本連載では、さまざまな業界で取り組んでいる「映像データによる“現場DX”」を現場担当者の声と共にご紹介していきます。どのような課題があり、そこでどう映像データを活用し、どのような成果が見られたのか。今回は、クラウド型顔認証システムを活用した現場DXに着目します。

新しい働き方に伴い、導入が進む顔認証システム

コロナ禍で、人々の働き方は大きく変化しました。オフィスの分散化やリモートワークなど、これまでとは異なる働き方に対応するため、入退室管理や勤怠管理にSaaS型顔認証システムを導入する企業が増えています。では、どのような理由から顔認証システムを導入し、どのように活用しているのか。今回は実際にシステムを利用している2社を取り上げます。

セキュリティの強化・ブランド価値の向上を図るシェアオフィスサービス「クロスコープ」

ソーシャルワイヤー社は、日本国内だけでなく、シンガポール、ジャカルタなど計12拠点でシェアオフィスサービス「クロスコープ」を展開している企業です。企業単位での個室オフィス契約が軸となっており、数名から百数十名規模のオフィスを運営しています。

コロナ禍でシェアオフィスを導入する企業が増える中、同社ではクロスコープの新拠点を立ち上げる際、高いセキュリティを担保するために顔認証システムの導入を決めました。

「オフィスの入室時にICカードを採用する場合、他の人に貸し出すことができ、契約企業のメンバー以外の方がカードを利用できる可能性があります。しかし、顔認証での入室なら契約していない方は入室することができません。指紋認証なども検討しましたが、最先端のテクノロジーを導入していることがオフィスのブランド価値向上にもつながると思い、顔認証システムを採用しました」(同社 事業部長)

  • クロスコープが提供するシェアオフィス

導入したシステムはクラウド型サービスのため、オンプレミス型(自社でサーバーやネットワークなどインフラを構築する形態)に比べ、実現できることが多かった点も導入の決め手になったと言います。

「システムがクラウド上にあるため、1つのシステムで複数拠点を管理できるという点も魅力でした」(同社 部長)

  • 同社のシェアオフィスに設置されている顔認証システム

従来のICカードによる管理と比べ、管理の手間が減り、物理的なコストカットにもつながるというメリットもありました。また、セキュリティ面での評価の高さも大きな利点になったそうです。

「大手企業がオフィスを借りる際には高い水準のセキュリティが要求されます。顔認証システムでは、その条件をクリアしやすく、新規契約の後押しになっています」(同社 部長)

取引を開始する際のIT監査時に、顔認証を用いたセキュリティが評価され、契約や受注がスムーズに進んだ案件もあるといい、同社では今後も、新しい拠点の立ち上げの際は顔認証システムの導入を積極的に進めていきたいと考えています。