米ガートナーは8月14日、世界の携帯販売数が4億1900万台となったと発表しました。その中でもスマートフォンの販売数は全体の36.7%を占め、前年同期より42.7%増加しスマートフォン市場はまだ拡大し続けています。

日本のスマートフォン市場といえば、おサイフケータイ、赤外線、ワンセグなどフィーチャーフォンの機能を引き継いだ全部載せモデルが発売され、また最近では、シニア層をターゲットとした「らくらくスマートフォン」がdocomoより発売され、早1ヵ月が経とうとしています。様々な機能が搭載され、機能も進化し快適とニュースなどで言われていますが、そのような機能は本当にユーザーにとってニーズはあるのでしょうか。

今回は、当研究所が8月8日~8月9日に実施した「シニア層のスマートフォンの利用及び、購入意向に関する意識調査」の結果から、6月に調査したデータと比較して、世代別ユーザーのニーズにどのような差があるのか考察します。

シニア層のスマートフォン所有率は11.1%

シニア層884人(60歳~64歳 : 331人、65歳~69歳 : 331人、70歳以上 : 222人)を対象に、スマートフォンの所有率について調査したところ、スマートフォンの所有率は11.1%でした。これをキャリア別で見てみるとdocomoのスマートフォン所有者が4.1%、auが1.9%、SoftBankが4.4%、その他の携帯電話会社が0.7%でした。

次にスマートフォン所有者を対象によく使う機能について「よく利用する~まったく利用しない」の4段階評価で調査したところ、「よく利用する」「利用する」の回答が多かった項目は、「メール機能」で87.8%、次いで「通話機能」「インターネット機能」が同率で85.7%、「カメラ機能」が81.6%という結果が得られました。

6月12日~6月14日に当研究所で10代~50代のスマートフォン所有者534人を対象に「よく使う機能」について調査したところ、全体で最も多かった項目は「メール機能」で93.7%、次いで「通話機能」が86.3%、「カメラ機能」が86.0%、「ブラウザ機能」が82.4%という回答が得られています。

上記の調査結果を見てみると、利用しているスマートフォンの携帯電話としての基本的な機能において、世代間での大きな差異はみられませんでした。世代別で差異が出るとすれば、それぞれの世代別で利用されるアプリの利用頻度や種類等で違いが出るのではないでしょうか。

シニア層がスマートフォンで困っていることは「バッテリーの容量が少ない」

スマートフォンを所有していないが購入意向がある人を対象に、スマートフォンを購入したい理由を聞いたところ、最も多かった回答が「TVや新聞、雑誌などでスマートフォンについてよく耳にするから」が38.0%、次いで「スマートフォンで利用してみたい機能やアプリがあるから」が34.9%と、周りからの情報による興味であることが推測できます。

筆者の両親は60代のシニア世代で、スマートフォンを所有して1年になります。筆者が以前所有していたiPhoneに興味があったようで、筆者の目を盗んでは度々遊んでいました。

昨年からスマートフォンのラインナップが増え、文字入力のしやすさが改善されたことがきっかけで、Android携帯を購入しました。購入する際に、父はワンセグが搭載されている機種を、母はデザインを重視しそれぞれ違う機種を選びました。

そこで、1年経ってそれなりにスマートフォンを使いこなしている両親にスマートフォンで改善して欲しい点を聞いたところ「文字の大きさ」「文字入力のしやすさ」「バッテリーが長持ちしない」という回答を得ました。

理由はブラウザやメールでは文字の大きさを選択することができるが、アプリになると大きさを選択することができません。両親とのコミュニケーションとして最も使っているのがLINEで、スタンプ機能が楽しく、またアーカイブが見られるので重宝しているが、キャリアメールのように文字の大きさが変更できないため、見づらい、入力しにくいとのことでした。また、暇つぶしでゲームをしているとバッテリーが大量に消費されてしまうため、充電する回数が増えたという回答でした。

スマートフォンを所有しているシニア層に購入の際に重視した点「重視する~重視しない」まで5段階評価で調査したところ、「画質の良さ、操作性の良さ(タッチパネルの反応の良さ)、文字入力のしやすさ」が上位にランクインしました。

しかし、スマートフォンで困っている事は何か、をフリー回答形式で聞いたところ「バッテリーの容量が少ない」という声が最も多く、購入する際に重視した項目と次回機種変更する際に重視する項目は大きく違ってくるのではないでしょうか。「シニア」と言えばインターネットをあまり使えない世代だという先入観を持っていましたが、実際は定年したばかりで仕事でパソコンを使っていた方であれば、使いこなせているという背景から、スマートフォンに接触している頻度が高い故に出てきたユーザーの本音なのではではないかと思われます。

機能やターゲットの訴求よりスマートフォンを楽しむ機会の提案が必要

昨今、地域やキャリアにもよりますが、スマートフォンの活用方法を教えてくれる教室や講座が開設されたというニュースをみかけますが、実際にどれくらいの需要があるのでしょうか。

スマートフォン所有者に活用に関するサービスや講座について聞いたところ、インターネット動画でのスマートフォン活用講座」が27.6%と最も多く、次いで「スマートフォンの使い方をサポートしてくれるサービス」が22.4%、「地域のスマートフォン教室」が17.3%という結果となっています。スマートフォンを購入した人だけではなく、購入を検討している人のためにスマートフォンを貸し出し、実際に体験し、楽しんでもらえるための機会や場所を提供、機能の必要性を訴求し、それぞれの利用シーンに合わせた提案をすることでユーザーのニーズでスマートフォンの市場はまた変わってくると筆者は推察しています。

調査テーマに関するご要望については、当サイトのお問い合わせフォームで受け付けておりますのでお気軽に声をかけてください。今回引用した調査データは当研究所のWebサイト (シニア層のスマートフォンの利用及び、購入意向に関する意識調査)で一部公開しています。

<本稿執筆担当 : 妹尾 亜紀子>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。