工場のIoT化や自動運転車の開発、スマートフォンの高度化などの影響で電子機器の製造量が増加している。それと同時に増えているのが電子機器の受託生産(EMS)だ。本連載では、2018年よりOKIのEMSグループに編入し、EMS事業へと力を入れているOKIテクノパワーシステムズのEMS事業の現状や今後の戦略などについて紹介する。
OKIテクノパワーシステムズの歴史や現在の取り組みについて紹介した前回に引き続き今回は、同社のOKIグループ以外の顧客へ向けた電源装置の売り上げを5年で2.5倍にまで拡大させることに成功した「事業構造変革」についての話をお届けする。
まずは自社の強みを再認識
「まず社外への販売を強化するために、自社の強みを洗い出すところからスタートした」と丹治氏。3000億円ほどの国内の電源市場で、大小50ほどの企業がしのぎを削る中、生き残る術を見つけるため、客観的に自社の置かれている状況を見つめなおしたのだという。
さらに、「我々の強みは”OKI”の看板を背負っていること。ATMやプリンタの実績があるために顧客からの信用もある。その一方で、大手企業のように従業員はそこまで多くないため小回りが利く。そこで、『小回りが利くために製品の販売後にもきめ細かいサポートが出来る』『安定した地盤・技術があるため、部品の長期供給が出来る』などといった強みをアピールし、販売活動につなげた」とのこと。
結果、その戦略がハマった。中小企業ならではの小回りが利くこと、大企業ならではの安心感・信用性のどちらももつOKIテクノパワーシステムズならではの強みが顧客に刺さったのだ。
工場は「ショールーム」-カスタム販売ならではの工場の役割
しかし同社が提供するのは、カタログに載せられるような”決まった商品”ではなく、顧客のオーダーに合った”カスタム製品”。製品を信用してもらうためには、さらなる一手が必要だった。そこで同社が目指したのが、”顧客に信頼される工場”をつくることであった。「見せられる工場」をキーワードに、会社全体での意識改革を行った。
そのために、工場の効率を上げ、モノの流れをよくすることでさらに効率よく製品をつくることを目指し、全社員を対象に、生産現場での仕事を経験させた。佐藤社長、丹治取締役も例に漏れず、ラインに配属され、現場の理解に努めた。
「現場が好きなんです」と佐藤社長。現場体験は同氏にとってまったく苦ではなかったようだ。
「引き合いはあっても、『こういう工場に作ってもらえるなら安心』と思ってもらえなければ、発注につながらない。『日々進化する工場』というスローガンのもとで行ったさまざまな活動が実を結び、実際に工場を見たお客様からは『良い工場ですね』と声をかけられるようになりました。我々のように、カスタム製品を売る企業にとって、工場はショールームなんですよ」と佐藤氏は続ける。
OKIテクノパワーシステムズが外販力を伸ばすために力を入れた「事業構造変革」とは、販売員の育成だけではなく、工場というショールームをより良くするための”社員全員を巻き込んだ”、会社全体での意識改革であった。
次回【社員一丸となってつくった「ショールーム」】は7月2日に掲載予定です。