ユースは現在のところ、HPCの大規模システムが中心となっています。

サーバをオイル状の液体冷媒に浸して稼働するという最も斬新な「液浸冷却」は、現時点では実証実験が中心ですが、液浸冷却システム自体はすでに国内で販売中です。

2021年には、沸騰する液体を使う「二相式液浸冷却システム」の導入を米Microsoftが発表したり、2022年3月には液浸冷却を活用したコンテナ型スモールデータセンターの実証実験の成功をKDDIら3社が共同発表したりするなど、業界各社のイノベーションが続いています。

その一方で、データセンターでは「外気」も活用されています。2010年頃より、サーバの熱に代表されるデータセンター内の冷却に外気を取り入れる「外気冷却」が、データセンターで続々と採用されてきました。その後、取り入れた外気の湿度のコントロールなどに電力を消費する課題の解決策として、外気を室内に直接入れず、間接的に冷房に利用する「間接外気冷却」が現在のトレンドとなっています。

サーバやデータセンターでも求められるサステナビリティ

現在、世界中のデータセンターの電力消費量を合計すると世界全体で消費されている電力の1%~3%に相当すると言われています。社会全体で脱炭素社会へ取り組む機運が高まっている中で、IT業界は大きな責任を担っていると言えます。

多くの企業がSDGs(持続可能な開発目標)の情報発信に積極的です。一方、サーバメーカーの製品レベルの情報開示には差があるようです。メーカーによっては、サーバ製品のエネルギー効率やリサイクル素材の含有率など、より具体的な数値が開示されています。

サーバは交通、通信、金融などの社会インフラを支えているだけでなく、COVID-19の研究など、社会問題の解決にも活用されています。現代社会において、サーバの計算処理能力を落としたり、サーバの利用自体をやめたりする選択が現実的に難しい以上、より優れた電力効率でサーバを稼働させることが今後も求められます。

岡野家和
デル・テクノロジーズ データセンター ソリューションズ事業統括 製品本部シニアプロダクトマネージャー

IT業界で過去15年に渡り、x86サーバの製品部門にて、プロダクトマーケティングおよび新規ビジネス開発を経験。2019年からDell Technologiesの日本法人でサーバ製品のテクニカルマーケティング、社外エバンジェリスト活動および社内トレーニングなど、全方位的に従事。