本連載では、さまざまな業界で取り組んでいる「映像データによる“現場DX”」を現場担当者の声と共にご紹介していきます。どのような課題があり、そこでどう映像データを活用し、どのような成果が見られたのか。今回は、ビル施設・設備の改修工事や保守メンテナンスをする建設業界の事例を取り上げます。

建設業界の2024年問題にどう対応するのか

2019年に「働き方改革関連法」が施行され、各業界に対応が求められています。業界によっては、短期間での労働環境の変更が難しいため、5年間の猶予を与えられている場合もあります。2024年4月に同法律が適用されると「時間外労働の上限規制」により、月45時間かつ年360時間以内までの労働時間となることから、企業は残り1年強で、労働環境の改善・向上への取り組みを進めなければいけません。

建設業界においては、国土交通省がIT機器の活用を推進したり、厚生労働省が人材育成に取り組む建設企業に対し「人材確保等支援助成金」を設けたりと、国を挙げた働き方改革が進んでいます。

そんな中、実際の企業の現場ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。今回は、通信機能(LTE)を備えたバッテリー搭載型ポータブルクラウド録画カメラを活用して、働き方改革に取り組む建設業2社をご紹介します。

遠隔からの映像確認で働き方改革を実現した「関西マサル」

ビルやマンション、公共施設などの屋上防水や外壁タイル補修、外壁塗装の分野で多くの実績を持つ「関西マサル」。「専門職人集団の高い技術力で建物を守り、人を守る」というモットーの下、さらなる品質の確保と業務効率化のため、施工現場にバッテリー搭載型ポータブルクラウド録画カメラを導入しています。

「この業界は施工管理者が足りず、現場での判断を職人さんに任せざるを得ないケースがあります。作業の本質が理解されないまま工事が行われてしまうことに、ずっと悩んでいました。」(同社 代表取締役)

例えば、外壁のタイルのひび割れを修理する際、割れたタイルを剥がし、新しいタイルを貼るだけが修理工事ではありません。「なぜタイルが割れたのか」という原因を探り、再発防止策を講じることが求められます。一方、現場で工事を行う職人さんは「上手に美しく直す」ことに念頭を置くため、認識のギャップが生じてしまうという課題がありました。修理自体は適切に行われているものの、工事全体の本質を追求するために対応していくべきか、悩んでいたと言います。

  • 事務所などの遠隔からでも作業確認が可能だ

同社では、バッテリー搭載型ポータブルクラウド録画カメラを現場作業員に装着させることで、業務改善を試みています。

「カメラを現場監督や作業をする職人さんに装着していただき、作業の状況を撮影しています。リアルタイムで作業の状況が分かるので、事務所で映像を見ながら、通話機能を活用してフォローをしたり指示を出したりすることができます。逆に、現場から確認の依頼が入ることもあります」(同社 代表取締役)

さらに、この映像はお客さまにも公開しています。作業の状況を隠すことなくオープンにすることで、「お客さまからの信頼を得られている」と、同社代表取締役は感じているそうです。

  • 「正しい作業をするという意識が働き、無駄なやり直しが減っている」と語る同社 社長

また、現場映像をリアルタイムに把握できることで、第三者が安全面を逐一確認することが可能になり、品質チェック作業の効率化にもつながりました。さらに、作業が止まることで、ロスしてしまう時間、出張費などのコスト削減を実現。クラウド録画カメラの導入が業務改善、作業の効率化、安全性の向上に貢献しています。