半導体業界のみならず、世界のビジネスマンにとって2025年はまさに激動の年であった。
半導体業界はAI一色で、一言で言うならば「AI半導体関連の分野か、それ以外か?」、で半導体サプライチェーンには決定的な違いが出た。米国のビッグテックの動きにけん引され、世界中でAIデータセンターの建設ラッシュが続いている。そのデータセンター構築を支える半導体をはじめとする関連サプライヤー各社は増産に次ぐ増産で、この動きは一国の経済全体に影響を与える大きな要因ともなった。
もう一つ大きな変動要因となったのが、米中の技術覇権競争の激化だ。「Deepseekショック」で明けた今年は、その後にトランプ大統領率いる米政府が矢継ぎ早に繰り出した関税政策でAI半導体がその中心話題となった。
半導体サプライチェーンの再編成を促す勢いのAI半導体の勢い
年末に向けて、突然発表された「Micronがコンシューマー/リテール分野から撤退」のニュースは、AIがもたららす業界における急激な変化を象徴している。利益率が圧倒的に高く、急成長するデータセンター向けメモリー(HBMやデータセンターDRAM)に完全シフトするという突然の決断で、AIが市場全体に及ぼす影響をまざまざと見せつけられた気がした。サプライチェーンには再編成の兆しが伺える。
毎年新たなアクセラレーター製品を市場投入するNVIDIAの成長スピードはまだ衰えを見せないが、NVIDIA一強状態だった市場には徐々に変化が起こっている。GPUベースのアクセラレーターでNVIDIAを追うAMDが大口顧客との契約を発表すれば、GoogleがBroadcomとの協業で、第7世代となるTPU(Tensor Processing Unit)の最新製品“Ironwood”を発表した。
この他にも米国ビッグテック各社は自社開発によるカスタムチップを自社のデータセンターに使用している。このAI半導体市場におけるダイナミックな動きに対比する形で、一向に振るわないのが、EV市場の減速で大きな影響を受けたパワー半導体、マイコン、アナログなどの成熟プロセス半導体分野だ。この分野では、エンド市場の減速以外にも大きなチャレンジが待ち受ける。成熟プロセスでの半導体製造で国内市場で着実に力をつけた中国企業による世界市場への進出だ。
米中の技術覇権競争の中で着実に力をつける中国半導体企業
SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体製造に打って出た米国Wolfspeedの破産宣言も大きなニュースとなった。
本来なら先行者利益を享受できるはずだったSiCC市場は、成熟プロセスでの大量生産にめどをつけた中国企業による世界市場での価格圧力によって、あっという間にコモディティー化した。
成熟プロセス分野を制した中国企業が現在目指すのは、AIを中心とした先端分野への参画である。HuwaweiやAlibabaといった大企業に加えて、今年は、新たなAI半導体スタートアップが次々と登場した。Cambricon、Moore Threads、MetaX Integrated Circuitsといった聞きなれない新興企業が次々と登場し、中国内のAI市場がかなり賑わっていることが伺える。世界市場で先行するNVIDIAのCEO、Jensen Huangは中国企業の成長に対する警戒感を隠さない。トランプ大統領への直談判により、ダウングレード品H200の中国市場への輸出許可を取り付けるも、国内半導体企業を育成したい中国政府の介入により中国への輸出解禁には暗雲が漂う。目下のところ、中国企業のAI市場本格進出でのボトルネックは、5nm超の微細加工技術を国内に持たない事であるが、この分野で中国企業がギャップを埋めていくのは時間の問題と考えられる。
AI半導体サプライチェーンに綻びの兆し
AIアクセラレーター半導体への旺盛な需要は、簡単に言ってしまえば「学習用であれ、推論用であれ、市場要求を満たすものであれば全て売れてしまう」という状態にある。
こうした状況にあって、現在まで市場を圧倒的にリードしてきたNVIDIA以外のAI半導体各社にも大きなチャンスが生まれる。しかし、各国の主要テック企業が巨大なデータセンター建設に躍起になる中、既存のサプライチェーンのキャパシティ―を遥かに凌駕する需要が生まれていという印象がある。
先端微細加工を駆使した製造を一手に引き受けるTSMCはすでにマックス状態の操業で応えるが、TSMC一社では支え切れないのは明らかで、製造技術の成熟度の今後の進捗次第ではSamsungやIntelにも先端品製造受託のチャンスがあると言える。
2026年には級数的に成長する需要を支え切れずに、サプライチェーンのどこかに綻びが生じ始める事も予想される。データセンターを構成するハードウェア以外にもサプライ側の事情によって成長が影響される可能性は充分にある。電力の供給キャパシティ―がその際たる分野で、供給不足の前兆はすでに見え始めている。
大きな変動要因と波乱の予感を含みつつ、AI半導体市場の成長は第2フェーズに突入した。
2026年は以前に見たこともない景色が待っている。
本年も私のつたないコラムをご愛読いただき誠にありがとうございました。
2026年が皆様にとって素晴らしい年でありますように!!



