無人機(UAV : Unmanned Aerial Vehicle)、あるいはそこに搭載するセンサー機器を外部から遠隔制御するために、地上管制ステーション (GCS : Ground Control Station)という機材が必要になる。そのGCSが今回のお題。従来のイメージとは違う形のものが増えつつある。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照
GCSは外出ししたコックピット、という考え方
そもそも、UAVを遠隔管制するためには何が必要か。操縦操作を行うのであれば、有人機のコックピットと同様に、操縦桿とスロットルレバーが必要になる。
そこで小型で安価なUAVなら、市販品のノートPCに所要のソフトウェアをインストールしたり、場合によっては外付けのジョイスティックをつないだりして済ませている。速力の増減は、キーボード操作でもどうにかなるかもしれない。
ところが、MQ-1やMQ-9みたいに、より大型で“本格的”(何が本格的なんだというツッコミはあるか)な機体になると、GCS操縦桿やスロットル・レバーを備えた「飛行機の操縦室」然とした品物にパワーアップする。
それに加えて、センサー機器の操作や通信の操作もしなければならないから、画面が増えたり、無線機が付いたり、チャットでやり取りするためのキーボードが加わったりする。キーボードは、機体に何かを指示する場面でも利用できる。
CCAをタブレットPCで操る
さて。UAVの分野では、ISR(Intelligence, Surveillance and Reconnaissance)を主な用途とする時代が長く続いた。その場合、機体は地上にいるオペレーターが遠隔操縦、センサーも地上にいるオペレーターが遠隔操作、という使い方が基本である。
もっとも、MALE(Medium-Altitude, Long-Endurance)あるいはHALE(High-Altitude, Long-Endurance)に分類される、大型で航続距離が長い機体であれば、基地と任務対象空域の間の行き来には、自動操縦を使う場面が出てくるかもしれない。
最近、UAVの用途が広がってきているが、その一つに、有人戦闘機に随伴して危険な戦闘任務を引き受ける、いわゆる“忠実な僚機”(loyal wingman)がある。米空軍では、これをCCA(Collaborative Combat Aircraft)と呼んでいる。
米空軍の2026会計年度予算要求に、“Crewed Platform Integration”という項目がある。その内容は、F-22にCCA管制用のタブレットPCを導入しようというもの。
具体的には、タブレットPC本体と関連する電気配線などを142機分。これで総額1,220万ドルを要求している。単純に142で割ると、1機あたり86,218ドル。個人で買うなら結構いい値段だが、戦闘機に載せる機器として考えれば安い。
F-22が搭載するミッション・システムにCCAの管制機能を追加しようとすると、Ada言語で新たにプログラム・コードを書いて、それを機上コンピュータにインストールしてテストしなければならない。しかもそれは、ミッション・システムの既存機能と干渉するものであってはならない。
それなら、CCAの管制機能だけ外出しにして、必要に応じてタブレットPCを持ち込む方が低リスク・低コストで済む。市販のタブレットPCならソフトウェア開発環境も整っているから、そういう意味でも安上がりになる。
でも、タブレットPCで機体の操縦操作を行う場面は、ちょっと考えたくない。では、どうしてタブレットPCを使う話になったのか。単に安上がりに済ませたいというだけなのか。
自律性が向上すれば、管制機材に求められる機能は変化する
実のところ、細かい操縦操作を外部からいちいち行う必要性がなければ、有人機の操縦席と同じように、操縦桿やスロットルレバーを用意する必然性はなくなる。
人工知能(AI:Artificial Intelligence)や機械学習(ML:Machine Learning)の活用によって、機体が自律的に学んで、飛んでくれるのであれば、その分だけ、外部からあれこれ口出しをする場面は減る。
極端な話、タブレットPCの画面に地図を表示して、「ここからここを経由してここまで行って、そこでナニをしろ」と指示するだけで用が足りる。カーナビで目的地と経由地をセットするようなものである。
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ロッキード・マーティンがリリースしたイメージ動画に出てきた、F-22からCCAを管制するタブレットの画面例。位置関係の表示と、任務の実行/中止などを指示する程度の機能に見える 引用 : Lockheed Martin
ただしCCAは戦闘任務で使用するものだから、目的地だけでなく、そこに到達するタイミングも指示してやらなければならないかもしれない。他の資産と協調して攻撃を行うような場面では、タイミング合わせが問題になる。
また、有人機を突っ込ませたくない、脅威度が高いところで任務を果たすのがCCAの真髄だから、敵の脅威に直面した時にどう対応するか、という話も出てくるだろう。脅威を避けるか、先頭に立って刺し違え覚悟で叩きのめしに行くか。そんな条件設定も必要になると思われる。
それなら、タブレットPCに所要のソフトウェアをインストールしてやれば実現できる話であり、MQ-1やMQ-9のGCSにみられる「外出ししたコックピット」みたいな大仕掛けは必要ない。
井上孝司
鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナ4ビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、本連載「軍事とIT」の単行本第6弾『軍用通信 (わかりやすい防衛テクノロジー)』が刊行された。

