先ごろ、米国の市場調査会社Gartner社による2025年の世界の半導体ブランドの売上高トップ10ランキングが発表された。生成AIの登場と、その市場の級数的な拡大に応える形で半導体各社が売り上げを大きく伸ばした結果、今回発表された売り上げ高ベースのランキングはトップ10の常連ブランドの世界市場におけるポジションに大きな変化が現れた。相変わらず熾烈な競争が繰り広げられている現実を如実に語っている。と同時に、今後の市場動向を見据えるうえで大変に役に立つ興味深いデータである。
AIを中心に急拡大する市場での優勝劣敗が明かに
この2年間の半導体市場の動きを端的に言えば、「AI市場に積極的に参加するか否か」で優勝劣敗が明かになる状況だ。特にAI半導体を多用するデータセンター市場での異常とも映る巨額投資の恩恵をまともに受けているのが、それを支えるアクセラレーター・ロジック半導体と、膨大なデータを格納し超高速にやり取りするHBM(広帯域メモリー)半導体である。
GPUベースのアクセラレーターでAIロジック分野をほぼ独占するNVIDIAは60%超の増収で、以前は1位と2位を分け合っていたSamsungとIntelをあっさりと抜き去り、ダントツのトップとなった。半導体市場全体の16%近いシェアを奪い取り、市場全体を牽引した。
ざっと眺めたところ、NVIDIAを筆頭に、2025年に20%以上の成長を遂げたブランド各社、SK hynix、Micron Technology、Broadcom、AMDはすべてがAIデータセンター市場への直接の参加で高額な商品単価と利益率を享受している。AIアクセラレーター分野ではGPUベースのAMD、カスタムASICのBroadcomが食い下がる。SK hynixとMicronはHBM市場への素早い対応で、メモリー市場では他を寄せ付けなかったSamsungとの差を急速に縮めている。
モバイル市場に大きく依存するQualcommとMediaTekは、エッジノードでのAI化を積極的に進めるが、その製品単価はデータセンターのそれにははるかに及ばず、10%台の成長にとどまっている。唯一マイナス成長となったIntelは、2026年に入って自社開発の先端プロセスであるIntel 18AでモバイルPC用の高付加価値CPUを市場投入するが、その実力の見極めにはしばらく時間がかかりそうだ。Intelの大きな後退はAIデータセンターでの存在感が非常に弱い事に起因する。この分野で直接競合関係にあるAMDとの差は急速に縮まっている。昨年のIntelの総売り上げは約480億ドルで、320億ドルのAMDの約1.5倍に当たるが、かつて私が勤務した時期のIntelはAMDの5-6倍の規模があったと記憶している。この10年でのAMDの追い上げがいかに激しかったかが伺える。
幾多の変動要因を抱える2026年の半導体市場
英国の調査会社Omdia社は、2026年の半導体市場は1Trillion(1兆)ドルを超すだろうという予想を出し、昨年以上の成長を見込んでいる。
相変わらずのAI基調には大きな変化はなく、ロジックとメモリーがともに成長する予測だが、各ブランドとその製品提供の内容でデータセンターがけん引するトレンドはさらに加速する可能性がある。米国の技術系サイトでは、メモリー製品全体の約70%がデータセンターに投入されるだろうと予測しており、パソコンやスマートフォンなどのエンド製品にはメモリー部品の供給不足、値上げが充分に予想される。
各ブランドは製造キャパシティ―の増強に大きな投資を決定しているが、この設備投資の結果が出るにはかなりの時間がかかる。昨年でも、先端プロセスによるAIアクセラレーターの製造を一手に引き受けるTSMCの製造キャパシティ―の問題が指摘されていたが、パッケージ技術が非常に複雑になっているCoWoS分野での限界はすでに明らかになっている。この分野ではシリコン部品ばかりでなく実に多種の素材が使用されており、サプライチェーンの一角に欠損が生じるだけで市場全体に大きな影響が出る可能性がある。
関税を武器に米国内での製造を強引に進める米トランプ政権の動きと、同じく国内製造を大きく意識した巨大市場である中国の動きも大きな変動要因となる。
来年の今ごろに発表されるランキングにはどういう変化が現れるかは、各ブランドのこれらの変動要因への対応にかかっている。
